102.救出
2本目の通路も行き止まりに宝箱が置いてあり、その正体は魔物だった。こっちの方は中に"退廃の風"をしたら消え去った。牙が欠けたからそうだと思ったが、やはり中は攻撃が通るらしい。
"転移結界"を使用して広間に戻り、3本目の通路に入り、進んでいくと扉があった。鉄製で非常に重い。面倒なので結界で壊すと中にヘンリがいた。両手を手錠で繋がれ、鎖で吊り上げられている。
「大丈夫か!?」
「うっ……。シン殿、か?」
「ああ。助けに来たぞ」
「私よりも王様を……」
「王ならもう助けた。アカネと一緒だから安心してくれ」
鎖と手錠を破壊して自由に動けるようにしてやる。
「そう、か。すまない、シン殿。感謝する……」
「ああ。とりあえず王とアカネの所へ戻るぞ。話はそれからだ。歩けるか?」
「ああ。体力には自信があるのでな……。だが、ずっと繋がれていたからか手はそこまで自由にとはいかないようだ……。それに武器もない」
「敵が出てきたら俺がやる。安心してくれ」
ヘンリに"反射結界"をかけてやり、"転移結界"で広間まで戻り、来た道を戻る。
「この破損している壁はシン殿が?」
トラップを反射して出来た壁のひびなどを見てヘンリが聞いてくる。
「ここに仕掛けられてたトラップを結界で反射した結果だな。あ、後でちゃんと直すぞ?」
「ああ、いや、別に破壊された事をどうこう言っている訳ではないのだ。シン殿が後で直してくださるというのはなんとなく、分かっていたからな。ただ、どうしてこうなったのか、というのが気になっただけでな」
「ああ、なんだ、よかった。壊した事を怒られるのかと思った」
「助け出された身でその様な事は言えない。だが、トラップか……。ここにはその様なものはなかったはずだが……」
「なんだと?」
ならあれは誰かが仕掛けたものだってのか?数もかなりあった。
「そういえば、魔物もいたぞ。魔物も元々はいなかったか?」
「ここは閉じ込める為にある場所だ。魔物など置いているはずが無い。それに一応、城の一部だ。もし何かあったら王様に危険が及ぶ」
確かに。ならやはり魔物も用意されたものという事だ。なら、魔物とトラップを用意したのは同一人物と考えてもいいだろう。わざわざ違う奴がやる事じゃない。なぜ、ここまでしてヘンリや王は殺されなかった?閉じ込められるだけなんだ?
「ヘンリ、これは誰にやられた?」
「具体的に見たわけではないが、騎士団だろう。王様が書斎の隠し部屋、私が地下という事はある程度この城を把握していないと出来ない事だからな」
騎士団か……。だが、ここまでの事を騎士団だけでやるには無理がある。魔物をここに連れて来るための魔法、魔物の量、あの場にいた騎士団の面子じゃ無理だ。時間がかかりすぎる。
「やはり、あの蝙蝠か」
あの時蝙蝠以外は見当たらなかった。殺したのは間違いだったか……。せめて敵の尻尾でも掴めるようにしておくんだった。
「……ヘンリ、早く戻るぞ」
こういうのはアカネに相談だ。各地に足を運んでるアカネならきっと何かわかるはずだ。