55.デート開始
「お、ヘレンちょっと話があるんだけどさ」
あの後学院に戻り色々と仕事をした後に家に帰ると既にヘレンは家に戻っていた。
「は、はい。なんでしょう?」
「いや、デートするにしても時間と場所を決めないとダメだろ?そっちの都合に合わせるからいつがいいかってな」
「あ………。忘れていました……。そうでしたね。で、では明日はどうですか!?明日はちょうど休日で学院もお休みですし!」
おや。ヘレンが忘れてるなんてなぁ。やっぱりデートだから舞い上がってるのかね。
「ん、明日な。場所はどうする?"転移・改"が使えるといっても行ったことない場所には行けないから王都かテラミスの二択になっちゃうんだが」
「お、王都!王都でお願いします!」
「ん、王都な。それじゃあ明日は待ち合わせしようか。テラミスの北門に朝8時」
「は、はい!」
「は、早くない?」
「シンさんこそ、早くないですか?」
時間は朝の6時。場所は北門。まさかの二時間前に二人とも揃ってしまった。それにしてもだ。
「あー、その、服、新鮮でいいな。よく似合ってるよ」
今日のヘレンの服はいつものメイド服と違い、クリーム色のスカートに白のレースのトップス、首から花型のネックレスをかけている。髪もいつもはロングだが、今日はまとめてポニーテールにしてある。
「あ、ありがとうございます……」
真っ赤になって俯いている所がさらに可愛らしい。
「その、シンさんも似合ってます……」
「お、そうか?それは嬉しいな」
俺が来ているのはこっちの世界にはないであろう日本の服だ。日本人には日本の服がぴったりなんだろうな。
「それじゃ、少し早いけど行くとするか」
「はい!」
"転移・改"で二人まとめて王都まで一瞬で移動する。いやぁ、久しぶりだな。王様に会うために一回来ただけだからな。
「にしても、まだ朝早いのになんか騒がしいな」
「そうですね。お祭りでもやっているのでしょうか?」
「おや、お二人さん今日は見学かい?」
門に近づいていくと門番の人にそう言われた。見学ってなんだ?
「今日って何かやってるんですか?」
「おや、知らないで偶然来たのか。それは運が良かったね。今日はなんと年に2回しかやらない武闘大会の日なのさ」
「武闘大会ですか!?」
おや、ヘレンはなんだか知ってるようだな。俺?俺は知らんよ。
「お、お嬢さん興味があるのかい?」
「はい!武闘大会といえばこの世界の勇者の勇姿を見られる素晴らしい大会ですから!」
へぇ。それは見てみたいかもな。勇者なんて俺以外だとアカネしか見たこと無いし。
「ははっ。兄ちゃんこんな美人さんが楽しみにしてるんだ。ちゃんと連れてってやりなよ?」
「わかってるさ。それより、入ってもいいか?」
「ああ。あ、ちょっと待ってくれ。何か身分を証明出来るものはあるかい?今日は武闘大会だから沢山人が出入りするんだ。警備は厳重なんだよ」
「なるほどな。これでいいか?」
冒険者のプレートを見せる。ヘレンもちゃんと持ってきているようで安心だ。
「へぇ!お嬢さん金プレートかい!そりゃあ凄い!じゃあお兄さんのは………黒?」
「ああ。黒だな」
「これは、ちゃんとお兄さんのもので?」
「ああ。確認してもらって構わないぞ」
そのままそそくさと黒プレートを持って何処かに行ってしまい、数分待つともの凄いスピードでこちらに駆け寄って来た。そして丁寧にプレートを渡された。
「も、申し訳ありません!まさか勇者様だとは知らずに!」
「あー、いいって。別に。今日はこいつとデートしに来ただけだからな。そうかしこまらなくてもいい」
実際勇者としてほとんど活動してないので威厳もないと思うのだ。
「わ、わかりました!それでは、王都をお楽しみください!」
かしこまらなくてもいいって言ったのにな……。
「ふふっ。シンさんちょっと困ってますね?」
「そりゃあな。かしこまらなくてもいいって言ったのに」
俺たちを通した後でまた誰か有名な奴でも来たのか門番の人が騒がしくなった。
「それは無理だと思いますよ?勇者様には敬意を表する。それが国の取り決めですから。」
「へぇ。俺は勇者みたいな活動なんてこれっぽっちもしてないんだけどな。ま、いいさ。今日を楽しもうぜ!」
「はい!」