16.ヘレンとの連絡
あの後、創造魔法や普通の魔法の練習、アカネの相手など最初に考えていた身体を動かす以上の事をした気がする。
「んあぁ。疲れた……」
疲れた俺は普通にベッドに横になって寝ようとしていた。その時だ。
「ん、なんかあったのか?」
俺が持っていた黒結石が光ったのだ。黒結石というのは連絡を取れるように俺が作り出したもので、俺以外にエリ、ヘレン、アンジェリカ、アカネが持っている。黒結石での連絡は黒結石以外では受信出来ないので、傍受される心配もない。この世界で傍受されるような事があるのかわからないが。
「もしもし、シンだが」
『ヘレンです。そちらは元気に過ごせているでしょうか?』
ヘレンか。この黒結石、失敗したと思っている事があり、かける側は相手を指定出来るのだが、出る側は出るまで相手が誰だか分からないことだ。
「ああ、元気だぞ。案外自由にやれてるしな。字も覚えたし、なかなか充実はしてるかな」
『そうですか……。よかったです。それで、連絡なのですが、私とエリ様はこれからエルグランドを出る事になったのでお伝えしようかと思いまして』
「もしかして、王が何かしたか!?」
あのアカネは何かしたとは思えないし、する必要がない。だとすれば考えられるのは王だけなのだが。
『え?王様ですか?特に何も無いですよ?私とエリ様がエルグランドから出るのは勉強の為ですよ』
勉強。何だ、勉強か。
「勉強ならエルグランドでも出来るんじゃないか?実際ヘレンは頭良いし、色々知ってるだろ」
『私はまあ大丈夫なのですが、エリ様の方が……。まあ他にも魔法や剣術なんかも学べるようなので行ってみようかと思いまして』
ふーん。魔法や剣術なんかねぇ。魔法はエリ、剣術はヘレンだろうな。
「それで?何処で勉強するんだ?アンジェリカさんが場所を決めたんだろ?」
『あ、いえ、今回はエリ様が決めました。絶対にここに行くと言われたので。まあ私も行きたかったので、異論は出しませんでしたけど』
「へぇー、あの勉強をすぐ抜け出して遊ぶエリがねぇ。どこにしたんだ?」
『それはシンさんも一緒でしたよね。っと、場所はテラミスですね。テラミス魔法学院っていう場所です』
は?何だって?
「すまん。もう一回頼む」
『テラミスです。テラミス魔法学院です。あ、テラミスっていうのは、王都を東に行った所にある場所でして』
「あー、大丈夫だ。テラミスなら知ってるぞ。むしろ、エルグランド、王都、テラミスしか知らないくらいだ。まさか、テラミスとは……」
『どうかしたんですか?』
「いや、何、こんな事もあるのかーって、ん?いや、待てよ?」
アカネは俺達が来た時点では既に教師だったんだよな。それで、話し合いの結果俺は手伝う事になった。つまり、この時点で教師の補助っていうのは決まってたわけで。アカネは最後、ヘレン達に渡す物があると言っていた…。まさか、とは思うが。
「ヘレン、まさかとは思うが、テラミス魔法学院を薦めたのはアカネか?」
『そうですよ。シンさん達が先に行った後に勇者様が、もう一度シンさんに会いたいならこの学院に編入して来なさいって編入手続き等の用紙を渡してくれました』
アカネ確定か。なんだあんにゃろう。俺に秘密にしやがって。
って確か今日の朝、編入生をどのクラスが受け持つかって会議をしていたような……。あの編入生ってヘレン達か!眠くて話半分にしか聞いてなかった!誰が受け持ったんだ!?編入させるよう仕向けたくらいだからアカネか!?アカネだといいなぁ………。
「そうか。俺は今テラミス魔法学院にいる。ちなみにアカネの補助教師だ。アカネの言う通り、来たら会えるぞ」
『本当ですか!勇者様の言葉は嘘じゃなかったんですね!あぁ……。またあんな幸せな時間が過ごせるんですね……』
「だな。まあ、教師と生徒達って括りに変わるけどな」
『それでも、私とエリ様は嬉しく思いますよ!あぁ、学院生活が楽しみです!』
「それで、いつ来るんだ?」
『明日です!』
「明日!?エルグランドからテラミスまで距離あるだろ。大丈夫なのか?」
『アンジェリカさんが転移で送ってくださるので大丈夫ですよ』
アンジェリカさんはテラミスに来た事があるのか。ここの卒業生だったりするのかな?
「俺も明日から仕事開始だ。頑張ろうぜ」
『はい!それでは、失礼しますね』
黒結石の光が収まっていく。これが連絡終了の合図だ。にしても、そうか。あの二人が学院に来るのか。楽しみだな。