130.行動方針
「すぐ行動を始めるぞ」
「そうは言っても手がかりが何もなければ無駄足になりますよ?」
「まずは神殿に行けばいい。そこにいる奴らは全員邪神教団の回し者だって事がエネドラの記憶で分かってるからな。ただ、五和とハナは近付くのはダメだ」
「私の場合、行ったら頑張りが無に帰りますからね」
エネドラ達がハナを捕獲したがっていたのは、あいつらの様になって『鍵』の役割を果たしてもらうためだ。そんな場所に連れて行けるわけがない。
「護衛にアカネ、頼めるか?」
「カズキも貰ってくわ」
「いいぞ。潜入なら俺とクーでどうとでもなる。魔法に関しても俺ら2人なら問題ないからな」
俺には変身能力が、クーには魔法使いの身体がある。俺が潜入に特化したものに変身して、クーが影に入り込めば楽勝だろう。
「今回は潜入して無造作に記憶を貰っていく事にする。異常事態がなければ、それだけだな。襲撃等はまた違う時にだ」
「周りから潰していくって事ですね?」
「ああ。相手がどのくらいいるのか分からないからな。邪神教団の奴ら同士ならメンバーの事は分かるだろう。そのメンバーを叩く。俺たちが色々やってる時に邪魔されたら面倒だし、数が多いと物量で押される可能性も無くはないからな」
禁止級を使えば物量なんてほとんど意味はなさないが。
「とりあえず、神殿に行く前に少し特訓しておきましょ。五和ちゃんも戦える力を少しは持った方がいいだろうしね」
「まあ"自己空間"内なら幾らいても数秒になる訳だし、いいか。そんじゃ各自で特訓な。五和は俺が指導する」
「お兄ちゃんとなら頑張れるよ!」
「なら、とりあえず、基本属性4種全部いってみようか」
兄は兄だが、物を教えるからには教師になる。兄としてなら優しくするつもりだが、教師としてなら優しくするつもりはない。スパルタだスパルタ。
「ん〜えいっ!」
五和の手の上に大きな水が現れる。
「おい、ズルはいけないぞ」
だが、その水は物質生成によって出された水であり、魔法で出されたものではない。すぐにパシャッと水が重力にしたがって落ちた。
「魔法ってどうやるの〜?」
「一応学院にいたはずなのに、何を学んでたんだか……。基礎の基礎からやるぞ。全部頭に詰め込めよ?」
俺が出来る限り、五和がわかるように説明した。
「わかったか?」
「うん。ある程度は。でも、不思議だね。なんで日本には魔法がなかったんだろう」
「日本に限らずあっちの世界には魔法なんてなかったんだろうな。世界のつくりが違うせいなんだろうよ。まあ、俺たちが考えても仕方ない事だ。今は魔法が使えるようになるように頑張れ」
「はーい」