見えない星
初めて書いた練習なので、ひどい文章なのはご寛恕くださいませ・・・
喧騒と雑踏の中、ふと足を止めた。その反動で、後ろを歩いていた数人にぶつかられ、人の流れから押し出された。
いつもと同じ時間。いつもと同じ場所。いつもと同じように電車で帰る。それだけだ。
自分でも不思議に思いながら、群れから逸れた魚のように自動販売機に辿り着いた。
そこで、自分の注意をひいたものの正体を知った。
ギターを弾く少年だった。
コーヒーを買うと、少年からそう遠くない位置の壁に寄りかかった。
人、車、電車の音・・・・・・。聞こえた筈がなかった。しかし、聞こえる筈のない私の耳に少年の調べは確かに届いたのだった。
幼さの残る顔立ちと華奢な体つき。中学生だろうか。黒の地味な装い。少年は大音量で演奏しているわけでも、歌っているわけでもない。人通りから外れた一角で、淡々と演奏しているだけだ。流行や有名な曲を演奏しているわけでもない。歳の割には巧かったが、相応にたどたどしい部分もあった。だが、心を惹きつけてやまない何かがあった。
静かに目を閉じて、少年の世界に浸った。
歓喜、哀愁、爽快、寂寥・・・・・・。
少年の動く気配に、夢から醒めた気持ちで目を開けると、古びたギターケースを持った少年と目が合った。
少年は一瞬目を瞠って驚いた顔をした。そして、まるで舞台の終幕かのような優雅な一礼をすると、街の闇に溶け込むように去って行った。
手に持ったコーヒーはいつの間にか温くなっていた。
ふと流れた風で初めて涙に気づいた。跡をハンカチで拭うと、自分の心が疲れていたことに気づかされた。
視線を上げると、街の灯りに照らされた空が見えた。見えなくてもそこには確かに夜空に輝く星がある。目を閉じると見えないはずの星が一つ見えた気がした。
コーヒーを一気に喉に流し込むと、ふわりと香りが立った。
そして少し強張った足を踏み出すと、いつもの時間よりは閑散とした、しかしいつもと同じ、多くの人たちがいる駅へと歩いていった。・・・・・・見えない星を思い浮かべながら。
敢えて性別も季節も確固とせずに書きました。皆さんが思い描いたラスト、主人公はどんな表情をしているのでしょうか・・・・・・。