33.家の秘密
「お待たせしてしまってすみません」
「別にいいさ。元々は俺の仕事だったものをやってもらった訳だしな。んじゃ、調べるか」
ヘレンの洗い物が終わったので家の調査を開始する。
「どこから調べるの?」
「後で直せばいいから台所からにしようかと思ってる」
台所にあるもの全てを亜空間に仕舞い込む。そして、台所へ一閃。真っ二つに綺麗に割れ、中が見えるようになった。ちなみに手刀だ。剣なんか家で使う訳ないし。
「……手刀ってこんな威力ありましたか?」
隣でヘレンが呆れていたがスルーした。
「えっと、水道がこうだから……。はぁ?」
水道管がどこに繋がっているのかを調べると、何処にも繋がっていなかった。
「水道管が繋がってないってどうやって水出してんだよ……」
さらに謎が深まってしまった。
「"修復"」
水魔法の回復系を弄って物体にも有効にした魔法で台所を綺麗に直し、亜空間に仕舞った物を元に戻していく。創造魔法を使ってもいいんだが、いちいち魔力消費で怠くなっていられない。
「風呂はお湯が溜まってるから……洗面台だな」
脱衣所にある洗面台の水道も確認するために一閃。これも綺麗に真っ二つに割れる。
「元に戻すとはいえ家の物を自分で壊していくってなんだかあれですね……」
メイドであるヘレンには物を壊すというのに忌避感あるようだ。まあ普通の人でも自分で自分の物を壊すなんて普通はしないだろうけどさ。
「……こっちも何処にも繋がってないのか」
洗面台にある水道も水道管は何処にも繋がっていなかった。こちらも"修復"でパパッと直す。
「さて、次は何処を調べるか……」
電気でも調べるか?それともガスにするか?と悩んでいるとエリから提案が出た。
「一々壊さないで"サーチ"の魔法を使って家全体を調べればいいんじゃ……」
「……」
そういうのは早く言って欲しかった。壊し損じゃないか……。
場所を家の外へ移し、家全体を対象に"サーチ"の魔法を使う。
「うっわ、何だこれ。どれも繋がってねぇじゃん……」
「どれどれっとほんとーだ」
「これは……一体どうやって出ているのでしょうか?」
うーむ……。何処かに手がかりはないかと細かく調べていると一つだけ、地面に向けて管が通っているものがあった。といっても、地面の中に入っているわけでは無く、表面に接しているだけのようだが。
「これは……。なるほど。そういうことか……。"魔力可視化"……やっぱりそうか」
「わかったんですか?」
「ああ。ほら、この部分。ここだけ地面に向かって管が通っているだろ?これ、地面から魔力を少しずつ吸い取ってるみたいなんだよ」
「地面から、ですか?でもそんな事をしたら魔力が無くなってここら辺の環境が変わってしまいますよ?」
どのような土地でも魔力というものは含まれている。その為、魔物という生物が現れるのだ。その魔力が土地から無くなってしまえば、生態系などはガラリと変わってしまう。木々などの成長にも影響は出るし、水にも影響が出る。
「俺もそう思った。で、その魔力の流れを見てみたら吸い取った魔力を家が貯蔵して、その魔力を水や電気、ガスに変換しているみたいなんだ」
「魔力を物質に、ですか。魔法というよりは錬金術の方が近いかもしれませんね」
「だな。で、俺たちがこの水や電気、ガスを使うと当然魔力を使うわけだが、使い終わったもの、つまり排水口とかに入った水とかな。それがまた魔力に変換されて地面に戻ってるみたいなんだよ」
そう。水道管が何処にも繋がっていなかったのは、ある程度の所まで水が入ったら全て魔力に変換されていたからだ。
「でも、それで変換されるのは水だけでは?電気やガスなどは使っておしまいのものの気がするのですが」
「どうも、電気は使われた途端魔力を消費すると共に魔力に戻るようになってるみたいだ」
「なるほど。ではガスは?」
「どうもガスは使われたらそれまでらしい。魔力には戻んないみたいだ」
「それでは戻る魔力が少なくていずれ環境が変わってしまうのでは?」
だな。そう思ったんだがどうも違うみたいだ。
「水と電気を魔力に戻した時の変換効率がいいみたいでな。吸い取ってる魔力と同じくらいの魔力を土地に戻してるみたいだ。だから環境が変わる心配はない」
「……凄い家ですね」
「だな。俺も驚いてる」
「?」
ちなみにこの話にエリはついてこられなかったようだ。