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ヘタレ退魔師・玖堂冬夜のあやかし奇譚  作者: 市瀬瑛理
第六章 崩れる日常

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第44話 コハクの昔語り・2

「こんなに小さな子猫が幻妖!? 父さん、本当なの?」


 高校生の冬夜さまが、驚いたように大声を上げました。


「正確には『元』幻妖だ」


 冬夜さまの目の前にいるのは、さっきボクをこの家に連れてきてくれたおじさんです。


「幻妖って、必ず退魔するものじゃないの?」


 ボクを両腕でしっかり抱えてくれている冬夜さまは、そう言って首を傾げました。

 すると、おじさん――冬夜さまのお父さんは首を左右に振ります。


「基本的には必ず退魔するものなんだが、この子、コハクはとてもレアなケースでね」

「レアなケース?」


 お父さんの言葉に、冬夜さまがまた首を捻りました。

 ボクも一緒になって話を聞いていましたが、何がなんだかさっぱりです。


「幻妖の中にかろうじて残っていた良心の部分が、退魔した時に残ったんだ。普通の幻妖は良心なんて残っていないはずなんだが」

「じゃあ、その良心がこの子猫の姿になったってこと?」

「手っ取り早く言うと、そういうことになるな」

「そっか、良心が形になったからこんなに可愛いんだねぇ」


 冬夜さまはボクを見て、優しく目を細めました。


『可愛い』、そう言われたボクはどうしていいかわからずに、ただ冬夜さまを見つめ返すことしかできませんでした。


 こうして、ボクはこの家で冬夜さまと一緒に暮らすことになったんです。


 この日から、ボクのご主人さまは冬夜さまだけです。


 冬夜さまは「溺れてたら助けるのは当たり前じゃない?」って今でも明るく笑いますが、それでもボクにとっては本当に特別なことだったんです。


 もちろん、ボクの悪いところを退魔して、この家に連れてきてくれたお父さんにも感謝しています。お父さんがいなかったら、冬夜さまに出会えていませんでしたから。


 でも、やっぱりボクの中で一番は冬夜さまなんです。


 だから、冬夜さまが大学を卒業して事務所で一人暮らしをすることになった時は、迷わず一緒について行くことにしました。

 冬夜さまがいない家で暮らすのは、寂しくて絶対に嫌でしたから。


 だけど、冬夜さまは最初から連れていってくれるつもりだったらしく、とても喜んでくれました。

 もしかしたら置いていかれるかもしれない、と悪い方向にも考えていたので、ボクはほっとしました。


 事務所に引っ越ししてから、志季さんとも初めて会いました。

 志季さんはその時から事務所でバイトをしています。


 時々志季さんとは喧嘩(けんか)もしますが、悪い人ではないと思います。だって、冬夜さまが信頼して背中を預けている人ですから。


 それに『甘いものが好き』という点では、ボクと志季さんは仲間です。


 今は冬夜さまと志季さん、ボクの三人で毎日を楽しく過ごしています。


 ちなみに、ボクが人間の言葉を話せることに気づいたのは、冬夜さまと出会ってから数日後のことでした。何でもっと早く気づかなかったんですかね。


 人間の姿になれることにも、少しして気づきました。


 服は自分の好きなものを具現化して身に着けることができるので、ボクを助けてくれた時に冬夜さまが着ていた学ランとお揃いにしました。これはまったく迷わなかったですね。


 冬夜さまや志季さんは「もっとかっこいい服だってあるよ」と言いますが、ボクはこの服が一番気に入ってるんです。


 現在(いま)も冬夜さまと一緒にいられるボクは、毎日がとてもとても幸せです。



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