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31.家にしよう

「はい、じゃあ今日の授業はここまでだ」


 あの後から時間は経ち、授業終了を報せる鐘が鳴った。今日1日で色んな事を教えたと思う。それに、疲れた。教師ってかなりハードな仕事なんだと思った。


「そういや、エリとヘレンはどこで寝泊まりするんだ?」


 解散してからヘレン達に聞いてみた。この学院に学生寮というものはない。あるのは教職員用の寮だけだ。毎回アンジェリカさんに転移で送って来てもらう訳にもいかないだろうからこちらに寝泊まりするんだろうが、いったいどこでだ?


「もちろん、シンさんの家です」


「シンさんの家に泊めて貰えればと思っています。アンジェリカさんも納得してますし」


 あ、マジですか。どうしようか。


「あー、今俺さ、教職員用の寮で寝泊まりしてるから家は無いんだけど……」


「それでは、あの家は?」


「仕舞ってあるよ。どこか、家を置ける様なスペースがあって学院に近いところがあるならそこに家を置いて暮らしてもいいんだが……」


「それなら、森の中は如何でしょう」


「森なんてあるのか?」


 外なんて出てなかったから初耳だ。


「はい。北門から出てすぐの所に。すぐ近くですから移動に時間はかかりませんし、森の中なので敷地はたくさんあります。魔物は出るでしょうが、シンさんの結界術なら突破される心配もないかと」


 初めてで力の制御が出来ず、あんまり力を入れてなかったとはいえ、その結界を壊したヘレンが言うならまあ大丈夫なのだろう。


「それじゃそこに出すか。そんで俺は寮から家に移動だな」


 結界を使うとはいえ、魔物が出る森の中に住まわせるんだ。アンジェリカさんに納得してもらうには俺がいないと駄目だろう。


「んじゃあちょっと待っててくれ。部屋から色々取ってくる。それと学院長にも話しておかないといけないしな」


「わかりました。それでは北門に集合ということでお願いします」


「ん、了解」


 部屋に戻って服や勉強用具などを回収し、魔法で部屋全体を綺麗にして学院長室に向かう。


「失礼します」


「はいはい。ん?シンさんじゃないですか。どうしました?」


 何か書類を見ていた学院長が顔を上げて用件を訪ねてくる。


「家に住む事になったので貸してもらっていた部屋をお返ししようかと思いまして」


 部屋の鍵を学院長に渡す。


「そうですか。どこの家ですか?学院の前の?それとも、少し離れた場所で?」


「えっと、森です。森の中」


「…………」


 森と言ったら学院長も黙ってしまった。そして胡散くさげな表情をしている。まあ森なんて普通言われても信じられないよなぁ……。


「森の中、ですか?木を伐って家にすると?」


「木は整地の関係上伐ると思いますが、家は前に住んでたものが亜空間に仕舞ってあります」


 果実の木とか水も一緒にな。


「そ、そうですか。一応、一緒について行っていいですか?こちらで調べたい事もあったので」


「構いませんよ」


 学院長からの許可も得た?事だし早速北門へ向かいますか。っと、そうだ。


「すみません、学院長。一つ聞きたいことが」


「はい?何でしょう?」


「北門って何処にあります?」


「……」


 学院長に連れられて北門まで案内された。しょうがないじゃないか!ずっと部屋で勉強してたんだから!文字の読み書き出来るようになるまで外に出ても意味なんて無いんだから!


「すまん待たせた」


「いえ、私達も初めて来た場所だったので色々寄り道をしていたので今着いた所です」


 こういう会話ってなんかデートの待ち合わせしてる時の会話みたいだよな。


「学院長さんどうしたんですか?」


 ヘレンは触れなかったが、エリが学院長に触れた。


「ああ、なんか調べる事があるんだと。それとここまで案内してもらったんだ。場所がわからなかった……」


「学院長室前で待っていれば良かったですね……」


 次回からはそうしてほしいと思う。


「そんじゃ行くか」


 門番の人と挨拶して、門を出る。出てから数分歩くだけで森に到着したので、立地の良さそうな場所を探す。


「うーん、ここら辺でいいか」


 周りにあまり木がなく、雑草などがたくさん生えている空間を発見した。


「少し離れててくれ」


 3人ともすぐに離れてくれた。かなりの距離を。何でだろうか……。


 気にしたら負けだと思い、風魔法で木を伐採、土魔法で雑草などを取り除きながら整地をしていく。木や雑草は全て亜空間に仕舞っていく。ある程度整地が出来たので、家を亜空間から取り出し、近くに果実の木を植え、水を貯めておける場所を作り水を入れる。最後に結界術師に変身し、結界を張る事で完成だ。


「よし、もういいぞ」


「見事な手際でした」


 荒野で何もないところから家を建てたしな。あれに比べれば変身の回数も少ないし楽だったよ。


「ほ、本当に家が出来ました……」


 学院長は驚愕していた。まあ普通こんな所に家なんて建てないし、亜空間に家を仕舞う事もしないし、そもそも亜空間を使える人自体が少ないからな。


「そんなわけで学院長、俺とエリとヘレンはここに住むんで。安全面は結界で確保してますし、食料も果実とか魔物の肉とか取ればいいんで」


 魔物の肉は一般家庭にも並ぶありふれた食材らしいので食べても大丈夫だ。毒があったりする魔物は毒抜きをすれば食べられるらしい。


「わかりました。では見れたことですし、私の方は調べ物でも探してきますので」


「はい。また」


 学院長は自らの目的である調べ物をしに森の奥深くへ向かっていった。


「それじゃ、好きに過ごしててくれ。俺は少し学院で仕事してくるから」


「えっ、戻るの?」


「そりゃ教師だからな。授業だけが仕事じゃないんだ」


「そうかー。なら早めに帰ってきてくださいね」

「エリ様が暴走しないようしっかりと見張っておきますので安心してください」


 ヘレンよ、この家を守ってくれよ!

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