106.クラス決め大会
あれから4日。敵が攻めてきた様子もなく、クーからの連絡で王とヘンリは無事だと聞いている。今の所危険は無い。念の為に城を巡回させているゴーレムからも危険信号は発信されてこない。
そして、今日はリーさんと話してから1週間。つまり五和のクラス決め大会だ。
「大丈夫だよな?勝てるよな?な?な?」
「怖いのでそんな顔近付けて聞かないでください。大丈夫ですよ。マリちゃんはおろか他の人に負けるなんてありませんから」
気合いは十分のようだな。さらに頑張ってもらうためにいい事を言っておいてあげよう。
「負けたらあの十倍頑張ってもらうからな?」
「ひっ!?」
ハナは恐怖に顔を歪ませ、情けない声を上げ後ずさる。
「負けなければいいんだ。だから、な?本気で臨めよ?」
「分かってます!分かってますから!?目が怖いです!顔は笑ってるのに目が笑ってないのが怖いです!」
おや、そんな顔してたかな。ならそれはあの日から寝てないのが原因かもなぁ。ハナの修行、敵の捜索、ゴーレムへの魔力供給などなどやるべき事はたくさんあったからなぁ。
そんな事をしつつヘレン達には悟られないようにしないといけないし、クーがずっと帰らない理由なんかのでっちあげ等もしないといけなかったので、寝る時間なんてなかったのだ。
「えー、武道場に集まってもらってすみませんね。学院で大事が出来る所がここしかありませんでしたので」
ハナを脅していたらリーさんの話が始まった。どうやら役者が揃ったみたいだな。さて、警戒を最大限引き上げるとするか。
「事前の知らせの通り、生徒同士のバトルロワイアルでイツワさんのクラスを決めようと思います。トーナメントだと相性最悪、なんて結果で諦めなければいけないなんて事になる可能性もありますしね」
俺としてもバトルロワイアルはありがたかった。その方が楽だから。それに、ハナは対集団戦の方が得意だ。
「はい、総勢20クラス。20人ちゃんといますね?鐘が鳴ったらその時点でスタートとなります。いつでも始められるように準備していてくださいね?」
この学院、20クラスもあったのを初めて知った。アカネクラスと他19クラスは行事でもない限り殆ど接点がないからだ。アカネクラスだけ、孤立している感じだ。
なぜそんな風になっているかというと、アカネがいる、それだけで生徒は貴重な休み時間を使いアカネに接触しようとするからだ。アカネに会いたくない生徒などいる筈もないので、19クラス分の生徒が押し掛けてくるのだ。それはかなり面倒だ。ということで、少し特殊に作られたらしい。
普通には分からないが、19クラス側とアカネクラス側で何かの隔たりがあるらしい。ただ、その隔たりがあるせいで19クラスの方からアカネクラスに行くのは、臨時クラス替えのような例外以外じゃないと無理らしい。学院長のリーさんや教員は行き来出来るそうだが。
俺はその隔たりは結界か何かを使用しているのではないかと思っている。"条件結界"というものがあり、ある条件を満たしているとその結界の中にいても外に出る事が出来るというものだ。条件は使用者が決める。軽めから重めまで自由自在だ。生きているなどの軽めなものから部位欠損などの重めまで。大抵は事件の犯人なんかの口を割らせる為に使われるらしい。どう使うのか分からないが。
っと、そんな事を考えていたらちょうど鐘が鳴った。開始の合図である。
最初に動いたのは18クラス、マリのクラスとハナ以外の全クラスの生徒がマリに強襲したのだ。