135.ユズキ戦①
ユズキから紫色の手が数本伸び、強襲してくると共に、ユズキ本人も何処かから取り出した剣で斬りかかってくる。
殺すならユグシル相手にやった戦法が楽だが、元日本人だと分かった以上殺すのは控えたい。
そんなわけで剣に"アウロラ"を纏わせ紫色の手を斬り、ユズキの剣も切断させた。
「俺はこんなんじゃ、死なないぞ?」
こいつらがどのくらいやるのか、底を見る必要がある。事と次第によっては俺が全て相手取らないといけないからな。
「では、増やしましょう」
紫色の手が伸びる。1本、2本となり、10本、20本とどんどん増えていく。50本くらいになった所で増えるのが止まった。
こいつら……どれだけ作り出してやがんだ。流石に、50本も剣で相手にするのは無理だな。
目に見えないくらいに小さな"アウロラ"を周囲にバラまき剣を構える。
伸びてくる手は幾つも"アウロラ"に触れ消滅するが、"アウロラ"に触れないものもあり、それは剣で斬り払う。
「おっとっ」
斬った手が消滅寸前でこちらを殴ってきた。消滅寸前であり、精霊としての力も"アウロラ"のおかげで無くなっているため大した攻撃にはならなかったが、そうでなかった場合、危なかった。
あの手は空間を破れる。そんな手が人体に当たったら空間ごと体が破かれる、はず。試した事がないから分からない。でも、そんな危険があるかもと思っておいた方がいいのだ。戦いは油断が命取りになる。
「その手とはもう何度もやりあった。対策は十分してあるんだぜ」
「なるほど。急に指示が通らなくなったのはそういう事ですか」
ユズキが全ての手を引っ込め、代わりにユズキの手と足、翼が紫色の光を放つ。
「では、純粋に格闘戦と行きましょう」
「っ、そんなんありかよっ」
ユズキの基本性能が先程より格段に上がっている。あの人工精霊なんでもありかよ。
紫色の光を放っている以上、攻撃を受けたら何があるか分からないため、"アウロラ"を纏わせた剣で攻撃を受けるしかない。
ユズキは翼を利用しての高次元格闘術を繰り出して来ており、次に何処を攻撃されるのかが読めない。
つまり対応が全て後手に回らざる負えなく、次第に追い詰められていく。
「っ」
顔を掠った。普通の拳のはずなのに、チリッと焼いたような熱い痛みが走る。
やはり当たったらまずいようだ。このままだとまずいので、仕切り直す。
一瞬だけでも視界を塞げればいいので、ユズキと俺の間に土壁を急造し、その隙に地面に潜る。
影に潜る事は出来ないが、地面に潜る事なら出来るようになったのだ。
これで一旦距離を取る。