118.エネドラ戦②
「さてと、それじゃ、ハナとカズキは離れてて」
エネドラから情報を引き出すために、ハナとカズキに離れてもらう。
「さてさて、見せてもらおっかな、っと」
エネドラが影の中に入った。"重力影鎖"で影に直接重力負荷をかけているため、そこまで動く事は出来ないだろうが、拘束は解除された。
「やっぱり影を使っちゃダメね。ハナ、次から影無しで」
「了解です」
影に潜れるという事は聞いていたけど、クーで試した時は"重力影鎖"の影に潜る事は出来ないらしかった。なら大丈夫かと思ってやってみたのだけど、どうやらダメらしいわね。
「カズキ、後ろ!」
「っ、大丈夫です!」
カズキの後ろからエネドラが現れ、拳を振るった。カズキは咄嗟に剣で防御したが、"強化"されたエネドラの拳は受け止められないらしく吹っ飛ばされていた。しかし、大した傷も出来ていないようで、まだアタッカーとしての役割はこなせそうだ。
にしても、影から影への移動ってずるいわね。影の中でも重力魔法は効いてるみたいだけれど、他の攻撃手段が全部通じないなんて。
カズキの確認をしているうちにエネドラが再び影の中に潜ったようね。影を薄めてもダメらしいってシンに聞いているから影をどうにか無くさないと面倒そうね。
「ハナ、影を無くして!」
この中で影をどうにか出来るのは、シンに色々教えてもらっていたハナだけでしょうね。カズキの精霊術は無理だし、私もそんな魔法は使えないから。
っと、ハナに指示を飛ばせば当然優先的にハナを狙ってくるわよね。それは想定済みなのよ。
聖剣でハナを囲むように斬っておいた。その斬撃が影から出てハナを狙おうとしたエネドラを襲う。斬れ味自体はそこまで大した事はないが、今回は斬撃を重ねた。10回も同じ場所を斬ったのだ。10回分の斬撃がエネドラを襲っているのだ。
「ぐあっ……」
影を出てからの攻撃。ハナを殺す気まではないだろうが行動不能にまで追い込むつもりではいたんだろう。そして見せている限りでハナに直接的な攻撃力は無い。だからこそ、簡単にいけると思っていたのだろう。その慢心が、油断が、この聖剣の斬撃を決めた。
血を失っていたエネドラが、さらに血を流す。しかし、影の中を移動出来るなら動きが鈍くなった所であまり意味はない。
「ハナ!お願い!」
「"サンクチュアリ"」
ハナが魔法を発動させると、ドーム状に範囲が広がり、その中の影が全て消え去った。
"サンクチュアリ"、聖域ね。面白い事を考えるわねシンは。これで影は無くなった訳だし、戦況はこっちがかなり有利になったわね。あとは、エネドラにまだ隠し玉があるかどうかだけど……。
「"強化"」
どうやら、無さそうね。あるならこの状況を打開するために絶対に使用するはずだもの。"強化"の重ね掛けなんて大した効力もないんだから。
「さて、これで準備完了か。予定外に血を多く流したが、それもここまでだな」
「!?っ、カズキ、ハナ!離れて!」
まだ隠し玉があった。しかもその言動から逆転出来るカードが。