27.制御の練習
「ようやくちょっとコツ掴んできたんだからもうちょっとやらせてくれよ!」
まあ、レンの場合はそうなんだけどさ、他は違うんだよ。
「今やってた"スラッシュ"だけどな。あれは魔力操作が成功の鍵なんだよ。で、魔力操作を学ぶには魔法をやるのが手っ取り早いってわけ。エリがすぐ出来たのも魔力の扱いが上手くて魔法が得意だからだ。まあ、今そこまでやりたいってんなら"スラッシュ"を続けてもいいが、魔法からやった方が上達は早いだろうな?」
「魔法やる」
「魔法いいねーやろー!」
「魔法やりたいです……」
「ってわけで、レン。諦めてくれ。それに"スラッシュ"とか1日練習したくらいですぐ実戦で使えるようになるものじゃないしな。毎日やるからまた明日だ」
「わかったよ……」
納得してくれたようでなによりだ。
「それじゃあ魔法をやる訳だが、みんなどの属性が使えるんだ?」
「俺は火」
「風ですわ」
「……土です」
「水と、光です……」
「風と土だよー!」
「闇」
「風と水です」
「火と水と風と土です」
へぇ。光と闇使えるやついるのか。というかシュンは闇だけか。基本魔法使えないって珍しいな。
「見事にバラバラだな。どうするか……。それじゃあこれやるか」
やるのは座学の時に少し見せた指先に小さな球を出す魔法。これ水属性・下級に属するのだが、案外調節が難しいのだ。
「普通に〜球を出すと大体拳大の奴が出てくるが、今回はそれを意識的に小さく指先に出す練習をするぞ。あ、エリは1種類だけな」
エリは制限無くすとまた4種類の魔法とか使ってやりそうだから怖い。
「"スラッシュ"を極めたいならこれは集中してやれよー。この意識的に小さくってのが魔力操作に関わってるからな。案外難しいから覚悟しろよー?」
下級などの階級は威力や派手さなどで決められているだけで、難易度は考慮されない。それこそ先程エリがやりそうになった4種の魔法が合わさった時に起こる爆発などは上級にあたる。エリが使ったのは全て下級の球系であり、それを使用するだけでも簡単に上級クラスを使えるというわけだ。誰でも頑張れば4種の基本魔法は使えるようになる。つまり簡単に上級クラスの爆発を起こせるわけだ。難易度が考慮されないのはこのためだ。上級なのに簡単に、下級なのに難しいだとどの階級にすればいいのか分からなくなるので、考慮されないのだが……。王級の場合は難易度も考慮されている。高威力と高難易度、それが王級の条件だ。
「まあ4種の基本魔法を覚えるとか面倒くさい事の難しさは入ってないんだよな」
基本魔法だからといって簡単に覚えられる訳ではないのだ。それなりの努力をしなければ4種類全ての魔法を覚えるなど出来ない。
「ま、このクラスの生徒には4種全部覚えてもらうつもりだけどな」
アカネの話では俺たち日本人みたいな召喚された者以外のこの世界の住人にも勇者はいるらしい。だったらここにいる奴らを勇者と呼ばれるくらいには強くしてやりたいと思う。強い事は身を守る事に繋がるからな。将来何になりたいのかは分からないが、4種全部覚えていたら基本何にでもなれるだろうし。
「レン、乱れてるぞ。シュンは大きすぎる、もっと小さくだ。スズはもうちょっと魔力を入れないとダメだな」
そんな考え事をしながら一人一人に注意していく。
「今から5分数えるからしっかりその状態維持しろよ。スタート!」