第2話 黒い会長と秘密の契約
男性を書くのは難しいですね……。
頑張ります!!
舞台は次いで、空き教室。
「おっせーーーんだよ!!!」
憤怒を露わにした斎木が、俺に土下座をつかせ、息巻いていた。
「すいませんでした…」
頬を床に押し付けられ、必死に謝る。
「あぁん!!? そんなんで足りると思ってんのかよ、コ………」
言いかけた斎木がハッと口をつぐむ。
何故なら……
「な……に、やってるの……?」
教室の入り口に人が立っていたからだ。
それは……、
「紅科チャン……!?」
だらしなく口元を緩ませる斎木。
いや、そこは驚くところじゃないのか?
……まあどうやら暴君でも、人並みの感情はあるらしい。
って、そんな場合ではなくて……。
神御蔵だ!
「さ、斎木くん…? 何やってるの……?」
眉根を寄せ、怪訝そうに神御蔵が言う。
やはり、さっき見た光景は幻であったのであろうか。
だって神御蔵は、そんな娘じゃねーもん!!
「違う! ちげーよ!? 紅科チャン!」
「何が違うの!? 斎木くん、そんな人だと思わなかったよ!」
スラスラと嘘を並び立てた斎木に、なんと神御蔵は涙を流して非難する。
しゃくり上げる神御蔵に、ついに折れたらしい斎木は一つ息を漏らし、
「……ごめん、紅科チャン………。もう、こんな事しねーよ」
不細工な顔を赤らめて、頭を掻きながら謝る斎木。
「ホント? 約束だよ……? あたし、もう生徒会長なんだから。これからはあたしが許さないよ……?」
モジモジしながら、上目遣いで斎木を見つめて言葉を紡ぐ。
「ああ。もう万々原にパシリなんてやらせねーし、ボコったりもしねー」
うぇっ!?
おいおいマジかよ!!!
こりゃあタナボタだ。
斎木も、神御蔵に言ったんだ。まさか破るなんてしねーだろうし……。
「絶対だよ? 万々原くんに何かしたら、斎木くん退学にしちゃうからね!!」
かっ、神御蔵……!
俺、お前のこと大好きだぜ……!
「お、おう」
斎木もタジタジしながら頷く。
やったーーー!!
俺の苦悩の日々も、幕を閉じたんだ……!
感涙してむせびそうになった俺に、神御蔵が微笑みかけた。
それは、俺の貧相な『哀愁スマイル』とは全然違う、極上の笑顔……。
そうだな……、『悩殺スマイル』とでも名付けようじゃないか。
「じゃあ、その……俺、用があるからよ、行くな!」
神御蔵の『悩殺スマイル』を浴びて、ヘニャヘニャの斎木は口元をほころばせながら教室を出て行った。
まあ、とにもかくにも俺のパシリ生活が終わったんだ!
今日は、プレミアムプリンで乾杯だな。
あ、パシリから卒業させてくれた神御蔵に礼言わねーと。
くるりと振り返った次の瞬間、
「神御蔵さんっ!ありが…とぅ………?」
ガタッ!!
目の前に神御蔵の顔があって、壁に押し付けられていた。
いやいやいやいや……。
漫画とかでこのシチュ見たことあっけど、役回り逆じゃね?
「かかかか、神御蔵さん……!?」
やべぇ、俺、動揺しすぎて声震えてるし。
「万々原くん……、さっきコンビニであたしのこと見てたよね……?」
うわぁー!
うわぁー!
超近くに顔あるよ!!
超可愛いよ、可愛すぎるよ!!!
「へぅん……」
神御蔵の声なんか耳に届かなくて、曖昧な事を言ってしまった。
や、照れてただけだけども!!
「やっぱ、そうなんだぁ?」
さっきとは打って変わって妖艶な声が放たれた。
え?
自分の耳を疑ったが、どうやら誤りではないらしい。
神御蔵に目を向け、確かめようとした途端……、
「んん……!!っ……!」
唇を押し付けられた。
力はどんどん強くなっている。
押し返すことも出来ない。
……てゆうか、女の力に敵わない俺って……。モヤシすぎるわ!!!
「……っ…!!……っ…、」
神御蔵は、ついばみながら何度も角度を変えて俺の唇を吸い取る。
ちょっとだけどいいなぁとか思ってしまったり……。
いけねーいけねー!!
残り少ない……というかもともとあんまり無い理性で神御蔵の足を踏んづけた。
「った……!」
神御蔵は、つぶらな大きな瞳を潤ませながら
「痛いわね!! なにすんのよ!!」
と怒鳴った。
いやそれ俺の台詞ーー!
清純なイメージの神御蔵からそんな清楚さの欠片もない言葉が飛び出したのに驚愕した。
「や、やっぱさっきのコンビニの女って、神御蔵だったんだ……!」
もう、『さん』をつけるのも忘れていた。
っていうことは……、何、こいつ、裏表あるってこと!?
じょじょじょ冗談じゃねーよ!!
俺のオアシスが……!
「っつーか、なんで俺にキス!? どうかしてんじゃねーの!?」
「キスは、罠だよ? あんたを落とすためのね」
間髪入れずに神御蔵は、悪そうに片口をあげて笑った。
あんなに激しかったのに、息一つ乱さないところを見ると、こいつ、相当やり慣れている……!
俺の初チューがぁぁぁ!!!
「これ」
神御蔵がスッと取り出したのは、さっきコンビニで俺が盗ったジュースだった!
「あんた、さっき万引きしてたよね? そのパーカーに入ってたし、盗ってるとこ見てたし。」
鏡を見なくても、顔が引きつっているのが分かる。
「このことばらして欲しくなかったら、あたしのことも黙っててよね」
鋭い光を宿したその目には、もはや優しさなど欠片も残っていなかった。
「でも、万が一のこと考えて、あんた、いっつもあたしの傍に居ること。」
そして、質の悪いあの笑みを浮かべた。
「分かったわよね? これは契約だから。……破ったら、どうなるか。」
そこまで言ってから耳元に自分の口を近づける。
「考えておくことね」
勝手にしゃべって
勝手に出て行ってしまった。
……と思いきや。
「そうそう! あたしのことは紅科って呼んでね。いつも傍に居るのに、名前じゃないなんておかしいでしょう、悠暉?」
ニヤリと笑って神御蔵……、いや、紅科は教室から出て行った。
そんなこんなで俺と紅科の契約が済まされて、波乱の日々が幕を開ける。
ほんとはここら辺までを
1話にいれたかったんですけど……(>_<)