第1話 黒い会長と仮面
お初でしょうか(*^_^*)
違う小説と同時進行で書き始めました。
どちらかというと更新はスローペースだと思いますが、
どうぞヨロシクお願い致しますm(_ _)m
時は初秋。
この時期と言えば……大変忙しい。
普通思い浮かべる事と言えば……、
文化祭?
体育祭?
テスト?
……いやいや。
それだけではないだろう?
まだ残っている。
とっても大事な学校の威信をかけたあの行事が!!!
そう、それは……。
新生徒会役員選挙および立会演説会だ!!!
今年の会長有力候補は女子生徒。
しかもトンデモ美少女である。
彼女は
2年6組 神御蔵 紅科
一大企業、『神御蔵カンパニー』の一人娘、いわゆる大富豪というやつだ。
そのうえ成績優秀で、運動神経も抜群にいい。
柔道ではインターハイ出場経験もあるらしい。
そんな何でもかんでもするりとこなしてしまう彼女は、勿論のこと学校のアイドルである。
そしてまた、生徒会長という立場を持ったらその人気も爆発的なものになるだろう。
俺も彼女の魅力に心奪われ、特別な感情を抱いていた一人だということは言うまでもない。
まあ、そんなことは『今までの』彼女について述べたことだ。
ということは、今現在はどうなのだろうか……?
疑問は次から次へと浮かび上がる。
気になるか?
……では、語らおうではないか!
化けの剥がれた彼女の本性を…!
事の起こりは2週間前。
実は俺……、万々原 悠暉は校内でも有名なパシリであった。
今日は何と、とんでもない命令を空き教室にて命じられていた。
「よう、ハルキー。俺ぇ、喉渇いちゃったぁ~。今から15分以内にコンビニからジュース買ってきてー」
別にもう学校は終わっていて、昼休みなどでもないから制限時間なんて設けなくてもいいはずなのだが、俺が息を切らして走ってくる無様な様をコケにしたいのだろう。
教師も手を焼いている斎木という不良にいつも絡まれる俺。
なーんにもやってないのにかまわれる俺ってば、超かわいそう!
そんなことを表情にはおくびにも出さずに被害者面して、我ながら細いと思う手を斎木へと差し出した。
「んー? なにやってんのー?」
もともと不細工な顔をこれでもかと言うほど歪めてわざとらしく俺に問うた。
そんな斎木に苛つきながらもパシリはパシリらしく従順に答えて見せた。
「あの……、お金をいただかないと……。」
すると、目の前にあった斎木の顔が、横に揺れて姿を消した。
………と思った瞬間!
バキッ!
鈍い音が体中を貫いた。
……いや、激しい痛みが、の間違いだ。
「……っ…………、…」
斎木の堅く握りしめられた拳が、俺の鎖骨辺りにめり込んで吹っ飛んだ。
「調子にのってんじゃねーぞ、あん? コラ。そんくらい、てめぇの金使えばいいだろーが。」
微かに鉄の味がする。
恐らく殴られた際に口の中を噛んでしまったんだろう。
口角の上がった不気味な笑顔は、斎木が放った言葉よりも俺に鳥肌を立たせた。
「でも……、財布なんて、持ってきてませんし……。」
『不機嫌を煽る』と校内の不良から好評の困ったように笑う『哀愁スマイル』を斎木に見せると。
「そんな顔しても、どーにもならねえだろーがよぉ? えぇ? ……ま、丁度いい。最近つまらねえと思ってたとこだったんだ。」
何もかも放り投げたかのような仕草をする斎木。
これはもしや……?
俺の苦悩の日々もついに幕を閉じるのか……。
勝手に思考を巡らせ、心躍らせる俺に『衝撃』という名の爆弾が降ってきた。
「ま・ん・び・き☆………してこい。」
血走った目をした斎木にワナワナと震えあがり、動くこともできずにいると、
「もたもたしてっと、目ン玉えぐり出すぞコラ」
ドスのきいた声で脅された。
この状態の斎木に言い返したら半殺しは確実……。
そう悟った俺は、真っ青な顔で教室を出てコンビニへ駆けだした。
走っている途中に思った。
半殺しではなくて、八分の七殺しくらいかなぁ……、なんて。
学校から一番近いコンビニに着いたのは5分後。
これなら何とか間に合う……。
だけど、万引き、か……。
人通りの多い割には空いている店内を見回して、誰も見ていないこと。カメラの死角であることを確認し、一本のジュースを手に取る。
それを、ダボッとしたパーカーに忍ばせ、漫画のコーナーに寄り、立ち読みする振りをしてから店を出た。
すいません、すいません……!
何度も何度も心の中で謝った。
表しきれない罪悪感をまといながら視界に入ってきた光景は……、
「きゃあ! やめてください……!」
三人の男と、一人の女。
女の周りを、男たちが取り囲んでいる。
どうやらナンパらしい。
そして、取り囲まれている女、その人が神御蔵 紅科であった。
まあ、あれだけ可愛ければ、そういうこともしょっちゅうあるんだろうなぁ……。
喧嘩は弱く、割って入る気も更々ない俺は、さらに罪悪感を積もらせながらもただ眺めることしか出来なかった。
それに、時間が迫って来ている。
悪いけど、俺にも俺の人生があるんだ……、ゴメン…!
くるりと身を翻し、足を一歩前に踏み出したその時だった。
「聞こえねーのか…? やめろっつってんだろ!!」
数人の呻き声、暴力を加えられた音。
ま、まさか……!?
そんな……!女子に手を加えるなんて非道なことしたんじゃ……!
「神御蔵さん……!?」
先ほどやりとりが行われていた場所には、男の姿は消えていた。
と、いうより。
地面に突っ伏していた。
そして、その中心に立って、制服の裾を直し、汚れた箇所をパンパンと払っていたのが、神御蔵だった。
「「………!?」」
なぜ神御蔵さんが……?
目を白黒させている俺ではあったが、恐らくこれは、彼女がした行為なのだろう。
そして多分、さっきの暴力的な発言も……。
また、神御蔵は、俺に目を向け……、というよりは
俺の制服を見て目を見開き、顔面蒼白にしていた。
恐らく、自分が校内で(というか、校外でもだけど)どれだけ有名なのかを自覚しているのであろう。
もしかして俺……、見ちゃいけないもの見た……!?
出来るだけ自然に方向転換をして、早歩きでその場を去った。
「ちょっと待ってください…!」
遠くから神御蔵の声が聞こえた。
いやいや、待つわけにはいかないでしょ!
少しだけ自信のある足で、学校まで走って戻った。
どうやら、ここまではついてこれなかったらしい。
一安心して、ホッと息を漏らす。
これが、俺と仮面をつけない会長……、黒い会長とでも呼ぼうか。
その、運命が初めて重なった瞬間であった。
拙い文面ですが、温かく見守ってくだされば幸いです♪