閑話 魔族
「どうやらエネドラとユグシルは失敗したみたいです」
「あーんな自信満々だったのにぃ?」
「あいつらはそこまで強くないだろ。期待なんてしてねぇよ」
そこは薄暗く、紫色の光によって視界は確保されている。その紫色の光は全てガラスの中の手から発せられており、その数は軽く十は超えていた。
「適性も1つしかありませんでしたからね。それに比べれば私達は優秀です」
「そりゃそうだ。俺たちは選ばれた4人なんだからな」
「4人って言っても今は3人、しかも残りの1人である『ラストキー』はあっち側なんだけどねぇ」
「ちっ……」
その場にいたのは3人の、シン達が魔族と呼んでいる者達であった。エネドラやユグシルと同じく肌は黒く、その背には翼が生えていた。
「なんであの野郎はあっち側にいんだよ」
「そもそも私達でも『ラストキー』の居場所はなかなか見つけられなかったのです。どちら側にいようと、見つかったのなら何をしてでも連れて来ればいいのですよ」
「殺せれば簡単なんだがなぁ」
「それはー邪神様の意向に反しますよねぇ。4人全員揃わないといけない訳だしぃ」
「殺さずってーと俺だと難しいんだよなぁ」
「では私が行きましょうか。手加減なら私が一番得意としています」
「周りに色々いるみたいだしー、私も必要じゃない?」
「ですね」
二人の魔族が翼を広げ何処かへ移動していく。
「俺は何してようかねぇ……。手の育成でもしてるか」
紫色の光を放つ、ガラスの中の手全てに魔力を注ぐ。魔力を注がれた手はその光をさらに強め大きくなっていく。
「この手はいちいち魔力を注がねぇといけねぇのがめんどくせぇなぁ」
その手はエネドラとユグシルが使ったものと同じものであった。それが十を超える数存在している。
人工精霊。シンが懸念していたものである。しかし普通の精霊とは違い、その手の精霊に意思はない。
「俺がやっててもだめだな。『ラストキー』の観察でもしてくるか。おい、残りやっとけ」
その声に反応して何人かの魔族が現れ、手に魔力を注いでいく。
そして、選ばれたと言っていた男はその場から姿を消した。