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So what?  作者: らいとてん
第2章 銀狼騎士団編
16/86

【番外編】8.5話、10.5話、11.5話、12.5話、13.5話

ネタばれがありますので、13話までを読了後にお読みください。

 パタパタと尻尾を振りながら闇色の仔犬が駆け寄ってくる。

「こんにちは! モニカです」

 『モニカ』は、元気よく一声鳴くと、後ろ足を落として座る。


「ここにあるのは、気が乗った時に活動報告に、おまけとして載せられていた小話です。作者が本編に載せられなかったネタ、妄想が止まらず書いてしまったネタ、気に入りの脇役キャラクターへの愛があふれたネタなどがあります」

 

 長いセリフを最後まで言い切り、誇らしげにこちら上目遣いに見上げてくる。 

「最後に、以下の小話は、本編とは関係のないフィクションのフィクションです。実在の魔獣、群れ、『くろいの』、銀狼騎士団などには多分関係ありません」


 では、とモニカは最後にひときわ大きな声で鳴く。

「それでは、番外編をお楽しみください」



***【第8.5話】『その日、王都に衝撃が走った』***


「へ、へい、陛下――!」

 朝議中に駆け込んできた兵士に、国王は何事かと尋ねた。

 兵士が手を震わせながら渡した伝令を、彼は思わず床に落とす。


 窓辺で寝そべっていた銀の魔獣は、ゆっくり身を起こすと、その内容を覗きこむ。

 そして、欠伸を一つして、こう呟いた。


「人間の食べ物も今朝の仔羊のソテーで食べおさめか」


 物騒な台詞に、国王が思わず魔獣を怒鳴りつける。


「縁起でもないことを言うな!」


 魔獣は鼻を鳴らした。


「縁起も何も、確定された未来の事実だろう。せいぜい竜の逆鱗げきりんよりも怖いものに触れてしまった己が同朋を悔いるがいい」

 

 冷たく言い放つが、蒼白になった国王を哀れに思ったのか、

 一つ溜息をつくと、優しく声をかけてやる。


「……伝説の異世界召喚でもしたらどうだ? 毎回、あいつと話をつけてきたのは、他所の世界の女だろう?」


 国王が肩をがっくりと落とした。

「どうせ、異世界の料理が食べてみたいだけだろう。お前は」


 そんなことはないぞ、と目を泳がせる獣に、国王は深い溜息をつく。


「我が王国の事情に異世界人を巻き込めるものか。他人の家庭の事情に巻き込まれるのが如何に迷惑かは、どこぞの魔獣どものおかげで、身に染みて分かっているからな」


 心当たりがありすぎる獣は、とりあえず、尻尾を振ってごまかしてみる。

 嫌みのうちはいいが、実力行使に出られて、

 料理のランクが下げられては、たまったものではないからだ。


「これからどうするのだ?」


「まずは」


 国王は、絨毯の上に落ちた伝令を睨みつけて言う。


「この伝令を飛ばしたやつを伝令石で呼び出して、何が起こったのかを説明させる。省略しすぎだ」


 だがな、と魔獣は伝令を眺めて首をかげた。

 「まだ生きていればな」 


 赤い絨毯の上、白い伝令には、こう書かれていた。


 『魔王、光臨』 



***【第10.5話】『銀狼騎士団の最強コンビ』***


 モニカに仔羊肉を与えてしまうだろうエレナのために

 ライ麦パンに塩漬けのサーモンとトマト、胡瓜を挟んだサンドイッチを持って

 部屋に向かった女性騎士が見たのは、


 満足そうに口の周りを舐めているモニカと

 仔犬を抱きしめてご満悦なエレナという、


 ハートを打ち抜く破壊力抜群の光景だった。

 

「ありがとうございます」

 丁寧に礼を言いつつもモニカを離そうとしないエレナに、

 彼女の膝の上で丸くなって昼寝を始めるモニカ。

 

 女性騎士は決意した。


 『第13回 銀狼騎士団員が選ぶ今年一番可愛いものランキング 集計前だよ! 予想ジャンボ』

 は、エレナとモニカの同率首位に賭けよう、と。



***【第11.5話】『眠りに落ちる子に物語る伝説』***


 料理長は、せっかく作った子牛のシチューを末っ子がつまみ食いしようとしているのに気がついた。5つにも満たない幼い子供の手が、ぐつぐつと煮込まれて良い匂いを漂わせている鍋に延びている。

「こら、ハンス!」


 首をすくめたハンスに、眉をしかめて怖い顔を作って母親は言う。

「悪い子は、銀の魔王様に食べられてしまうんだよ!」


 そこから滔々と魔王の恐ろしさについて子どもが半泣きになるまで並べ始めた料理長に、背後から複雑そうな声がかかった。


「……確かに彼女は悪食だけど、さすがに人間の子供は食べないよ」


 見れば、銀の魔王、もとい、銀の女王のつがいが厨房の入り口にいて、しきりに鼻を動かしていた。

「君の美味しいシチューの方が何倍も魅力的だからね」


 魔獣にシチューを与えた料理長は、その晩、末っ子に物語を聞かせた。


 誰もが知る伝説の魔王の話を。

 

 かつて、銀の女王は、銀の魔王と呼ばれていた。

 

 それは、その狩りの残忍さからでもあった。

 生きとし生けるものはすべて彼女の獲物とされた。


 時には同朋の魔獣でさえ餌としか認識していなかった彼女に、

 本当に美味しいものとは何かを教え込み、

 ついには美味しい人間の料理が食べたいと彼女にねだって、

 人間との間に和議を結ばせた、


 あの銀の女王の番のことを古の人はこう呼んだ。

 

 『勇者』と。



 だから、毎日、料理長は腕をふるって料理を作る。

 人と魔獣に希望をもたらした、我らが愛すべき食いしん坊魔獣のために。



***【第12.5話】『裏教訓』***


 エレナは、夕食後の至福の一時を過ごしていた。 

 あむあむと牛の骨を齧るモニカに、自然と笑みが零れる。


 真ん丸な漆黒の瞳

 短くてふさふさの尻尾

 滑らかでサラサラの毛並み


 銀狼騎士団の小悪魔にすっかり骨抜きにされてしまった副団長だった。


 その日、騎士団の裏教訓に新たな一文が加えられた。


 「機嫌の悪い副団長にはモニカを与えろ」



***【第13.5話】『男と同僚の会話』***


 男がふと思い出したように同僚に話しかける。

「そういえば、この前『銀狼騎士団員が選ぶ可愛いものランキング』があっただろう」


 いきなり何の話かといぶかしげな表情で同僚が頷く。

「ああ。ブルクがランキングかけ共に主催したやつだろ?」


 ふざけたことを、と副団長に怒られてたよな、と同僚は呟く。ちなみに、彼はモニカの単独首位に賭けて、まぁまぁの臨時収入を得た。 


「ブルクのやつ、エレナ副団長に投票した野郎共に手加減なしで稽古をつけたらしいぜ。どんなに怪我をしてもブルクが治癒魔術で治しちまう無限地獄だったとか、馬鹿の一人が言ってたぜ」


 同僚は苦笑した。

「それは確かに馬鹿だな。エレナが可愛いだなんてブルクの前で絶対に言ってはならない台詞だろうが。ブルクは独占欲の塊だぞ? あいつの悪ふざけは、エレナに叱られたくてやってる部分があるよな。そのうちモニカにも嫉妬するようになるんじゃないのか? あいつ」


 ありうる、と笑いだす二人のことを、月は呆れながらも優しく見守っていた。


(仕事中なのに、あんなにいい加減で、いいのかしら)

(モニカのことにまだ人の一族は気付いていないのね)

(どうか、銀の血族が小さき娘とその親しき者たちに、幸多からんことを)



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