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ヘタレ退魔師・玖堂冬夜のあやかし奇譚  作者: 市瀬瑛理
第四章 連続殺人事件を追え

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第25話 最初の事件現場・1

 小一時間ほど冬夜の運転する車に揺られ、三人はどうにか事件現場までやってきた。


 着いたのは、背景に山を背負った一軒家の前である。周りに他の家は見当たらず、雰囲気だけで言えば、平和な田舎といった感じだった。


「ちゃんと無事に着いてよかったね!」


 真っ先に車から降りてきたのは、元気な姿の冬夜である。運転中の緊張から解放されたからか、とても清々しい表情を浮かべていた。


 その後に続いたのは志季とコハクだが、


「お、おう……」

「はい……」


 しっかり車に酔った二人は車から降りるなり、力が抜けたようにその場にしゃがみ込んでしまう。


「何で二人ともそんなに具合悪そうなの? これから調査するんだからしっかりしないと」


 二人の姿に、心底不思議そうな顔で冬夜が首を傾げた。

 すると、すぐさま志季は冬夜を見上げて、きつく睨みつける。そのまま、唸るような声を発した。


「一体誰のせいだと思ってるんだよ……」

「冬夜さまの運転、色々とすごかったです……」


 コハクも地面に両手をつきながら、目を回している。


 しかし、冬夜は二人の様子を気に留めることなく、満面の笑みを浮かべた。


「そうかな? コハクにそう言ってもらえて嬉しいよ!」

「それは絶対に誉め言葉じゃねーからな。コハくん、今日はもう仕方ないけど次からはもう車はなしにしような」

「……そうですね」


 しゃがんだままで志季とコハクがブツブツ話していると、冬夜はマイペースに歩き出す。


「さて、じゃあ早速調査しようか」

「あ、ちょっと待てよ」

「冬夜さま、待ってください!」


 志季とコハクは揃って立ち上がり、慌てて冬夜の後を追った。



  ※※※



 家の周りには、黄色いバリケードテープも貼られていない。どうやら、すでに警察の手を離れているようである。


 外から見る限りでは、本当にごくありふれた、どこにでもあるただの一軒家だった。

 現在、中は無人の空き家だということが、ほんの少しだけ違うくらいか。


 その玄関前に立った冬夜は、持っていたショルダーバッグから鍵を一つ取り出す。『A』とアルファベットで書かれたタグがつけられていた。


 ここに来る前、退魔師協会に寄って預かってきた、この家の鍵である。


 昨日、すぐに調査を始める(むね)をメールで伝えた直後、『それならば鍵を預かっているから取りに来るように』と協会からの返信があった。


 事件の調査で必要になりそうなものは、ある程度警察から協会に渡されているらしい。

 そのおかげで、堂々と玄関から入ることができるのはありがたい。


「じゃあ、調査を始めるよ」


 そう言って、冬夜は玄関の鍵を開け始める。

 何の変哲もない、ごく普通の玄関だ。もちろん問題なく、あっさりと開いた。


「ふーん、やっぱり警察と繋がってんだな」


 もう疑いもしないけどさ、と志季が冬夜の手の中にある鍵に視線を落とす。


「別に繋がってるとはいっても、きっと悪い意味じゃないだろうから、それはいいんじゃない?」

「まあ、それもそうか」


 冬夜の言葉に、志季は納得しながら頷いた。

 次に、冬夜が後ろにいるコハクを振り返る。


「コハク、近くから幻妖の気配はする? 俺にはわかんないんだけどさ」

「いえ、気配はありません」


 冬夜に訊かれたコハクはそう答え、首を左右に振った。

 その様子に、志季が安堵の息を漏らす。


「とりあえず、今この辺は安全ってことか」

「なら、さっさと調査しちゃおう。幻妖が関わってるのかはまだ不明だけど、もし出くわしたら面倒だからね」


 冬夜は迷うことなく玄関ドアを開けて、中に踏み込もうとした。

 その時である。


「そーいや、この家ではどこで事件が起こったんだ?」


 志季が冬夜の肩越しに何気なく中を覗く。しかし、すぐ目の前に広がった光景に思わず息を呑み、瞠目(どうもく)した。


「志季さん、どうしたんですか?」


 コハクは身長が低いので二人の横から覗き込んだが、志季と同様の反応をして、そのまま言葉を失った。


 三人の前に広がっていたのは、大きな血だまりの跡である。


 志季とコハクは一目見ただけで、事件現場がこの玄関だったことを理解した。


 床だけではない。壁も同じように血しぶきで汚れた跡があった。

 どちらにも血を簡単に拭き取ったような形跡は残されていたが、お世辞にも綺麗とは言えない状態だ。


 志季とコハクの様子に、冬夜はただ困ったように、苦笑を浮かべることしかできない。


「昔、父さんに連れられて何度かこういうとこに来たことあるけど、やっぱり気分のいいものじゃないよね」

「そりゃあな」

「……はい」


 志季とコハクは神妙な面持ちでそう答えると、冬夜と一緒になって現場に手を合わせたのだった。



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