119.エネドラ戦③
エネドラから紫色の手が伸びる。ユグシルが使っていたものと同種のものが、今、カズキとハナに向かって伸びている。
「このっ!」
聖剣での時間干渉で紫色の手を切断しようとしたが、斬撃が当たると少し動きは止まったが、すぐに斬撃の方が消え去ってしまい、切断どころか満足に止めることすら出来なかった。
確か、あれは空間を引き裂くとかシンが言ってたわね。でも、空間を引き裂くだけなら今カズキとハナに向かって伸ばしていないはず。それにエネドラはこれを使う前に"強化"を使って準備完了と言った。この"強化"が紫色の手を使うのに必要なものなら……。
一瞬で思考をまとめ、少しでも動きを止める為に聖剣で干渉し、準備を進める。
(あー、はろー?)
頭の中に知らない声が響いてきた。
(誰?)
(カズキの精霊よ。ちょっと伝えたい事があって念話を繋いで貰ったのよ)
カズキの方をちらっと見れば距離を取りながらもこちらを見つめていた。
(あの紫色の手、きっと精霊よ。それも邪神クラスでかなり強力な、ね。それの一部ってところかしら)
(邪神クラスって、まず邪神って精霊だったの!?)
自分でも知らなかった事を知る精霊に驚きを隠せなかった。
(なんで対峙した事のある貴女が知らないのよ……。まあ、それはともかく、あれは精霊。それだけは断言出来るわ。しかも前の私みたいに"狂乱"してる)
(つまり、"浄化"出来ればあの精霊はエネドラに力を貸さなくなる?)
("狂乱"させてるって事は多分、そうでしょうね。でも、"狂乱"を"浄化"させるにはシンくらいじゃないと無理。だからあの精霊を一度殺しちゃいましょ)
(殺すって、そんな簡単に……)
精霊を殺すという言葉を精霊から聞かされるなんて思ってもみなかったわ。
(大丈夫。あれは契約してない精霊を無理矢理使役してるだけだから。殺してもすぐ再生するわ)
(それってつまり、契約してたら殺されたら死ぬって事よね?)
(まあそうなるわね。だから精霊にとっても契約は色々考えるのよ。セリーヌ様みたいに簡単にホイって出来るものじゃないの)
セリーヌって確か、ヘレンちゃんが契約した精霊よね?それを様付けするなんて、セリーヌってどれだけの精霊なのかしら。
(それより、殺す方法よ。邪神を封印した貴女なら出来る。方法は……)
殺す方法だが、まあ何とかなるはず、という感じのものだった。
(本当にそんなので、殺せるの?)
(一応殺せるはず。後は貴女の頑張り次第よそれじゃ、私が話してるとカズキが精霊術使えないから頑張ってよね)
そう言って念話を切られてしまった。まあ、方法は聞いたし、もし出来れば状況は良くなる。やるしかないわね。