第11話 黒い会長と絡まる糸①
長らくお待たせ致しました~(*^_^*)
晴れて宿題から解放されまして、疎開(福島県民なもので放射線から逃げようとw)からも帰ってきたことですので、予告とは違うんですが、早めに投稿させて頂きました!
今回は張り切りすぎて長くなってしまいました。
読みづらいのは承知ですが、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
さっすが私立高校!
何でこんなに校内がだだっ広いんだよ!!
心の中で悪態をつきながら、廊下を突っ走る。
結構本気で走ったのに、教室に着くまでは3分くらい掛かった。
本気出せば、普通に1㎞走れちゃうよオイ。
「祭!!」
年のせいなのだろうか…。
もう疲労感でいっぱいになっていた俺は、半ばヤケクソで勢いよくドアを開ける。
「キャー!!」
大きな“ガラガラ”という音は案外堪えるのかもしれない。
祭は頭を守るようにして抱え、金切り声を上げた。
怯えさせたのは俺が悪いけど、でもやっぱおとなしめ女子は違うな。
これが紅科だったら絶対女らしさの欠片もねぇのが吹っ飛んでくるわ。
「悪い悪い、俺! 俺デース!!」
今は流行を過ぎ去ったどこかの詐欺のような台詞を口にして、祭を落ち着かせる。
ビビらせて悪かった、と最後に蛇足する。
でも後々考えれば『待たせて悪かった』だろ!! ……と反省。
「な…なんだ…万々原くんか…。ビックリしたぁ…」
本気で悪いことしちゃったなぁ……と反省。
いやふざけてないよ!? たまたまなんだからねっ!!
と、よく見れば本当に怖かったのだろう、肩が震えている。
「委員会、お疲れ様でした。呼び出しちゃってごめんね」
自分のことは置いておき、他人の心配をする。
大和撫子の鑑っていうもんだ。
そんな可愛らしさに、俺は男の本能で動いた。
何故か、知らず知らずのうちに祭の方に手を置いていた。
祭は驚いて顔を赤くするが、俺は不思議なことに恥じらいを感じなかった。
「いやホント、遅れてゴメン。……それと………」
そして俺は、先ほどから気になっていたことを続けた。
「あの…、俺ばっかり『祭』って呼ぶのイタいからさ、『万々原くん』じゃなくて、下の名前で呼んで」
「ぇ……、あ…、えと、あの…じゃぁ……………………………………………はる、き…」
と、ここまでは良かったが、やはり祭。
間髪を入れずに、
「………………くん…」
と、恥ずかしがって俯いてしまった。
黒くて長い髪の毛を耳に掛ける。
覗けた頬は、真っ赤だった。
「ハハッ!」
そんな姿に堪えきれなくなって、笑みがこぼれた。
………って何か最近俺、Sに目覚めてる気がする。大丈夫かな? 大丈夫だよねっ!(汗
「なっ…! なんで笑うの!?」
「や……、なんとなく。まぁ、それはいいじゃん」
「え……何、気になるよ……」
「いーから! 気にしなーい! ほら、それより用事って何?」
悟られないように…。
そんな下心も無かったと言えばウソになる。
だけど、本当に楽しみにしていた本題にはやく移りたかった。
俺はもう、ちょっとした変態並に興奮していた。いや気持ち悪いけども!!
「あ……、そうだよね。私、言いたいことがあったの。え、と………」
どこまで純情なのだろうか。
緊張しているのだろう、祭の視線は彷徨っていた。
「あの……、はる、き、くんのこと…、私、気になって……」
祭!! もうちょい! もうちょいストレートにお願いしゃす!!
……って、予想はしてたものの……。
本人に言われると、とてつもない破壊力が伴いますな。
「あの……、間違ってたらゴメンなんだけど」
……………………???
間違ってたらゴメン???
「私、お姉ちゃんがいたんだ。………ままは……悠暉くんと中学一緒だったって言ってたから、確認したくて…」
祭は尚もモジモジしている。
「「……………………………」」
沈・黙。
ってか、俺の場合は唖然としてるんだけどね?
「え、あの……………それで呼び出されたの俺!!?」
思わず……いや、妥当というべきだろう。
素っ頓狂な声が出てしまう。
「うん、それでね………」
あれ?
思いやりのある祭ちゃん。
そこスルーするんだ?
何だよ! こっちはずっと楽しみにしてたんだよ!!
ショックで肩の力が抜ける。
そこで俺は精一杯の落胆のポーズをとった。(頬に手を当て、ムンクみたいにして、イナバウアーよりも思いっきり仰け反ること)
………ってあれ??
何か、会議室の方明かりついてる……。
まだ紅科いんのか?
でも帰ったはずじゃ……??
そんなことを思っていると、
「この人。分かると思うんだけど…仲良かったって言ってたし……」
祭はケータイを取り出して操作をする。
ボタンを押す指は、白く長い。
いちいち感情のこもらない無機質な音を聞いていると、何故か無常観を煽られる。
「分かる? …って今判明しても遅いか」
そう言って、祭は自嘲気味に微笑んだ。
いつも憂いを帯びているその瞳に、少しだけ、寂しげな色が見えた気がした。
「遅い? 遅いってどういうこ…………」
そして、俺の目の前にその写真が突き出された。
「お姉ちゃん。私の、お姉ちゃんだよ」
本当、人生って何なんだろう。
今まで生きてきて、そんなこと初めて思ったよ。
別に悲劇だ何だ言いたい訳じゃない。
でも、余りにも不公平だ。
「い、のり…?」
放心している。
口だって、開いたまま閉じることが出来ない。
やっと絞り出すことが出来た言葉は、あまりにも呆けたものだった。
「き…姉妹……? い…祈は!? 今、どこに居るんだよ!!?」
何もかも、忘れて、祭の肩を掴み、揺さぶった。
揺れる髪の毛から、淡いシャンプーの薫りがする。
「ずっと…、どこに行ってたんだよあいつ…。何してるの? ここから近い? 遠い? 祭、早く言ってくれ!!」
今まで音信不通だったことに対しての憤り。
やっと見つけることが出来たという喜び。
そして、心の底から湧き上がってくる愛おしさ。
その全てが俺の中で混ざり合い、混乱していたけど、でもやっぱり最後には嬉しさが勝った。
自分でも単純で安い男だとは思う。
でも…、それでも………
「死んじゃったの」
……………………は…………?
死んだって…………………………………ダレが…?
「私の両親が離婚してて、だからあんまり会えなかったんだけど………。私も知らされたのついこの前で…。もう、3年前に亡くなってたの」
……質の悪いウソつくんじゃねぇ…!
そりゃあ、もともと体が悪いんだってのは知ってたけど………。
「お葬式も行けなかった。………お姉ちゃんね、病気だったの。それは知ってたんだけど。でも、病気に負けないで学校は毎日通ってたって………。この間、久しぶりにお姉ちゃんの部屋に行ってみたら、よれた字で『はるきすき』って書いてある手紙を見つけて。きっと、一生懸命辛抱強く書いたんだと思う。それで………私、思ったの。お姉ちゃんが頑張れたのは、会いたい人が居たからだったんだ、…って」
祈………!
もう、分かる。
ウソじゃない。
祈は。
もう、いない。
「お姉ちゃんは、“はるきくん”の為に、耐えて耐えて…生きてたの……!!」
いつの間にか俺も、祭も、涙で顔が濡れていた。
二人して嗚咽を漏らしながら、ずっと泣く。
ああ、また………。
きみはまた俺をこんなに泣かすんだ。
男を泣かせるなんて辱めを、こうも容易くやってのける。
…俺は祭を抱きしめた。
どうしてそうしたかは分からない。
ただ単に、彼女が好きになったのだろうか。
何かに縋りたかったのだろうか。
いや、きっと…。
彼女の残り香に、頼りたかった。埋まりたかった。
もう、忘れたって自分では思ってた。
どうしてきみはいつも、気づかせるのが遅いの…。
急に居なくなって、責め立てた。
ずっと、憎かった。
俺、あの時随分荒れてたんだよ、祈。
でも、消せなかった。この気持ちだけは…。
好きだ。
すきだ…。
死ぬほどすきなんだ…!
会いたい…!
きっといつか、また会えるんじゃないかって、その時何を言おうかって…ずっと考えてた。
きみとの未来を…、ずっと考えてたんだ。
ずっと探してたひと。
ずっと傍に居てくれたひと。
ずっと、恋い焦がれていたひと。
ねぇ、あなたは今、どこにいるんですか?
シリアスですね~……。
もう「微」を通り越してますね…。
次回は、このお話の同時刻、紅科のところでは…? という話です。
そうですね、今度は10日にUPします。
では、ここまで読んでくださってありがとうございますorz