101.地下
「なーんで地下には魔物がいるんですかねぇ……」
城の地下に入ったはいいが、そこには大量の魔物が待ち伏せしていた。
「種類もバラバラ。こりゃ人為的に集められたやつだな。ヘンリを助け出そうとするやつを追っ払う為の魔物って事か?」
だが、どうやって人為的に魔物を集めたんだ?"テイム"でならやれるだろうが、量の関係上、それはほぼない。他の方法も難しいものばかりだ。
「創造魔法で操る術を創った?」
だが、そんな事が出来る者など一握りしかいないだろう。あの蝙蝠から見ていた奴、そんな事が出来るのか……?
「まあ、いいか。調べるために1、2体は生け捕りにしといて他のは全部始末だな」
今やるべきはヘンリを救い出す事だ。考えるのはまた今度でいいだろう。
「っと、こいつら強化されてるな」
1体1体がかなり強くなっている。普通の冒険者などでは油断してすぐに殺されるくらいには。
「まあ俺には意味ないんだけどな」
"自己空間"を魔物全員を巻き込んで発動させ、条件設定で魔物の強化状態を数体残して解除。解除した魔物から順に魔法と剣で倒していく。最後の数体、強化状態を解除していない魔物を残し、全てを片付けた後、地下に戻る。
「さてさて、こんなもんじゃないはずだし、お次はなんだろうな」
流石に魔物だけという事はないだろう。他にも何かあると警戒するべきだ。
「っと、次は物理的トラップってわけか」
俺の足下に穴が空き、その下に鋭利な棘が見える。魔物で体力を使わせトラップで仕留める作戦か。
「まあ、俺は疲れてないし、落ちても上がればいいだけなんだが」
空中で風魔法の"飛行"を使用して上まで上がろうとする。すると上から棘が降ってきた。穴を塞ぐように。
「なるほど。これで脱出不可能にさせるわけか。まあ、無理だけどな」
"退廃の風"で棘を削り取り、脱出する。
「トラップにいちいち邪魔されるのは面倒だし、結界術師使うか」
結界術師に変身し、"反射結界"を展開して進む。すぐに左右から鉄球、矢、魔法などが飛来したが、"反射結界"のおかけで全て来た方向に戻っていく。
その後も様々なトラップが作動するが、全て"反射結界"が跳ね返す。
ずっと進んでいくと少し広い空間に出て、先が三つに分かれていた。
「分かれ道か。面倒だなぁ」
"転移結界"のマーキングを広間に設置しておき、一つずつ通路を調べていく事にした。
「まず1本目はっと。……宝箱?」
1本目の通路をずっと進んで行くと、行き止まりで宝箱に見える木箱が落ちていた。
「宝箱ねぇ……。まあいいか」
開けてみようと蓋に手を触れようとすると、宝箱の蓋が開き、そこには綺麗に並んだ牙が。そのまま俺の手に噛み付こうとする。
「だよなぁ」
こんな所に宝箱があるはずがないだろうと思っていたが、やっぱりだった。噛み付こうとした宝箱は"反射結界"に弾かれ、牙が欠けていた。
「よっと」
とりあえず倒そうと結界を箱に当てるが、ダメージを受けた様子はない。圧縮してみるかと結界で囲って小さくしていっても箱が触れると結界は止まってしまう。
「この箱、攻撃無効みたいなやつか?」
試しに魔法使いで魔法、剣聖で剣を当ててみても全て効いている様子はない。"退廃の風"すらも無効化している。禁止級魔法の無効化は制約などが無い限り無理なはずなんだがなぁ。
「"反射結界"で牙は欠けてるし、外側だけが無効化なのか?それとも牙が脆いだけ?」
この謎な宝箱、少し調べてみたくなったので"自己空間"に引き摺り込んだ後、"転移結界"で広間に戻った。