110.倒すためには
空間影響力を5倍まで下げる。このまま10倍だと俺は何とかなるが、ハナが保たないからな。
「けほっけほっ。どうですか?」
「いや、無理だ。硬すぎる」
「そんなっ……」
「っと、休んでてくれ。身体にガタが来てるはずだからな」
この10倍の重力負荷を使うと身体は必ずダメージを負う。まず耐えれる方がおかしいのだが。
空間影響力を5倍まで下げたからか相手も立ち上がっている。戦闘出来るほど動けるわけじゃないようだがな。
このまま体力を削ろうと思い魔法を使おうとして、そういえば"自己空間"内なんだから禁止級魔法使ってよくね?と思い出し"退廃の風"を使用する。
触れた対象の存在を削り取る風。それが相手に迫る。いくら耐久力や防御力が高くともこれは無理だろ。
「"模倣・退廃の風"」
存在を削り取る風がぶつかり合い、どちらの風も同じ様に削られ、同時に消えた。
ありえない。どんな魔法にだって個々人で特徴や差などがある。全く同じなんて存在しない。
「"模倣"って言ったな」
模倣の意味は真似をする、同じ事をするなどだ。そして"模倣・退廃の風"と言ったのが微かだが聞こえた。俺の"退廃の風"を完全に真似して放ったから結果が相殺になったのか。
"模倣"なんて魔法はない。あっちの軽そうな奴だけじゃなくこっちも創造魔法が使えたのか!
「危ない危ない。少しでも遅れていたら殺されていたな」
「遅れて欲しかったけどな」
こいつもう普通に話す事が出来んのかよ。どうする……。もし"模倣"がなんでも真似出来るんだったらこっちはほとんど取れる手段がない。あるにしても"とっておき"だけで使うと俺が動けなくなる。仕留めきれなきゃアウトだ。
"自己空間"内であるから現実には数秒しか経たない。軽そうな奴が武道場に乗り込んでくる事はない。今ここで、こいつを仕留めないと後々面倒そうだ。
仕留めるためにも"模倣"がどこまで出来るのか調べないといけない。
「"退廃の風・ダブル"」
「"模倣・退廃の風・ダブル"」
同時に2発の"退廃の風"を放つがこれは"模倣"されるか。なら。
「"退廃の風・嵐"」
「"模倣・退廃の風・嵐"」
魔法の形状変化すら真似てくるのかよ。っと、ハナを避難させないと危ないな。嵐は効果範囲がデカすぎる。
「"鉄処女"」
禁止級土魔法の"鉄処女"は"模倣"される事なく、避ける事に集中していた。これは、相殺出来ないから、なのか?
「"黒炎"」
黒い炎を放つ。禁止級火魔法だ。この炎は全てを燃やす。燃える対象を選ばない。ただただ燃やす。
「"模倣・黒炎"」
「"退廃の風"」
"黒炎"を放った後にすぐに"退廃の風"を放つ。"黒炎"も"退廃の風"も受けてしまえばそれまでだ。"黒炎"は"模倣"されたが、どうだ?
「くっ……」
避けた。避けたぞ。"退廃の風"を"模倣"する事なく避けた。もし"模倣"が使えるならこんな危険な事はしないはずだ。
つまり、"模倣"は使用するのに数秒待つ必要がある。数秒経たない限り連続使用は出来ない。その数秒を狙えば、勝てる!