111.倒せそう
重力負荷の影響は通常の5倍。通常の負荷である程度動けていたようだが、5倍にもなれば接近戦を挑んでくる様子もない。さっきから"模倣"ばかりだしな。
倒すには"模倣"の隙の数秒を狙って禁止級のどれかを当てる必要がある。だが、1発だと"模倣"で。2発なら"模倣"で1つを確実に対処しつつ2つ目を躱される。3発だと躱した後に"模倣"だろう。どれだけ体勢が崩れていても"模倣"なら完全に相殺出来るからな。すると、2発目で体勢を崩してからの4発目で決めるのがベストか。
というか、ここまで考えているのに攻撃して来ないな。"模倣"は反撃にしか使えないのか?だとすると決定打にはなり得ないと思うが……。いや、相手はかなり動ける。接近戦が主なんだろうな。それに"自己空間"内に影は無い。だから、今の重力負荷で身体が重く、接近戦が出来ず、影で逃げる事も出来ないこの状況が討つのに最適だ。
「"鉄処女"」
「"模倣・鉄処女"」
おっと。"鉄処女"は相殺出来る魔法じゃないから"模倣"出来ないとかそういうのは無いらしいな。
自分に向けられた"鉄処女"を"黒炎"で燃やしつつ、倒すための4発の魔法を考える。当たれば確実に勝てるのが"黒炎"と"退廃の風"だろう。これを2発目と4発目にする。相殺が出来ない"鉄処女"を1発目に持ってくる事で1発目から体勢を崩す事が出来そうだな。すると3発目に何を持ってくるか……。
「"鉄処女"」
「"模倣・鉄処女"」
1発目。"鉄処女"を避けるために相手が動く。
「"黒炎・ダブル"」
すかさず2発目。自分に迫り来る"鉄処女"と相手に向けて放つ。"鉄処女"の相手をしていると4発目で仕留められない可能性があるから無理をしてでもダブルにした。
「"腐食水"」
「っ、"模倣・腐食水"……ぐっ」
3発目。禁止級水魔法の触れるとその部分が腐食する水を放つ。すぐ"模倣"されると思ったが、一瞬だけ発動までの間があった。連続して撃ちさえすれば3発目でもギリギリ間に合うか間に合わないかくらいなのだろう。
「"退廃の風"」
4発目。"退廃の風"が奴に迫り当たる、そう思ったが右腕を削り取るだけにとどまり、他の部分は躱される。
3発目に"腐食水"を持ってきた理由は、たとえ撃ち合っても消えず水が跳ねるからだ。跳ねた水でもそれは"腐食水"だ。当たってしまえばそこは腐食して使い物にならなくなる。そして水の跳ね方など分かるはずもない。だからこそ3発目に置いて4発目を当てる為に完全に体勢を崩すつもりだった。
だが、4発目の"退廃の風"を放った時、奴の体勢は完全には崩れていなかった。理由は跳ねた水を避け切らなかったから。右腕を失った奴を見ても何処にも腐食したような箇所はない。右腕に掛かるもの以外を避け、4発目を右腕を犠牲にする事で避けたのだろう。
「だが、そんな状態になれば次は避けるのすら難しくなるんじゃないか?」
「………」
犠牲を出す事でどうにか避けられたのだ。同じ事を行えば今度は命か他の部位かが飛ぶ。確実に勝てると思ったその時。
「っとと〜。ちょっなんで腕飛んでるんですか〜」
そんな軽い言葉が聞こえてきた。