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So what?  作者: らいとてん
第1章 魔の森編
9/86

【番外編】3.5話、4.5話、6.5話、7.5話

ネタばれがありますので、第7話までを読了後に読まれることをお勧めします。

 パタパタと尻尾を振りながら『くろいの』が駆け寄ってくる。

「こんにちは! 『くろいの』です」

 『くろいの』は、元気よく一声鳴くと、後ろ足を落として座る。


「ここにあるのは、気が乗った時に活動報告に、おまけとして載せられていた小話です。作者が本編に載せられなかったネタ、妄想が止まらず書いてしまったネタ、脇役キャラクターがあまりにも哀れで書いてしまったネタなどがあります」

 

 長いセリフを最後まで言い切り、誇らしげにこちら上目遣いに見上げてくる。 

「最後に、以下の小話は、本編とは関係のないフィクションのフィクションです。実在の魔獣、群れ、『くろいの』などには多分関係ありません」


 『くろいの』は最後にひときわ大きな声で鳴く。

「それでは、番外編をお楽しみください」




***【第3.5話】『おまけの獣たち』***


 銀色の毛玉たちが、画面に向かって駆けて来た。


「こんにちはー」

「こんばんはー」

「おはよー」

「どもどもー」


 画面に飛びつき、

 カメラに噛みつき、

 ガラス面を引っ掻く、

 元気いっぱいの幼獣達に、黒の獣(小坂晶)が慌てて待ったをかける。


「こらこら。……はじめまして、『くろいの』です。

 最近、異世界トリップを始めました。

 せっかくの異世界なのですが、内実は、

 『実録★大自然の大家族スペシャル』に長女役として出演している気分です」


 首を傾げながら画面を見上げる『くろいの』の首筋を、巨大な銀色の獣がくわえて、持ち上げた。


「何をしているのだい? 我が愛し子。ほら、ご飯の時間だよ」


 母親の口にくわえられ、ゆらゆらと揺れながら『くろいの』は頷いた。


(成程、物心つく前の子供のほうが、この世ならぬものが見えやすいのは、人も魔獣も同じらしい)


「それでは、次の更新がいつかは分かりませんが、引き続き『So What?』をお楽しみください」


 母親は心配そうに我が子を見つめた。


「……愛し子よ、腐ったネズミでも食べたのかい?

 獲物は新鮮なうちに腹に納めなくては駄目だよ」


 その後、大丈夫だと言っても聞いてくれない母親に、

 薬草だといって青と赤の斑の茸を食べさせられた『くろいの』だった。




***【第4.5話】『その後の彼ら』***


 地面に伏せて、いじけている『くろいの』に弟妹たちが、必死で話しかける。


 「『くろいの』、ほら、カエルの丸焼きだよっ」

 「ネズミのしっぽ、あげるー」

 「ウサギの肝臓もあるよー」 

 「イナゴの蒸し焼きっ」

 

 

 『くろいの』の耳がぴくぴくと動く。

 やったっ、と思わず尻尾を振る弟妹たちは気付いていなかった。

 

 弟妹があげる、おどろおどろしい珍味の数々に、

 自分の周囲がどれだけ黒魔術的なゲテモノに埋め尽くされているのか、

 怖くて『くろいの』が顔を上げられずにいたことを。




***【第6.5話】『御母様の瞬殺くっきんぐー』***


「まず、獲物を見つけることだ」

 御母様は蒼の瞳をギラギラと輝かせた。


「そして、一撃で倒す。噛みついてもよいし、面倒なら魔力を使ってもよい」

 グワッと開けた口の中には、鋭い牙が見える。


「最後に、食らう。ポイントは、骨のかけら一つも残さないことだな」

 先日食べた竜を思い出したのか、舌舐めずりなさる御母様。


「命は尊いものだ。それを頂くのだから、全てあまさず腹に納めなくてはならない」

 満足げな溜め息は、大物の竜を食べた時の幸福感を思い出してのものだろうか。



「以上、御母様の瞬殺くっきんぐー、でした。……後半は食べることしか語ってなかったのは気のせいかな?」


 前世ではファンタジー世界において最強を誇る竜をあっさり倒した御母様に、

 『母は強し』という言葉を実感した『くろいの』だった。



***【第7.5話】『かわいそうな御父様を慰める会』***


 項垂れた一匹の魔獣がいる。

 

 出番はなく、

 王都に単身赴任中で寂しい男魔獣の一匹暮らしが続き、

 愛する妻と幼獣たちに会うこともできない、

 哀れな獣が。


 そんな彼のもとに、天使のごとく銀と黒に光り輝く幼獣が舞い降りた。


 一匹は涙で濡れた彼の目元を毛繕いしてやる。

「よしよし」


 一匹は哀愁漂う彼の背中を前足でタシタシと叩いてやる。

「がんばれー」


 一匹は彼が愛してやまない妻とよく似た声で鳴く。

「どうやって浮気に怒り狂った御母様から生き延びたの?」


 一匹は彼が愛してやまない妻によく似た蒼の瞳を輝かせて問う。

「本当に、じょーそーきょういくに悪いのー?」


 そして、とどめの如く、最後の一匹が慈愛に満ちた表情で告げる。

「兎のパイは美味しかったですか?」




「天に昇らせ、遥か高みから地に落とす、か」


 無垢な幼獣てんしほど残酷なものはないと、

 悪夢に魘され飛び起きた一匹の魔獣は、

 銀色に光る水滴をその瞳から零しながら呟いた。



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