26.スラッシュの練習
ジリリリと音が鳴り、班での1対1は終わりを告げた。
あの後はヘレンと1対1で剣聖以外を使って戦っていた。エリは何をしでかすかわかったもんじゃないので見学だ。審判が出来るとは思わないからな。
「よし、集合だ。どうだった戦ってみて」
「いつもと違う試したりする動きが多かった気がする」
「少し、対人戦のコツみたいのがわかったような分からないような、そんな感じですわ!」
ふむ。まあ良い傾向か。
「ま、いいだろう。そんじゃ、次はそうだな……。剣やるか」
「……剣」
「剣か」
「おう。今さっきヘレンと1対1でやって今の実力を見たからな。女子達には悪いが剣をやらせてくれ。やりたいんだったら木剣を使ってもいいからな」
「わかりましたわ!」
「はい……」
「やるやるー!」
「んし。それじゃまずは"スラッシュ"使える奴ってどれくらいいる?」
手を挙げたのはヘレン一人だけだった。
「あらら……。ヘレンだけだったか。やっぱヘレンの実力が1つ上って感じか。なら女子もいる事だし、基本的な動きとか説明した事を実際にやってから"スラッシュ"の特訓でもするか」
「"スラッシュ"か!やりたい!」
「いいな」
「よし、まずは動きとかからな。相手はヘレンやってくれ。あんまギアは上げずにな」
「わかりました」
そこからヘレンを相手に剣さばきを生徒に見せ、実際に一人一人やらせていく。そこから自分の持ち込みやすい形に体や剣を移動させたりを個人個人に教えていったりして、基本的な剣の使い方などを教えていった。
「よし。基本的な動き、剣さばきはこんなもんだな。後は各自でやりやすいように改良していけばいい。剣も直剣じゃないやつにしてもいいしな。そこは各々の判断で。それじゃあ次は"スラッシュ"やるぞー」
やるぞーといってもこちらは魔力の操作が上手く出来ないと使えない技なので、出来ないと思うけどな。そもそも今回の目的は"スラッシュ"を覚えさせる事じゃなく、どのくらい魔力操作が出来ているかを見るためのものだからだ。
「うーん、出来ませんわー」
「うぐぐぐぐぐ、こ、こんな感じか?」
「難しい」
うむうむ。魔力操作は難しいものなのだ。変身能力を使っても感覚掴むまで悉く失敗してたからなぁ。
「あ、出来た」
なんだと!?と思って声がした方を見てみたらエリが確かに"スラッシュ"を発動させていた。エリはなぁ……元々魔法使いとして育ってたから魔力操作がちゃんと出来たんだろうなぁ。知識はないけど。
「まじか!?教えてくれよ!」
お、レンがエリに教わりに行った。その調子で友達になってくれ。
「こ、この剣、に、魔力をこう、グイって、突っ込んで、パーって広げて、ド、ドーンってや、やるのよ!」
あ、人見知りが出た。そしてめっちゃ説明下手だ。
「グイッとパーってドーン?御免、わかんねぇや」
うん、レンがわからない方で安心したよ。これで分かってたらどう教えていけばいいのか悩んでたところだからな。
「エリ様に代わって私が教えましょう。まずは剣に魔力を流してください」
見兼ねたヘレンがエリに代わって教え出した。うん、ヘレンならちゃんとやってくれるだろう。
「流し込んだらその魔力を薄く、剣の刃の部分だけに纏わせるようにしてください」
お、ヘレンのおかげでレンが少しだが形になってきているな。
「後はその魔力を剣を振った時に思いっきり放つだけです」
お、ちょっとだが"スラッシュ"みたいな感じのは出たな。レンは詠唱しなくても"火球"が使えるくらいだし、魔法剣士になれるんじゃないかな。
「はい、じゃあやめ!今すぐ出来なくても大丈夫だからな。次は魔法やるぞ」