134.強敵
「どうやら、敵さんのおでましらしい」
修行をひと段落させ、"自己空間"を解除すると、こちらの方へ向かってくる翼を生やした人型が見えた。女性2人。見覚えがある。エネドラの記憶の中にいた強い敵の内の2人だ。
「捕捉完了。敵です」
「雑魚は任せといてー。私が殺っておくから。『ラストキー』の確保よろしくー」
「任されました。行動開始です」
おや、いきなり仕掛けてくるか。
「まあ、とりあえずそれを突破してみてくれ」
「これは……なんです?」
「私は知らないかなぁ」
来ると分かっていて罠を張らないわけが無い。罠は鏡と反射結界を織り交ぜたものだ。それを俺たちを包むように展開している。基本、何をしても反射するため、突破するのは難しい。だが、敵ならやってくるかもしれない。その間に準備をする。
「アカネ、聖剣と聖鎧準備。魔剣はいつでも出せるようにしとけ。ハナは重力負荷をこの一帯にかけろ。カズキは敵が罠を突破した瞬間を狙えるように攻撃準備。クーはあの2人以外に敵が来ないか周囲の警戒。五和は、危なくなった時、いつでもアレが使えるように構えとけ」
指示を飛ばしつつ、俺も周囲の警戒しながら目の前の敵を観察する。
エネドラの中の記憶にあった3人のうちの2人。男の奴がいないので、どこかから奇襲を仕掛けて来るかもしれない。そしてこの2人、1人は俺が受け持つとしても、もう1人を他に任せるのは難しいかもしれない。
紫色の手を2本、3本と同時展開させて罠を破壊しようとしている。エネドラやユグシル、他の奴だって今まで紫色の手は1本しか出して来なかった。ここからもう強敵だとわかる。
「カズキ、いけるな?」
「はい」
紫色の手が何本も出現し、束ねられているのを見て、これは壊されると判断し、カズキに初撃を任せる。
パリンッと鏡が割れる音がし、罠が破壊された。
「"精霊術・暴風一閃"」
カズキの精霊剣技が放たれ、敵2人に当たる、という瞬間にそれは霧散した。
「ちっ。そっちで1人任せる。アカネ、頑張ってくれよ」
「そっちこそね」
アカネ達では相性が悪そうな霧散させた方を相手取る事にする。どうやら相手もこっちとやってくれるようだ。
「俺なんか無視されると思ったんだが?」
「最初は無視をしようと思いました。しかし、あの障壁の事も考えると障害になりかねませんので、先に始末しようかと」
なるほどな。ハナを狙えばそこを狙われると分かってるわけか。
「名前を聞いてもいいか?」
「ユズキです。それでは、死んでください」
ユズキとの戦いが始まった。