第13話 黒い会長と絶望の中の光
こんばんわ^^
最近は調子が良くてぅわーい!
って、今回の話の最初はこんなテンションではナイですね…。
よろしくお願いします。
拭い去れない孤独を噛み締め、それでも振り返ってしまう。
朗らかな笑い声が今にも聞こえてきそうで…。
俺の腕は、無情にも虚空をかいただけに過ぎなかった。
人一人…、惹かれたひと一人……、呼び止めることも出来ずに……。
時間はどれ程経った?
感覚は失われ、現実と幻想の区別もつかず。
それでも、俺の中で消えることのない執念は無様にのたうち回って、あらゆるものに手を掛け、そしてまさぐる。
もう、形振りなど構っていられなかった。
『心にポッカリと穴が開いてしまったようだ』
人は簡単にそんなことを言うけれど、そんな言葉では表しきれない。
彼女は自分の全てだった、などと胡散臭いことを言うつもりもない。…言えない。
……こんなことなら、中学を共に過ごしたあの頃、何回も何回も惜しまずに、恥ずかしがらずに…伝えておけば良かったんだ。
想いが通じたあの日から、どことなくこそばゆく感じてしまう自分が居て、心は同じところにあると。
そう安堵し、そして自分が恥をかかないことに一生懸命になった。
繋ぎ止めようとしなかった。
……………離すまいと、しなかった。
俺に隠してなければ、きっと、ずっと、いくらでも…!
俺は彼女に呼びかけることが出来た…!
好きだ、と…、何回でも何回でも…。ほんの小さなあいさつだって何だっていい! ひとつでも多く、話しかけることが出来たんだ……!
『…………私のせいなの?』
ふと、耳元でそう囁かれた気がして振り返る。
しかし、教室には俺と祭しかいない。
不可思議に思いながらも、祈の声で囁かれた言葉を反芻する。
祈のせいじゃない。
彼女の一番傍にいながら、彼女の異変に気付かなかった俺が…、一番悪い。
いつだって、彼女に頼ってたんだ。
それくらい、祈が好きだった。彼女に、依存していたんだ、俺は。
「祭…、ごめん…。本当に……ごめん………」
俺は、ずっと祭の細くしなやかな身体に回していた腕に更に力を込めた。
それに少し驚きながらも、彼女はゆっくりとかぶりをふった。
彼女の首筋に顔を埋めれば、何となく、懐かしい薫りが鼻腔をつく。
触れた髪の毛は、思ったよりもずっと柔らかくて、くすぐったい感じがした。
祭はそっと優しく、俺の背中に手を回してくれた。
祈を失くした孤独。
自らの弱い心に対する自責の念………呵責。
それらを、真っ新な状態に返してくれるような、優しい抱擁だった。
祭の温もりに身を委ね、感涙にむせびそうになった時、事は起こった。
大きな扉を開く音が聞こえたのだ。
その先に立っていたのは――――――……。
紛れもなく、神御蔵紅科、その人であった。
そして怒濤の如くこちらへ向かって進撃してきた彼女は、俺の骨張った手首をむんずと掴み、鬼の形相で教室を出た。
何が何だか分からない俺は、物凄いオーラを出してどこかへ向かう紅科に引っ張られてついて行くことしか選択肢は無かったのである。
「っぅ…、く…っしな…! おいっ…お前ど、こ行くんだよ……!」
先ほどまで泣いていたことによる嗚咽によるものか、ただ引っ張られての息切れによるものか。
俺がようやく発した声は、嘆かわしくも小さなものだった。
「うるさい! 黙ってついてこい!」
…………………………………………。
言った途端に頭ごなしで怒鳴られれば言葉を続ける勇気も出るまい。
ってか、ホントどんなタイミングで出てくるんだよこいつ。
どんな状況だったか分かってんのか? いや分かってても入って来ねぇよな普通。察しるよな雰囲気を。
どんだけ鋼のハートしてんだよオイ。
心の中で文句を垂れ流していても、抵抗をせずに彼女について行く俺は、何だかんだ従順なのかも知れない。
そうしながらも、どうやら目的の場所に着いたらしい。
何とかそこを見ようと振り向けば、生徒会室だった。
「おいっ紅科? 何する気だよ?」
そう問いかけたら、紅科は生徒会室の引き戸を、またも荒々しく開け放ち何やら毒を吐いている。
そして俺をキッと睨みつけ、その細い身体からは到底想像できないような怪力で俺を壁に押し付けた。いや、押し付けたと言うよりはぶん投げたという方が正しいだろう。
俺の口からは、カハッと渇いたものがはき出され、同時に咳き込んだ。
「黙って」
「黙ってられっかよ! 何がしてえんだてめぇ!」
すると、予想外の俺の反撃に驚いたのか、一瞬戸惑いの色を見せた。でも本当にそれは一瞬。
「お前、俺の気持ちとか分かる? ずっと好きだったひとが―――――…」
パァンッ
なにか鋭い音が俺の言葉を遮り、それからゆっくりと鈍い痛みが頬に広がった。
「ってぇ……、何するん―――――…」
パァンッ
「ふざけんな! やめ―――――…」
パァンッ
さすがにこう何度も平手打ちを食らえば言葉を失う。
ただただ呆然とする俺の頬はもう既に、真っ赤に腫れ上がっていた。
ハッとし、もう一度紅科に文句を言おうと彼女に焦点を合わせた。の、だが…………。
「…………………泣いてんの?」
吃驚した。
彼女の、大きくてクリクリとした瞳には涙が溜まっていた。
長くて上を向いた綺麗な睫毛は、しっとりと濡れている。
「っ……、泣いてない…!」
強情な女だ。
おまけに目まで擦って、証拠すら残しているというのに。
……っていうより何で泣いてんだよ…。
本当、訳の分からねー女。
泣きたいのはこっちだってーのに。
「ふーん………そ…」
うっかり変な空気への入り口作っちまったじゃねえか。
俺と紅科を、重い沈黙が襲う。
だが俺は、ここへ連れてこられた意味を知らなければならない。っていうか知りたい。
勇気を出して尋ねる。
「……なぁ、俺何したわけ?」
すると、この一言で充分だったらしい、彼女の瞳からは一粒の涙が零れ落ちた。
訳が分からなくなって、挙動不審になる俺。
だがやっぱり沈黙は免れたいので、
あ、やっぱ泣いてんじゃん
と…。そう発する前に、俺は彼女の怒りの鉄拳に裁かれた。
「何で祭ちゃんの事抱きしめてたの………!!」
そうして彼女は力なく俺の胸を叩いた。
これは………。
………勘違いしてもいいのだろうか…?
彼女の流した一粒の雫が、今まで見たことも無いほど、清らかで美しく見えた。
頑張りました。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
おかげさまでユニークが1000突破致しました。
これからもこの作品をよろしくお願い致します。