129.精霊との話③
(他の誰にも聞かせるな。これは後でセリーヌにも伝えに行く可能性のある案件だ)
(話は聞いていたから分かってる。確認したいのは、人工的に微精霊、精霊が生み出せるか、でしょう?)
話が早くて助かる。
(そうだ。もし、出来るなら少し厄介な事になる。……出来るのか?)
(私もそこまで力がある精霊って訳じゃないから断定は出来ないけれど、微精霊の出来方なんかを精密に再現出来れば、可能、なんでしょうね)
気になるのはあの紫色の手だ。あれは間違いなく精霊だった。しかも"狂乱"もさせられていた。空間を引き裂くくらいの力も有している。俺とアカネが"アウロラ"で殺したが、あの2つだけとは限らない。
(なあ、見た目が全く同じ精霊っていうのは、存在しているか?)
(見た目が同じ?うーん、ないんじゃないかしら?少なくとも私は見た事ないわ)
あの紫色の手。あの時は精霊の一部を引き剥がして使用していると思っていたが……。いや、まだ確証がある訳じゃない。俺が勝手にそう繋げようとしているだけだな。だが、もし、紫色の手がさらに出てくるなら……。
(アネラ、これは今話が出たからそうかもしれないって俺が勝手に思っているだけの、妄想にすぎない。だが、言っておく。もしかしたら、敵は人工的に精霊を生み出しているかもしれない。あの、紫色の手がそうなのかも)
(……そう。片隅には置いておくわ。セリーヌ様にはいつ報告する気?)
(確証が出来たら、だな。人工的に生み出せないならないでいい。だか、もし生み出せるとしたら、それは)
(邪神の再来、そう考えている?)
(ああ。あいつらは邪神復活を狙ってる 。単騎でアカネが倒せない邪神が、もし、量産されれば?この世界、簡単に征服されて滅びるぞ)
もちろん、そんな事を起こさせる気はない。だが、可能性としてはあり得てしまう。感情論だけで動いても最悪の結果を引き寄せるだけだ。慎重に動かなければ。
(俺がアネラと話したがった時点であのメンバーはある程度俺の考えに行き着いていると思う。だが、絶対に言うなよ。面倒になる)
(そのくらい承知してるわ。……セリーヌ様の契約者がシンなら良かったのに)
(今の状況だと、そうだったらありがたかったんだけどな。セリーヌにはヘレンを守ってもらわないとな。さて、俺は戻る。念を押すが、誰にも言うなよ)
(わかってるわよ)
さて、もしもを考えて行動した場合、今すぐにでも動き出さないとやばそうだな。