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第15話  黒い会長と戦慄

ご無沙汰です。

投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。


どうぞよろしくお願いします。

大寒を過ぎ、もうすぐ卒業シーズンを迎える。

というか、今年は寒さが襲ってくるのがやけに遅い。これも、地球温暖化とかの影響なのだろうか。いや、たぶん違うな。

とにかくまぁ、卒業式なんて面倒くさい行事があるのは周知の事実であるからにして。

結構な数の練習をすることになるわけでですね?

いや、俺はそんなのダルいし、ただ立って座って…ってやってるだけでいいんですよ?

ただ、紅科が後期生徒会を受け持ったために「送辞」という、極めつけにかったるいことをやることになってしまい。


俺はそれの作成に付き合わされているワケですねコレが。


「ねぇ、悠暉ぃ~…、ちょっとココ、どうしたらいいと思いますかぁ~」


場は生徒会室。

紅科は大きく伸びをして、あろうことか机上に足を投げ出している。

およそ女子とも生徒会長とも思えないその格好で、シャープペンシルを唇と鼻の間に挟み、鼻歌を歌っているのである。

もう少しで捲れそうな濃紺のスカートと透き通るような白い太ももに目をこらしていれば、缶ペンが顔面にぶち当たった。痛い。


「ってーな。なにすんだよ」


「破廉恥な振る舞いをするからでしょーがぁ!!」


「いやそりゃあこの状況を見て見ろお前。誰が見てもお前から誘ってるようにしか思えねえだろうが」


「あたしほどの女があんたみたいなのを相手にするとでも思ってるの? え?」


「あ、お前今日しろ……」


再びノックアーッウト☆

最初に注意したときに足を下ろせばいいのにぃ…。

見えちゃったのだって不可抗力なんだからねっ!


「って…。あ! おま…っ、見ろコレ! 鼻血出てきたじゃん! ちょっ……この状況誰かに見られたらどうしてくれんですかこのヤロー」


ガラっ


生徒会室の引き戸が開く。


…………という、そんなギャグマンガばりの展開は起こるはずもなかったです。

まぁとにかく、送辞なんて紅科1人であっという間に書き上げてしまうと思っていた俺にとっては、2人の時間が取れた棚からぼた餅な話だったワケ。


でもね…、“相手にするわけない”って…。

初っ端から痛手。

もう心が折れそうです。

でもそんな事で負ける男じゃないぞ俺は!


つっても、下着が見えるって世の男はどう思うのでしょう?

そして彼女的にはどうなんでしょう?

チラリ……、横目で盗み見てみればもう気にしていない様子で原稿用紙と睨めっこしている。

そもそも紅科は猫を被ってしとやかに振る舞ってはいるものの…、仮面を脱げば「がさつ」の模範のような行動しかとらない。気にせずとも不思議ではないのだが、後ろめたい思いでいっぱいになる。


「悠暉…」


少し遠慮がちに口を開いた紅科は、心なしか緊張しているように見える。


「あ? なに、かしこまっちゃって」


俺は、静かな空気が好きじゃない。

だから振り払うように笑みを織り交ぜたのだが、自身の口から発せられたのは渇いた笑い声だった。


「この間は…………、取り乱しちゃってごめんなさい」


謝るのがどれほど彼女のプライドに関わることなのかは、これまで共に過ごしてきて重々承知している。

だから、素直に嬉しかった。

俯いているので表情は見えないが、絞り出すような彼女の声から、それは伝わってくる。


「それと………………………、ありが、とう…」


思わずガン見してしまった。

感謝することはあっても、それを言葉にして伝えることは何よりも嫌がりそうなやつだからだ。

そして、俺は天気はどうかと窓に目をやる。


「ちょっと! なに外見てるのよ」


「や……。なんか降ってくるかも知れないと思って確認を…」


「失礼ね! あたしだって社会性と協調性、道徳性を身につけてるの! 素直に聞き入れなさいよ…」


頬を赤く染め、プイとそっぽを向く紅科。

この前だったら何とも思わなかったその行為に、心臓が飛び跳ねる。

どうしようもなく、彼女に触れたくなった。


「はいはい。良くできました(笑)」


そう言って、俺は紅科の頭を撫でた。

驚いたようにこちらを見上げる彼女が、急に、今まで以上に可愛く見えた。


「なあ、あのさ…………」



その瞬間、生徒会室の引き戸がなった。


あっぶねえええええええええええええええええええええ! 何言い出す気だ自分んんんん!!

て、この状況もやばいぞ……!

俺の手、まだ紅科の頭に乗ってるし…なんか妙な雰囲気醸し出してるし……。


恐る恐る、入り口に立っていた人物を盗み見る。

あっ、目ぇ合った…!

あいつハナっから俺のことしか見てねえよ!

よりにもよってヤンキーだよ、放課後呼び出されて「あいつに手ぇ出したら……小指つめる覚悟は出来てんだろーな、ゴルァ?」みたいな展開は全力で阻止したいんですけど…。


「しょ、咲ちゃん……!」


すると紅科は、俺の手からするりと抜け出して距離をとる。


ちょっと待て、ショウちゃん、だと…………?

ちら…、その男を再度見ると、どこかで見た顔。

あ、姫澤じゃん!!


「お前何してんの?」


思っていたよりもドスのきいた声で言われて震え上がる俺。

背後に龍がとぐろ巻いてんですけど!


「や、なんつーか……、その、ね! 紅科がね!!」


あ、やべ。

紅科まで睨んでらぁ(笑)

姫澤の眉がピクリ、動いた事には気付かなかった。


「なあ紅科ちゃ………あ」


徐に口を開いた姫澤は、何かに気付いたらしく、口を閉ざす。

っつーか“紅科ちゃん”て!!!

ヤンキーもそういう風に呼ぶんだ!?

込み上げてくる笑いを必死で堪え、動かないように努める。


「お前が………万々原って奴?」


何でこいつが俺の名前を知っているのだろう?

そうは思ったが、こんなにデカいやつに口答えできる勇気は生憎持ち合わせていない。


「お、おう…。どーも、万々原悠暉でっす☆」


瞬間、俺は戦慄した。

この先俺に平穏な日は訪れないかもしれない。


あー………、ちびりそ。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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