第二話
リラを殺したのは誰なのか。
――村中が、その話題で持ちきりだった。それはそうだろう。殺される理由のない人間が殺されるなんて、異常なことなのだから。それがリラのように、皆から慕われていた人間ならば、なおさら。
ある者たちは、村の外部の人間の犯行だと声高に叫んでいた。賛同するものは、それなりに多かった。わたしも、そう思う。村人たちにとって、面倒ごとはいつだって、外からやってくるものなのだ。旅人のわたしだからこそ、そのことはよく理解しているつもり。だから今回は、自分が見るからに頼りない外見の女であることに感謝する、数少ない機会だった。もしこれが怪しげな風体の男だったりしたら、文字通り即座につるし上げられ、弁明の余地もなく殺されていたことだろう。本当に犯人であるかどうかはさておき、とりあえず殺しておくか、ぐらいの軽さで。とくに有事の際とあっては、旅人の命などその程度である。
一方で、内部の犯行をささやく者たちもあり、数としては、むしろこちらのほうが多数だった。一人一人の声は小さくとも、集まれば異様な熱気となって場を支配する。曰く、リラに好意を抱いていてフラれた冴えない男の逆恨みだとか。憧れの人をとられたと思い込んだ醜女の嫉妬だとか。
いかに善良な人間であれ、生きていれば他人に恨まれることもあるだろう。当たり前のことだ。それぞれの推理に尤もらしい根拠があるのだろうし、余所者のわたしにはその真偽を図る術もない。けれど、少なくとも、聞いていてあまり気分のいいものではなかった。
いずれにせよ、長居するような状況でなかった。身体を休めるだけ休めたら、すぐに村を出よう。そう決めた。