四
やっぱりダメか……。
俺の欲しい『音』じゃない……違うんだよな、これは。
やっぱり『借り物』じゃダメなんだ……。
今回は、男女混合の構成のバンドの『臨時メンバー』として入っていた。
『いつものバイト』は、今日は休みで、空き時間があったのと……あれから俺自身に『何かを期待している』ものがあって。
音楽センターの例のレンタル・ブースで、初の顔あわせをするということで、みんなで集まっているというわけだ。
自分の内に『欲しい場所に欲しい音がこない』というもどかしさは、もうどうしようもない。
苛立ちは否めない。
大っぴらには言えないけれど、このベースの女の子、スタミナがないっつーか、持続性に問題ありだな。
それに、ルックスは俺の好みのタイプだけれど、彼女の出す『音』は……明らかに違うんだよな。
俺の、欲しい『音』ではない。
そりゃあ、性的に差別しちゃいけないとは思うけれども、やっぱり男女の差は、楽器にも出てくる。
……体力や体の作りは違うのだから。
生ドラムの迫力は、やっぱり『男』だろうし。
『うん、なかなかいいね』
って、作り笑いを浮かべることにも、もう随分と慣れてしまった。
心の中では、どこか冷めていて……ため息をついていた。
嘘で塗り固めて、自分を防御する方法もすっかり慣れちまったみたいだな。
お世辞も、簡単に口から出るようになって。
……これが大人になるってもんなのだろうか。
複雑だ。
ブースでの残り時間30分て時に、他のメンバーは早々に片付け始めた。
この後、よそのバンドメンバーと合コンするらしい。
『社交辞令』で付き合っても良かったのだが、別に困っているといった訳でもなく、ただ『面倒くさい』という気持ちが先に立ってしまった。
丁重にお断りをして、こっちでの残り時間を使わせてもらうことにした。
これって、既に、『おっさん』の域に突入している……。
そう思わないでもない。
いや元から、そういうノリのいい奴ではなかったんだけれどな、俺って。
メンバーが出ていった後、俺は……こっそりと『普段、音合わせには使わないギター』をセットした。
家では、アンプにつないだ『音』が直には出せないので、試し弾きをする絶好のチャンスだった。
椅子に腰掛けて、次々と『音』を展開していって……。
(フットスイッチと機材のツマミで微量調整していくんだけどね。もはやオタクの世界だ)
……うん、自分なりには『結構好みの音色』が出来たようだ。
カスタマイズの成功で、思わず笑が出る。
これって、他人に見られると……悦に入っててちょっと異様?に見られるかもな。
ふと顔を上げて、何気なくブース扉のはめ殺しガラスの方に目をやると……一瞬チラッと……見覚えのある人影が通り過ぎたんだ。
『!』
あの雰囲気……多分、あの子だ。
そう思うと、居ても経っても居られなくなった。




