閑話 エリとヘレン
「まさか、変身能力を持った方が召喚されるなんて……」
私はあの人の才能にもそうですが、自分の才能に驚きです。私、魔法使いではなく召喚術師の方があっているかもしれませんね。
「エリ様どうなさいました?」
「?ああ、ヘレンですか。少し、自分の才能に驚いていただけですよ。それと、口調はもっとフランクでいいと言ったじゃないですか。私達は親友なんですから」
ヘレンと呼ばれたのはメイドの1人だ。エリが幼い頃、小さな事件に巻き込まれていたヘレンを助けてからの仲だ。それからメイドとしてヘレンは自分に仕えるようになった。
エリとしてはメイドじゃなく対等な友達、親友として一緒にいてほしいのだが、ヘレン自身がメイドという立場にいたいと言って聞かない為にこのような関係になっている。
「私はメイドですからいくら親しかろうと口調は変えませんよ」
「もう………」
なぜヘレンがメイドとして働きたいのか理由を教えてくれないので、私はなぜメイドに拘るのかが分からない。
「まあ、いいです。これは何回繰り返したのか分からないくらいですし」
「エリ様が何回も同じ事を言うからです。それで、エリ様今日は一体何をして来たんですか?」
「あー、その、今日はちょっと外まで出ていたんですよ。荒野の方まで」
「あの荒野ですか?特に何もないあの場所にいったい何の用事で行ったんですか?」
「えーっと、そのー、ちょっと召喚術の練習を……」
「……」
ヘレンが固まってしまった。誰にも言わずに勝手に出て行ってしまったから、その、怒られるのは覚悟の上だ。
「もう一度聞きますけど、一体何をしに?」
「……召喚術の練習に……」
「わかってるんですか!?召喚術は国令で使用を制限されている大魔法ですよ!?そんな魔法を使ったなんて知れたら私達は終わりです!それがわかってるんですか!?」
「その……つい、興味本位で……」
「ああ……エリ様がこんなだから私がしっかりしないといけないのに……!それで!魔法はどうなったんですか!成功したんですか!失敗したんですか!」
「……成功しました」
「…………」
ヘレンが力なく崩れ落ちてしまった。どうしよう……。
「ふ、ふふふ、ふふふふふ。エリ?いつも言ってるよね?勝手な事はするなって」
あ………。やばい。ヘレンが壊れた。
「そ、その、ごめんなさいね?次、次からは勝手にしたりしないから、ね?」
「そうね。何時もそう言って反省せずに次から次へとやらかすんだよね?もうね、私も怒ったよ?」
「わ、悪かった、悪かったから!もう反省してるから!次は絶対ヘレンに言うから!」
「それもね、何回も聞いたよ?そんな事ぐだぐだ言ってないで、さ、早く支度して?」
「し、支度?なんの……?」
「なんの?ってそりゃあ召喚してしまったものを消しに行くに決まってるでしょ?バレたら国からどんな事言われるかわからないんだから」
「え、え、そ、それはちょっと」
「いいから早く!」
「は、はい!」
ヘレンの迫力に負けて素直に荷物をまとめてしまった……。ど、どうしよう……。ヘレンはきっと人を召喚したなんて思っていないはずだ。あの人に迷惑をかけてしまう……。