32.気になること
色々と面倒な仕事をこなし、明日は何の授業をしようかと悩みながら帰宅した。
「帰ったぞ」
「お帰りなさい。ご飯とお風呂どちらにしますか?」
「んじゃ、風呂で」
「わかりました」
ヘレンは俺の家の電子機器やらの使い方をキチンと理解している。一度別れるまでは一緒にいたから見て覚えたんだそうだ。メイドって凄い。
脱衣所で服を脱ぎ、身体を洗って湯船に浸かる。
「あぁ〜やっぱ風呂はいいなぁ〜」
この世界に風呂というものはなく、行水で済ませるんだとか。最初に風呂を見たエリとヘレンもかなり驚いていた。
「にしても、本当、どうなってんだろうなぁこの家」
創造魔法で出したこの家は最初から何でも揃っていて水も電気もガスも出る。どこかにお金を払っているわけでもないし、一体どうやって出しているのか気になっている。
「……調べてみるか」
風呂から上がり、さっさと着替える。リビングの方からいい匂いがしてきた。その匂いをかいだからか腹がぐぅ〜と鳴った。
「先に飯だな」
リビングに行くとテーブルの上には既に何皿も料理が並べられていた。サラダにスープ、肉、安定の果実、さらには米も炊いてある。
「あれ?肉なんてあったっけか?」
前にエリ達から貰った物があったが、あれはアンジェリカさん含め4人で食べきっていたはずだ。
「あ、それは魔物の肉です。私が狩ってきました」
「ちょっ、嘘つかないで!私も狩った!」
「エリ様はついてきただけでしょう。挙句魔法でボロボロにしてしまって」
「う……。そうだけど……」
エリ………。風魔法で首ちょんぱして血抜きすればいけるのに。いったい何をしたんだ……。
「ま、いいか。食べようぜ。いただきます」
「「いただきます」」
このいただきますも俺が使っていたらエリが興味を持ち、真似し始めたのだ。最終的にアンジェリカさんも言うようになった。
「ん!これ美味いな!」
魔物の肉ということでどんな風なのかと試しに食べてみたらかなり美味しかった。柔らかくジュワッと肉汁が口の中に広がり、かけられているソースが肉の旨みをさらに引き立てている。これなら白米何杯でもいけそうな気がする。
「ありがとうございます」
他の料理もとても美味しくこれから毎日のようにこのクオリティの料理が食べられると思うと嬉しく思う。
「ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでした」」
「ねぇねぇシンさんーってどこ行くの?」
「ちょっとこの家の事が気になってな。調べて回ってみようかと思ったんだよ」
「気になったってなにが?」
エリはどこも疑問を感じていないようだ。まあ、言ってないからしょうがないか。
「この家、水も電気もガスも全部出るだろ?でもこの家亜空間から出したから分かるようにどこにも繋がってないんだよ。だからどうして水とか出るのか気になってな。前は調べる時間も無かったし丁度いい機会だからってことで」
「なら私も一緒に調べる!」
「おう、いいぞ。ヘレンはどうするー?」
洗い物をしているヘレンにも聞いてみる。こういうのって俺もやった方がいいんだろうけど、ヘレンがやりたいっていうからやらせている。
「洗い物が終わったらご一緒します。なので、先に調べていて構いませんよ」
洗い物が終わったらか。ヘレンは構わないって言ったが今食べ終えた皿を洗うだけだから量は少ないし待っているか。