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13.テラミス魔法学院

「この度はどうもすみませんでした!」


 学院に入ってアカネが土下座で開口一番言ったのがそれだった。


「勇者が忙しいのはわかっていますから、大丈夫ですよ。それにちゃんと書き置きもありましたしね」


 好青年風の裾が長い白い服を着た男が申し訳なさそうに言う。ふむ。仕事放り出して来たって言ってたが、書き置きはしてあったのか。


「それと、この人は?編入生ですか?」


「あ、こっちはシンっていいまして、私と同じ勇者です。私の仕事の補助をしてもらおうかと思いまして連れてきました」


「つまり教師って訳ですか。ふむふむ……。いいでしょう」


 上から下までじっくりと見られ、最後には目を合わせられ、心の奥まで見透かされたような感覚に陥った。


「俺はシンです。まあ、さっきの通り補助として連れてこられました。字は読めないんで覚えてから補助の仕事をします」


「僕の名前はリーです。一応テラミス魔法学院の学院長を務めさせていただいてます。どうぞ、これからよろしくお願いしますね」


 握手をしながらへーと思った。この人が学院長だったのか。


「シンさん、住居などはありますか?ないならばこちらで用意しますが」


 家か。うーん、一応、亜空間に入れてあるんだが、ここに出すのはなぁ。


「一応あるにはあるんですけど、用意して貰えるならお願いします」


「ん、わかりました。それと字を覚えるんでしたね。それじゃあアカネさんが作った簡易表を後で渡しますね」


 リーさん色々用意してくれるな。


「それではアカネさんは授業の方をお願いします。もうすぐ始まりますから」


「あ、そうですね。わかりました。授業終わりに少し話したい事があるんですけど、いいですか?」


「もちろん、構いませんよ。私は次の時間授業がありません。シンさん行きましょうか。案内しますから」


 リーさんに連れられて、学院の中を案内してもらった。食堂、各クラスの教室、教職員室、魔法図書室などなど。


「そして、ここがシンさんの部屋です。ここで働いてもらう間は好きに使ってもらって構いません 」


 ベットに机、クローゼットと生活するには困らないであろう物が揃っている。なかなかにいい部屋だ。


「ありがとうございます。ここまでしていただいて」


「いいんですよ。こちらにも打算がありますからね」


「打算?」


「ええ。あの勇者であるアカネさんが直々に連れて来られた方ですし、きっと良い影響を生徒達に与えてくれるのではとね。そう思ったので、なるべくここにいてほしい訳ですよ。学院長としてはね。勇者2人が教師として勉学を教えてくれるなんて場所はここにしかありませんから」


 なるほど。勇者として俺を見てたってわけね。


「そんな事言っちゃっていいんですか?俺がそれ聞いて出ていくとか考えてなかったんですか?」


「私が貴方の目を見た時に、少し魔法で見たんです。それで、この人なら大丈夫だろうなって思ったんですよ。生徒達を任せても。そんな人がこの程度の事で出ていくなんて事はないって思っていますので」


 信頼されてるって事かね。


「その話じゃ初対面の人にいきなり魔法を使ったって事じゃないですか。ま、俺はここの文字とか常識、金も持ってないから出て行かないですよ。学院長さんの言う通りね」


「それが聞けて安心しました。では、これをどうぞ」


 リーさんから何枚かの紙を貰う。その中の1枚に読める字が書かれていた。ふむ。これは日本語じゃないか。あ行からわ行まで書かれていて、各文字の隣に読めない文字が書かれている。


「これが簡易表ってやつですか」


「はい。その他に渡したのがこちらの文字を使ったものですね。それが読めるようになったら大丈夫だと思いますよ」


 ふむ。なんか日本語無しで見ると解読ゲームみたいで面白そうだな。勉強は嫌いだが、頑張るか。


「それでは、私は失礼しますね。アカネさんと話す事がありますから」


「ん、ああ。ありがとうございました」


 リーさんが部屋から出ていく。それじゃあ俺の方も始めるかな。







「それで、話とは何ですか?アカネさん」


「才能がある子を学院の編入生として入れてほしいってお願いなんです」


「才能がある子、ですか?シンさんじゃなく?」


「シンは私の補助ですから。シンと一緒にいた子達なんですけど、どうも、その中の一人がシンを召喚したらしいので」


「なるほど、それで才能があると。でも、シンさんはそれを知っているのですか?」


「秘密にしています。ここに来るまでの間、シンには驚かせられましたからね」


「こちらも驚かせたい、と。なるほど。学院側としては大丈夫ですが、その編入してくる方は大丈夫なんですか?」


「大丈夫だと思いますよ。書類等一式全て渡してシンに会いたいならここに来る事って言いましたからね」


「なかなか凄いことをしますね。それでは、まあ着いたら教えてください。私の方で色々と準備はしておきますから」


「はい。ありがとうございます」


 ふぅ。あんな別れを目の前で見せられちゃったら少しだけお節介したくなるのよね。あの子達と随分と仲良さそうだったし。


 さて、私も仕事頑張らないとね。

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