第10話 黒い会長と俺たちの純情
大変お待たせ致しました。。。
申し訳ありません!
スランプで……;;
あ、いえ。言い訳はいたしません!!
すみませんでしたm(_ _)m
何かある……
何かある……!
……なにかないとおかしいんだ…!!
中央委員会中、紅科の視線に戦慄してからというもの、頭の中にはそれしかなく、焦れていた。
……会議の内容は毛の先ほども脳内には滑り込んではいないのだが。
「みなさん、起立してください。これで中央委員会の会合を閉じさせていただきます。今日話し合ったことを委員会の皆さんにしっかり伝えておいてください。では解散です! お疲れ様でしたー」
紅科の澄んだ声が会議室に響き渡る。
つづいて、各長たちの声も…。
みんなが席をたつ音が、何とも虚しく木霊する。
何も、無かった…。
俺は、今まで自分で勝手に思いを巡らせていたことに、羞恥心を抱いた。
自意識過剰、傲慢…。
そんなことばが脳裏に浮かぶ。
行き場のない羞恥と、意識していたのに何もなかったという疎外感だけが俺のなかで渦巻いていた。
少し火照った顔を隠すように手で口元を押さえ、もはや俺しか居ないと思っていた会議室後方のドアに手を掛けた時だった。
「万々原くん! 話があるんだけど!!」
あぁ、ダメだ。
すぐ反応してしまう。
これは、呼ばれたときの反動だろうか。
それとも……、呼んだのが彼女だから……?
「もうっ! 悠暉っ! あたしが呼んでるのに聞こえないの!?」
室内にぐるりと並べられた机の、一番前(通称お偉いさんの席)。
痺れを切らし、小さい体を目一杯振り回して叫んでいる紅科がいた。
「…おまえさぁ、ホントそんなんでこれから猫かぶっていけんの?」
呆れてしょうがなく漏れたようにしたかった。
でもやっぱり、どうしようもない嬉しさが勝ってしまう。
口元に生まれた僅かな笑みを隠し通せたかは分からない。
「あたしが誰だか分かってんの? 神御蔵紅科よ? もし、あんたがあたしのこと言いふらしたりしても信じるヤツなんて居ると思う? 否! 居るわけ無いのよ!!」
俺を見下した目で見つめせせら笑うように言った。
ホントに女王みたいな風格を纏っていた紅科だったが、それは急に消え失せた。
眉をハの字にして小さくなる紅科は、先ほどの威風堂々とした姿から思い浮かべれば本当にちっぽけで、情けなく見える。
「…って、……そんなこと…、どうでもいいのよ……」
俯きながら、俺を恨めしそうに見遣る。
あれ? 俺なんかしたっけ??
「な…なんだよ」
すると今度は黙りこくった紅科。
「どうした? 具合でも悪いのかよ…?」
本当に心配になって、俺は俯いている紅科を覗き込んだ。
やりすぎた……!
そう思っても、後の祭りだ。
俺と紅科は鼻がぶつかってしまうほど近くにいて、彼女が顔を上げた瞬間バッチリ目が合ってしまう。
表現のしようがないほど、お互いに顔は真っ赤だったわけで。
無意識の内に体はサッと離れた。
「べっ…別にどこも悪くないわよ!」
…………。
どうやら、何事も無かったようにやり過ごすらしい。
ほほぉ、それは良い案だ。
乗らせて頂こう。
「ふーーーん…、なら良いんだけど、さ…。」
でも、俺ちょっとキツいと思うんだけど…。
紅科さん、これで乗り切れますかね???
「「……………………」」
ほらね!!
やっぱりダメじゃん! 案の定会話無くなったじゃん!!
すっげ~~~~気まずいんだけど!
「ね、悠暉……」
「ぅん!!?」
勢い余って振り返ると、そこにはもう先ほどの出来事は鎮火して落ち着き払い、淡々と言葉を紡ぐ紅科が居た。
あれ? もしかして意識してテンパってたの俺だけ??
超ハズいんだけどっっっ!
「さっき、祭ちゃんと何話してたの……?」
あまりにも予想外な質問に拍子抜けしてしまった。
「ふぇっ!?」
「だからっ! 会議始まる前に2人で話してたじゃない! 何、話してた、のよ」
態度とは裏腹に、語尾も体も小さくなる紅科。
性格上、気丈に振る舞うしか出来ないのだろう。
そんな姿に狼狽えて、なんだかドキドキしてしまうのっておかしいんじゃないかっ!?
「あー……、多分あれだよ。この間の話の続き、だと思うけど。…そんで、中央委員終わったら教室に来てって言われたし」
「ふーーーーーーん…」
あれ、紅科さん。
反応が芳しくないですね。
「………………行くの?」
蚊の鳴くような声で、俺に問いかける。
「え!? そりゃあ、まあ……。この間、どっかの誰かさんに邪魔されたしね~~」
何だか意味深な雰囲気に飲み込まれたくなくて、掠れ気味だったが笑いを交えた。
……………………。
まっっっっったく怒る気配がないですね。
あれ、俺コレ地雷踏んじゃった系??
ガタッ
情けないことに、一瞬からだがビクッってなる。
紅科が席を立った。
俺の方に歩いてくる………。
そんでそのまま隣に来ればいいものを、1つ席をあけて座った。
顔を上げない、ずっと俯いている。
「……………………あたしといるのに、祭ちゃんのとこ行くの………?」
下を向いているから顔が見えない。
そんな可愛いこと言うなや! 惚れてまうやろおおおおおぉおぉおおおぉおお!
………やばい、超反応見てえ!
自分の顔も、人に見せられないくらい赤いのに、こんな弱い紅科、初めて見たし。
いつもの仕返しだ!
「………行って欲しくない? ………どうして欲しいの?」
「…それ、あたしに聞くの…?」
色素の薄い髪の毛を、ふわりとかきあげる。
その隙間から、真っ赤に染まった彼女の頬が覗けた。
そして、やっと顔を上げ盗み見をしているかのように、チラリとこちらを一瞥した。
するといきなり、紅科の手が俺の頬に伸びてきて………
ハッとしたように手を止めた。
「紅科?」
「………何」
「具合とか、本当に大丈夫か?」
そう言った途端、驚いたようにこちらを見て。
それから、どこか寂しげに微笑んだ。
「うん、平気。だから、行ってきなよ」
「本当に? 細いんだから、あんまムリとかするとすぐ体調壊すぞ?」
「ハッ! 人の心配ばっかしてるからパシリになんのよ。早くしないと、また邪魔しにいくけど?」
紅科は腕を組み、足を組み、俺を見下したように笑った。
あれ、戻った。
「あ、あたしも用があったんだったー! じゃあね、また明日ー」
そう言うと、柔らかそうな髪の毛をなびかせて颯爽と会議室から出て行った。
勝手に足止めして、勝手に帰っていきやがった。
つか、何も話なんてなかったんじゃん。
ふと窓を見れば、夕日がこれまでに見たことないほど綺麗で。
すこし見入ってしまった。
俺も会議室をでて廊下を走り、教室に向かった。
会議室の隣の教室に、暇を持て余しながらも帰れずにいる紅科がいることを知らずに。
今年一番最後の大仕事でした。
来年もヨロシクお願い致します。