43.全員に紹介
「ただいま〜」
「おかえりなさいませ……って先生?」
あの後黒蛇少女に色々と制約を追加し、一緒に連れて帰って来た。
「先生は魔力溜まりにいた魔物を狩りに行ったはずですよね?」
笑顔で少し口調が強くなったような気がする。なんだこれ、怖い。
「あ、ああ。ちゃんと狩ってきたぞ。後始末もちゃんとして。さすがに量が多かったから素材を綺麗にとかは考えてやらなかったが」
「ええ。先生がちゃんとやって来たのはわかっています。ですが、いったいどうやったら十分しか経っていないのに少女を連れて来れるんですかね?」
"自己空間"は中に入ると他の時間、空間とは流れが変わる。なので、中でいくら経とうがこっちでは数十秒でしかないということだ。
「あー、それはなちゃんと説明するから。とりあえず飯にしないか?俺腹減ってるんだよ」
「はぁぁ……。わかりました。私達もまだ食べていないので一緒に食べましょう。そちらの子も食べますか?」
「……私はいらないぞ」
「……そうですか」
なんとか家に入る事に成功。と、同時にヘレンと黒蛇少女の間の空気が悪くなったような気がする。
家の中に入ると生徒達はみんなおかえりと言ってくれた。その後に後ろにいる黒蛇少女について色々聞かれた。それに俺は一つ一つ丁寧に答えてあげた。
「つまり、その子は元々は魔物で?」
「シン先生が魔法でちょちょいと人間に変えたんですの?」
「それと同時に闇魔法の"テイム"を使用」
「逆らえなくして今に至る、なのです?」
「ああ。それで合ってる」
大雑把にまとめられたものを肯定し、飯にありつく。うめぇ。使ってるのは猪の肉だな。噛む度に肉汁がぶわっと口の中に広がって美味いんだ。
「で、その子をどうするんですか?」
ヘレンが体を前のめりにしながら問いかけてくる。なんだ?そんなに気になるのか?
「もちろんクラスに入れるぞ?住居はここでいいだろうし」
「魔物をクラスに入れるんですか!?」
「魔物っていっても元だ。今は魔法を使わないと戻れないよ。魔法で戻っても一時的なものだしな。ま、一番の理由は好奇心だな。知性ある魔物なんて初めてだったから面白そうだし」
「その、安全なんですの?暴れたりはしないんですの?」
「ああ、大丈夫だ。"テイム"で人に害をなすような行動は一切禁止してある。魔法も色々使えるが制約で縛ってあるから問題ない」
「それなら私はいいですわ」
おや、マリはいいのか。
「色々魔法が使えるのならそれを見て盗むことも出来ますし、魔物の視点からの話とかも色々と聞きたいですもの」
なるほど。そういう事ね。まあ魔法なら俺の見てくれればいいんだがな。
「俺も別にいいかな。誰かが増えるだなんて良くあることだし」
「私もいいかなー。肌がスベスベしてて可愛いし!」
「……危なくないなら問題ない」
「えっと、私もいいと思います……」
「どちらでも」
「私もどっちでもいいのです。今はお金を稼がないといけないのです!」
おや。アカネ組はみんな参加に賛成ですか。どちらでもいいが二人いるが。スズ、そんなに触るのはやめような。
「エリとヘレンはどうなんだ?」
「んー?先生がいいって言うならいいと思う」
「私は、やっぱり不安です。何かの拍子で"テイム"の魔法が解除されたら一大事ですし。それにこの家に住まわせるって事は先生との距離が近くなるって事ですし……」
ん?最後の方は声が小さくなってなんて言ってるのか聞こえなかったな。
「不安だけど反対ではないんだろ?」
「……はい。私は知性ある魔物というのは初めて知りました。彼女がどんな影響を及ぼすにせよ、近くに置いておかないといけないのは確実ですから」
まあね。野放しにしてどっか行きましたじゃ困るからね。使える魔法の種類からして大変な事になるだろうし。
「そんじゃ、全員賛成って事で。後で学院長に掛け合ってくるかな」
「……よろしくお願いする」
ぶすっとした顔をしながらも生徒全員による対して頭を下げて挨拶する黒蛇少女。
「よし。そんでみんなに相談があるんだ」
「相談、ですか?まだ何かあったんですか?」
「こいつの名前考えてくれ。どうやら名前なんて無かったようなんでな」
いつまでも黒蛇少女なんて呼んでられないんだよ。学院に入れるにしても名前ないといけないし。