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54.服を選ぶ

 今日の授業もいつも通りできたと思っている。ヘレンは今朝の話を意識してか終始ぼーっとしていたけどな。


「とりあえず、いつがいいか聞いてみるかな」


 日程を決めなければデートなんて出来ないからな。というわけでヘレンはっと。


「あっ……」


 ちょうどマリに無理矢理どこかへ連れてかれて行くのを見つけてしまった。あれは……なんかの用事なんだろうな。しょうがない、家で聞くか。


「先生ー」


「おう、なんだ?」


 諦めて仕事でもしようかと思っていた所にスズが近づいてきた。


「先生ってヘレンが好きだったのー?」


「あー、今朝の事か。いや、そういう訳じゃないんだ。ちょっと色々あってな」


 そこで前のギルドでの一幕を放してあげた。


「なるほどねー。そんな事がー。じゃあ先生も着飾って行こうよ!初デートなんでしょ?」


「うん、まあそうだな。初デートだ。っても俺服なんか持ってないんだよなぁ。いつも変身で服変わっていくから」


「じゃあ今から買いに行こー!私が選んであげるからさ!」


「ん、じゃあ頼もうかな」


 そうして俺たちが来たのはマリエンテール商会という場所だ。ちなみにスズが全員を誘ったため、マリとヘレン以外全員が来ている。


「すみませーん」


「あら?スズちゃんじゃない。どうしたのかしら?」


 出てきたのはまだまだ若そうな女性だった。どうやらスズの知り合いみたいだな。


「先生の服を選んで欲しいんです!」


「あらあら、あなたがあの」


 あのってなんだ。誰かに何かを言われているのだろうか。


「そうですね。こちらに来てくださいな。服を選んで差し上げますから。スズちゃんも手伝ってね」


「はーい!」


「んじゃ、先生、俺たちは武器とか見てるからー」


「おう。俺の方が終わったら呼びに行く」


 ここからはスズ、俺、そして何故かクーとそれ以外に分かれた。


「おい、なんでお前がこっち来てんだよ」


「別にいいだろう。私とて服に興味はあるのだ。それに小僧の面白そうな姿が見れそうだしの」


「こいつ……」


 なんて野郎だ。


「ではでは、選ばせてもらいますね」


「これなんてどー?」


 スズが渡してきたのは所謂燕尾服と呼ばれるものだった。


「いや、これは流石にないだろ」


 燕尾服でデートに行く奴なんている訳がない。というかそんな事したら浮くだろ。それにヘレンに対して悪いだろうし。


「いえ、一度着てみましょう」


「えぇ………」


 商会の人の言葉だし一応試着をした。だってスズが渡してきた時に指を顎に当てて悩んでいたのだもの。きっと俺には考えつかないような事を考えていたに違いない。


「うーん、まあありですねぇ。でも……。いや、もしかしたら……。いや、あの顔でしたし……」


 俺が着替え終わってみせると商会の人がさらに悩みだした。いったいなんなんだ。


「一応保留ということ事にしておいてください。相手に合わせるのも男性のマナーですからね」


「はぁ」


 いったい何の事やら。全く分からんが保留というなら保留にしておこう。


「では、これはいかがでしょう」


 次は普通の何処にでもあるような一般的な服だ。これならまあデートに着ていくのもありだろう。というわけで試着したのだが。


「……似合わないな」

「……似合いませんね」

「似合ってないねー」


 と満場一致で似合わないとの評価をもらってしまった。その後も何着か着ていくが似合わないとの評価をいただいてしまう。


「俺に似合う服がないって事か?」


「かもしれんな」


「なんだそりゃ……」


 燕尾服は別に似合わないとは言われなかったからそこまでじゃないと思ってたんだが……。


「先生の変身?ってさー服だけ変えれないのー?」


 服だけの変身?やったこと無いな。


「やった事ないからわからないな。ちょっと待ってろ」


 今は特に何もないから変身を使用していない状態だが、ここから服装だけ魔法使いになるように念じてみる。

 白煙が立ち上り、俺の服は見事魔法使いの黒ローブに変化する。それと同時に魔法が使えるか確認してみるが、使えない。


「おお!出来るみたいだぞ!」


「なら何かいい服がないか自分で探してみよー」


「だな」


 そこから変身能力をフル活用して服選びをしていった。


「ん、これはいいんじゃないか?」


「一番似合っていると思うな」

「似合ってますね」

「それにしよー!」


 ということで服が決まった。いやぁ長かった。


「あ、一応これ買わせてください。使うかもしれませんし」


 燕尾服を一応買っておくことにした。だってねぇ。似合わないとは言われなったから……。


「お買い上げありがとうございます」


「はい。んじゃ、レン達呼んで帰るかね」






「ふふっ。楽しみだわ。ヘレンちゃん、上手くいくといいけど」


 商会の女性店員の呟きは誰にも聞こえる事はなかった。

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