128.微精霊について
「なあ五和、帰らないか?」
「お兄ちゃんも帰るなら、いいよ?」
「あのな、これから本当にやばくなるんだよ。命の危険もあるんだ。この世界に来たばかりの五和じゃちょっとした事で死んでしまう事もあり得るんだ。俺は嫌だ。五和が死ぬなんて。だから帰ってくれないか?あそこは守りを固めたから安全なんだ」
「お兄ちゃん、私もね、お兄ちゃんが死んじゃうのが嫌なの。お兄ちゃんだって死んじゃう可能性はあるの。それにその守りだって絶対じゃないんでしょ?お兄ちゃんの側が一番安全だと思うの。違う?」
……確かに、今出来る一番でテラミスを守っているが、それが破られない通りはない。何かしらの奥の手で破壊されればその後待っているのは悲惨な光景だ。
だが、俺の近くが安全かと言われたらそうじゃない。俺はセリーヌの用事を済ませないといけないし、邪神教団やら元日本人の奴らやらを相手にしないといけないのだ。それには常に危険が伴う。絶対に五和を守り切れるという保証もない。
「小僧、どんなに言ってもどうせ聞かないのだろう?ならなるべく危険から遠ざけながら置いておけばいい。それと行動する時は誰かが付いておればよかろう?並の相手ならどうとでもなるのだからの」
「それは……そうだが」
「小僧が想っているように五和も想っているという事だの。私とハナのようにな」
「……あー、分かった!いいぞいても!だけど、絶対に危ない真似をしたりせずに、誰かと必ず一緒にいること!それが条件だ」
「うん、ありがとうね、お兄ちゃん。それに、クーちゃんも」
「別に、さっさと話を進めたかったから助け舟を出した訳ではない。勘違いするな」
「うん、そう思っておくね」
うーむ。ヘレンの時に思ったが、クーって意外と優しいよなぁ。
「それじゃ、セリーヌと話した事を伝える。他言無用だ。五和も、ここで聞いた事は誰にも言わないこと」
「うん」
そうして、セリーヌと話した事を共有した。セリーヌが精霊神である事、セリーヌの目的、邪神について、などなど。
「そう……。邪神が精霊なのは聞いてたけど、そんな話だったのね」
あー、アカネにはアネラ経由で邪神が精霊だって伝えてたっけか。
「お兄ちゃん、精霊ってなんなの?」
あー、五和はそっからか。まあ、しょうがないけども。
「精霊ってのは、微精霊っていう精霊の小さい版みたいなのが、長い時間をかけて力を蓄えるとなれるものなんだ。えっと、微精霊ってのは、例えば、魔法を使うだろ?そうすると、魔力の残滓、残りカスみたいなのが、空気中に出ていくんだ。その魔力が集まって、出来るのが微精霊。つまり、魔力で生まれるんだ」
「へぇー。ねぇ、魔力が集まって微精霊っていうのが出来るなら、人工的に微精霊っていうのが作れたりするんじゃないの?」
人工的に、微精霊を?無理ではない、はずだ。少しずつ、少しずつやれば出来るだろう。魔力の残滓から出来た微精霊はかなり大きく見れば人工的といえなくもないわけだし。
「カズキ、アネラと話をする。二人だけで」
「わかりました」
もし、人工的に微精霊が作り出せるなら、その微精霊に力を与えれば精霊に出来る。その精霊に力を与え続ければ……。