30.注意を払う
スズが一人で練習を始めてしまって暇になったので胡座をかいて座った。。他は何をしてるかと見てみても、レン達は早く"スラッシュ"を使えるようになりたいのかスラッシュの練習を、エリとヘレンはエリに合った武器探しをしているようで、マリとヒカリは魔法の練習をしていた。
「うーむ、瞑想のおかげかみんな元気だな……」
瞑想は精神的疲労までは取り除いてくれないので、俺は適当にやらせたが皆は精神的疲労なんてないようだ。
「っと、コウタ危ないぞ〜」
見ていたらコウタが少し魔力操作におぼついていて魔力暴走を起こしそうだったので、注意をする。
魔力暴走とは、自身の中にある魔力を制御出来なくなって魔力が暴れ出す現象の事だ。魔力が暴れ出すと魔法の暴発や体調不良など様々な悪影響が発生する。治す方法は体内の魔力を枯渇させるか鎮静させるくらいだろう。
「……はっ、ふぅ」
コウタは何とか魔力暴走を起こさずに済んだようだ。危なねぇなぁ……。
「!?なんで!?」
急いで立ち上がり、魔法でゲートを荒野に繋ぎ、魔法を飛ばす。
「あっぶねぇ………」
「す、すみませんでした………。そ、その、まだ完全に制御が出来てなくて……」
謝りに来たのはヒカリだ。今のはヒカリが練習している魔法が何故か俺の方へ来たのでゲートで飛ばしたのだ。
「あー、いいよ。大丈夫だ。他の奴らのとこだったら危険だったから俺の所に来て運が良かったし、練習に失敗は付き物だからな」
「あ、そ、その、本当にすみませんでした……!」
ヒカリが何故か逃げてしまった。代わりに一緒にいたマリがきた。
「すみませんでしたわ。迷惑を掛けてしまって」
「別にいいさ。生徒ってのは先生に迷惑を掛けるものなんだよ。それにヒカリにも言ったが練習に失敗は付き物だ。いちいち俺に謝る事じゃない。魔法の練習でああいう事故は多いからな。気にするな」
「わかりましたわ!」
「あ、怪我させたらちゃんと謝れよ?」
「そのくらいちゃんとわかってますわ!」
ふぅ………。全く、いちいち気にするような事じゃないってのに……。
「今大丈夫ですか?」
「ん?なんだ?ヘレン」
マリとの会話が終わってマリが立ち去るとヘレンが話しかけてきた。武器探しをしていたはずだが。
「その、エリ様が合うような武器が見つからなかったようで……」
「ああ、なるほど。それで?」
「合いそうなものを選んでもらえたらと。先生に選んでもらったものならエリ様はきっと使う筈ですし」
「ふむ………。ま、いいか」
ヘレンと一緒に武器を物色しているエリの下へ行く。
「エリ、武器は決まったか?」
「決まりません!」
はぁ。えっと、エリの戦闘スタイルは基本魔法での遠距離攻撃だから……。
「エリは魔法で討ち漏らしとかするか?」
「多分、しません。一応中級も少しは使えますから!」
ふむ。それに大体ヘレンが一緒にいるか。ヘレンがエリから離れるなんてないし。ってことは……。
「杖で良いんじゃないか?杖を通して魔法を使えば魔力消費量を少しは抑えられて、威力も上がるし」
「杖ですか!。じゃあ杖にします!」
ヘレンの言う通り俺の選んだやつに決まったな。いいのか、そんなんで……。