出会い 壱
久しぶりに『音楽センター』を訪れた時のことだ。
仲間のイントラからのデモ・セッションの依頼が来たのは先週の事だった。
仲間といっても、そいつとバンドを組んでいるわけではなく、かといってそう親しくもない。
大体『交友関係は広くない』ほうだ。
たまたま参加したライブで、世間話をした程度なんだが……。
乗り気ではなかったものの、『礼ははずむ』という言葉に釣られた。
俺にとっての、『音楽』とは、タダの小遣い稼ぎであって、『音を楽しむ』ものでは、無いと割り切っていた。
まあ……ぶっちゃけ、『金』への執着心は強いほうだと思う。
一応、ギターというものを演ってはいるが、『一緒にやりたい仲間』というものには生まれて此の方、恵まれなかったように思う。
実際……現在も『メインバンド』というものは持っていない。
……まあ、ひとりでコツコツやるのが楽だったし。DTMってヤツ。
(自宅で打ち込みの『ギター抜きカラオケ』を作ったりして……ニアリーオタク?)
ライブでは頼まれて『サイド』は演ったが『リード』は極力避けていた。
何回か『リードメイン』で誘われたりはしたけれど……やぱり『力の差』が歴然としているものには手を出さなかった。
『同程度の技量のやつ』が……周りにいなかったんだ。
こんなこと言うと、『ざけんなよ。こいつタカピーなやつ』って、思われるかもしれないけれど。
大体、曲書くのって『鍵盤のやつかヴォーカルのやつ』だったし。
コード進行ハーモナイズ等きっちり勉強してる奴ならいいけれど……やっぱ『普通校のクラブ活動』程度じゃ、たかが知れている。
ぶっ飛んだモン書いてきて……固まったりもした。
どこぞのバンドのコピーですか?みたいなものを書く奴もいたし。
彼らは『ギターの特性』というものを理解してなかったんだろうな。
ヴォーカルがギター弾けたら良かったんだけどな。
(ギター弾けても、理論がダメな奴は論外だけれども)
ごく稀に、才能に恵まれたやつが頭角を表すというが……まあ、殆どそういったヤツは間近では見たことがない。
『どんぐりの背比べ』だ。
……噂では、ちらほら聞いたことはあるけれど。
それに『おんぶに抱っこ』というスタンスはウザイし。
そうかと言って、自分が主役にまわろうなんざ、思わないしな。
そういうわけで、誰かと関わるにしても……いわば『助っ人』にまわっていた。
チープな『ストローク』やってりゃそれで、良かったし。
自分も、満足だった。
『縛り』が嫌いなので、気の向くまま参加して外れて……って、そんなスタイルで俺はやっていた。
多分、このやり方はずっと続くだろうと思っていた。
プロにはなる気は最初からなかったからな。
すっげータカピー野郎になってしまった。笑。