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49.プロポーズされた

「ごめんな、来るの遅くなって」


 エリ、ヘレン、マリは一つの場所に固まって近くの冒険者達と食事をしていた。


「いえ。大丈夫です。シュンが挑んでいたのは聞こえていましたので」


「私も平気だよ」


「本命の女性は最後に選ばれると聞いた事がありますわ。ならどれくらい待とうとも構いませんわ」


 あ、その発言はマズイぞ。というかマリ酒入ってるだろ。いつもはこんな事言わないし、顔赤いぞ。


「マリ、選んでくれたのは私です。炊事洗濯家庭のことなら何でも出来てしかも強い私です」


 ほらー。ヘレンが突っかかったじゃないか。この手の話はヘレンがよく暴走するから。というかヘレンって凄いよな。何でも出来るし。


「いえいえ、私ですわ。財力のない先生を支えられる程のお金を持っている私ですの」


 財力ないって言うなよ。これでも教師として働いてるから給料出るぞ。それに今回の狩りで魔物売っぱらって十分金は得たし、魔法を教えた時にも金は貰ったから財力は少しあるぞ。


「なら領主家の私の方がお金があるよ」


 はいそこ、悪ノリしない。


「私の家は領主家よりもお金があると自負していますわ。かなり稼いでいますので」


「ん?マリの家って商売かなんかやってんのか?」


「ええ。商会をしてますわ。武器や防具、魔道具にアクセサリーまで幅広くやってますの」


 へぇ。面白そうだな。


「先生1人養うくらいなんて事ないですわ」


「別に養ってもらわなくていいわ。金もあるし家もあるからな」


「そうですの。残念ですわね」


 ちっとも残念そうにしてない気がするが、まあいいか。


「私だってシンさん1人くらい養えます!これでもメイドです!働いていた時のお給金は全て貯めていますし、狩りでの稼ぎも全て貯蓄に回していますので!」


 ヘレンはしっかりしてるからなぁ。超が何個も付く優良物件だし。結婚相手が羨ましいな。


「シンさんは私とマリどっちに養われたいですか?」


 おおう。なんだその質問は。なぜ俺が養われる事確定なんだよ。


「俺は養われる気なんてないぞ」


 先生が生徒に養われるとかダメだろ。俺は教師以外もやれば金がたんまりと入ると思うんだ。日本の知識を使って便利な魔道具を作ったりで。そうすりゃこんな事言われなくなるか。学院長と相談するかなー。


「シンさん!私と結婚してください!」


 ぶふぉ。の、飲んでたものを吹き出しちまった。こ、こいついきなりなんて爆弾を投下しやがったんだ!?


「な、なんだいきなり。お、俺は先生だからな。生徒と結婚とかちょっとヤバイだろ……」


 ここはこの策で逃げ切る!


「生徒と先生が付き合う事なんて珍しくないと本には書いてありました!」


 なにぃぃぃぃぃ!?一体誰だ!?そんな本書いたやつは!?ま、ま、ま、まずい。マズイぞ!?どうやって、このイベントを回避すればいいんだ!?


「お、俺とヘレンじゃ釣り合わないって。もっと、イケメンの人とかにしろよ」


「確かに、釣り合わないかもしれません。ですが、私は好きなんです!」


 くっ…………。ど、どうすればいいんだ!?傷付けず、どうにか穏便に済ませる方法は何かないか!?


「お、俺はまだ16歳だからさ。た、確か結婚って18歳からだろ?まだ無理だって」


「私だってまだ14です!でも後4年待っていただければ結婚出来ます!」


「そうだが、そうなんだが………」


「………」


 ん?黙り込んで俯いてしまった。諦めてくれたか?


「ーーですか」


「え?」


「……私と結婚するのが、嫌なんですか!?」


「そ、そういう訳じゃ無くてだな……」


「そう言ってるのと同じです!さっきのシンさんの態度は!振るなら振ってください!私は真剣なんです!誤魔化して欲しくないんです!」


「振る振らないって……。というか俺には全く訳がわかんないんだよ。なんでヘレンにそこまで好意を寄せられているのか」


「自分の身を犠牲にしてまで私達を助けてくれました!それで好きになりました!おかしな事ですか!?エリ様だってきっとわかってないだけで好意を感じているはずなんです!一緒に何十年といた私にはわかります!」


 たったあれだけのことでここまでの好意を抱いていたってことか?


「確かに、助けはしたけど、あれは俺なりの感謝だ。この世界に召喚してくれた事、1週間も俺と一緒に楽しく過ごしてもらった事の。それにあの時はあれ以外に方法は思いつかなかった。たったそれだけの事だ」


「シンさんにとってはそうだったのかもしれないけど、私達にとっては違ったんです!シンさんはいつだって私達を見捨てたりする事が出来たはずなんです!でもしなかったし、されなかった!私は、私は、好きなんですよぉ……。どうしようも、ないくらいに、あなたの事が……」


 ヘレンの目から沢山の涙が流れている。止まることがなく、ずっと。


「………」


「私の、この想いは、あなたにとって、迷惑なものですか?ダメなものですか?」


「……迷惑でも、ダメでもないさ」


 はぁ……。こりゃ、ダメだな。


「だったら!だったら私と結婚してください!」


「……4年、だったな」


「え……?」


「4年経って、その気持ちが変わってなかったら、また言ってくれ。その時にちゃんと返事を返すから」


「………はい」


「ごめんな……」


 ヘレンの頭を撫でてあげながら、謝る。俺は結局問題を先延ばしにしたに過ぎない。その事への謝罪だ。


「すぅ……」


 ヘレンは今までの疲労か、泣き疲れたのかそのまま寝てしまった。それはもうぐっすりと。そのまま寝顔を見ていると隣からこんな会話が聞こえてきた。


「はぁ………。折角協力してあげましたのに、先生がヘタレて成功しませんでしたわ」


「だね。それにしても私がシンさんに好意だって。ヘレンの応援するんだからそんな事ないのに」


「おい……。どういう事だ?」


 隣にいたマリとエリから聞こえてきた会話に俺は聞かずにはいられなかった。よくよく見ればマリの方は顔が赤くなくなっている。酒のせいでは無かったという事だ。多分、その時の俺の顔は酷く歪んでいたと思うんだ。


「ひっ、あ、あの、その、ヘレンの応援、を、しようと、思ったんですわ」


「そ、その、ヘレンの、初恋、だから、成功させようと、ね?お酒の力も、ちょびっと、借りて」


 ダラダラと滝のように汗を流す二人を連れて、ギルドの外へ出てお仕置きをした。当然、"自己空間プライベートルーム"で。





 そして、シンがいなくなったギルド内で、空寝をやめたヘレンは。


「ふふっ。愛してます。シンさん……」


 そう言って、本当に眠ったのだった。

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