表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

 やっぱりダメか……。

俺の欲しい『音』じゃない……違うんだよな、これは。

やっぱり『借り物』じゃダメなんだ……。


 

 今回は、男女混合の構成のバンドの『臨時メンバー』として入っていた。

『いつものバイト』は、今日は休みで、空き時間があったのと……あれから俺自身に『何かを期待している』ものがあって。


音楽センターの例のレンタル・ブースで、初の顔あわせをするということで、みんなで集まっているというわけだ。


自分の内に『欲しい場所に欲しい音がこない』というもどかしさは、もうどうしようもない。

苛立ちは否めない。

大っぴらには言えないけれど、このベースの女の子、スタミナがないっつーか、持続性に問題ありだな。

それに、ルックスは俺の好みのタイプだけれど、彼女の出す『音』は……明らかに違うんだよな。

俺の、欲しい『音』ではない。

そりゃあ、性的に差別しちゃいけないとは思うけれども、やっぱり男女の差は、楽器にも出てくる。

……体力や体の作りは違うのだから。


生ドラムの迫力は、やっぱり『男』だろうし。


『うん、なかなかいいね』


って、作り笑いを浮かべることにも、もう随分と慣れてしまった。

心の中では、どこか冷めていて……ため息をついていた。


嘘で塗り固めて、自分を防御する方法もすっかり慣れちまったみたいだな。

お世辞も、簡単に口から出るようになって。

……これが大人になるってもんなのだろうか。

複雑だ。


 ブースでの残り時間30分て時に、他のメンバーは早々に片付け始めた。

この後、よそのバンドメンバーと合コンするらしい。


『社交辞令』で付き合っても良かったのだが、別に困っているといった訳でもなく、ただ『面倒くさい』という気持ちが先に立ってしまった。

丁重にお断りをして、こっちでの残り時間を使わせてもらうことにした。


これって、既に、『おっさん』の域に突入している……。

そう思わないでもない。

いや元から、そういうノリのいい奴ではなかったんだけれどな、俺って。


 メンバーが出ていった後、俺は……こっそりと『普段、音合わせには使わないギター』をセットした。

家では、アンプにつないだ『音』が直には出せないので、試し弾きをする絶好のチャンスだった。


椅子に腰掛けて、次々と『音』を展開していって……。

(フットスイッチと機材のツマミで微量調整していくんだけどね。もはやオタクの世界だ)

……うん、自分なりには『結構好みの音色』が出来たようだ。

カスタマイズの成功で、思わず笑が出る。

これって、他人に見られると……悦に入っててちょっと異様?に見られるかもな。


 ふと顔を上げて、何気なくブース扉のはめ殺しガラスの方に目をやると……一瞬チラッと……見覚えのある人影が通り過ぎたんだ。

『!』


あの雰囲気……多分、あの子だ。

そう思うと、居ても経っても居られなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ