第八話
ぼくらの両親は、ぼくらが小さい頃に殺された。物盗りの犯行だった。ぼくと妹はちょうどその時遊びに家を出ていて、だから、助かった。幸運なことに。あるいは、不幸なことに。
それからしばらくは、親戚の家に引き取られて育った。親戚と言っても、元から交流があったわけではなく、遠く離れた地でぼくらを迎えてくれたのは、良い人でも悪い人でもない、いたって普通の人たちだった。恩知らずな物言いだと、分かってはいるけれど。
特に冷たくされた訳ではない。虐待のような待遇を受けていたわけでもない。しかしながら、なんで私たちがこの子達の面倒を見なければならないのだろう、面倒くさいなあ、でも仕方がないか、といった空気はひしひしと伝わってきた。もちろん、それはぼくの被害妄想だったのかもしれないし、そうでなくとも、親しくもない親戚の子供を引き取って育てるなんて確かに面倒くさいことに違いないのだから、ぼくはそれを受け入れるべきだったのだろう。そうしていれば、ぼくも妹も、今より幸せでいられたのかもしれない。でも、そんな風に考えるには、ぼくは幼すぎた。期待していたのだ。
なんにせよ、居心地の悪さを感じていたのは妹も同じだったようで、だからぼくらは、家の仕事を手伝っている間を除いて、1日中家の外で過ごしていた。そして、ぼくらの運命を大きく変える出会いをする。それは、大きな街へ向かう途中、ぼくらのいた村に休息に立ち寄った、旅のサーカス団だった。
最初に見つけたのは、妹だった。へんな人たちがいるの!と隠れんぼを放棄してぼくに駆け寄ってきた妹の笑顔を、ぼくは今でも覚えている。妹に引っ張られながら広場につくと、彼らが村の人たちを相手に芸を披露しているところだった。街での仕事に比べれば、見物人の数も、その見返りに得る報酬も、本当に微々たるものだろう。それでも、彼らは本当に楽しそうに芸をしていたし、村の人たちも、最初は物珍しさから集まったのだろうが、心から楽しんでいるように見えた。そして、ぼくらも。
ぼく自身もそうだが、何より、妹の心からの笑顔を見ることができたのは、本当に久しぶりな気がした。
だから、ぼくは彼らについていこうと決めたのだ。