18.リーとアンジェリカ
テスト2日前となりまして、更新が滞っております。テストは金曜日から火曜日までなので、終わってからある程度したら更新頻度が戻ると思いますのでよろしくお願いします。
シンがエリとヘレンを連れて教室に向かった後、学院長室ではアンジェリカとリーが静かに扉を見つめていた。
「ここも、だいぶ変わったんだねぇ」
「そうでもないですよ。あなたがいた頃と殆ど変わっていません」
「そうかい。それは、いい事だね。で?私と二人きりで何が話したいんだい?」
「おや、気付いてましたか。……戻ってきませんか?この場所へ」
リーの求めにアンジェリカは首を横に振る。
「そいつは無理だよ。今の私にはそこは分不相応すぎる。それに、私にもやらなきゃいけない事があるのさ。今は、エリ様を一人前にする事がね」
「なればこそ!今、エリさんはここの生徒じゃないですか!一人前にするなら戻って来た方がいいはずです!」
「まあ、そうなんだろうね。でも、ここにはシンさんがいる。なら私は必要ないよ。ここでの事はシンさんに任せて、エルグランドで領主としての務めってやつを代わりにやっておかないといけないさ」
アンジェリカはシンの人の良さを、あの二人を導く事が出来る人だと、分かっている。それは、出会ってからの数日間での態度でよく分かる。
「彼に、そこまで入れ込むほどのものがあると?」
「私にはあるね。あんたがどうなのかは分からないけどさ」
「僕には、まだ、分かりません。アカネさん、勇者が連れて来た二人目の勇者だからこそ、生徒に良い影響が出るかもと期待はしています。けれど、彼はここに来るまで文字すら読めず、書けずにいた。そんな人が果たして、ちゃんと生徒に教えられるのかどうか……」
「ま、そう思うなら観に行けばいいじゃないか。私も見てくるからね。シンさんがどれ程になったか気になるからね」
「ですね……。学院長、元学院長の二人が見ていたらかなり緊張させると思いますけど。初授業なのに」
「大丈夫さ。私が元学院長だって事は言ってないよ。緊張してもあんたの分だけさね」
リーはガクッとよろけると、目を見開いてアンジェリカを見た。
「なんでそんな重要な事言ってないんですか!?」
「今の私はエリ様に仕える普通のメイドなのさ。前の事なんて関係ないだろう?」
「それは、そうでしょうけども……」
「それに……昔の事を持ち出すなら、私は殺されるべきじゃないのかい?学院長さん」
「………」
アンジェリカの言うことに、リーは黙ってしまう。黙る事しか出来なかった。
「そんな事だからね。私には昔なんて関係ない事なのさ。今、何をしているか、それが重要な事だよ。さ、早く行こうか。もう始まるんだろう?」
「……ええ。そうですね。行きましょうか」
二人が学院長室を出ると、ゴーンゴーンと授業開始を報せる鐘の音が響いた。