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ヘタレ退魔師・玖堂冬夜のあやかし奇譚  作者: 市瀬瑛理
第三章 邂逅する者たち

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第21話 目撃者探し・2

『もしもし、冬夜さまですか?』

「そうだよ。どうしたのコハク、幽霊が見つかったの?」


 スマホの向こうから聞こえてくるのは、よく聞き慣れたコハクの声だ。


 たった一時間ばかり離れていただけなのに、冬夜はなぜかその元気な声に安心してしまう。

 今回は近所での調査だし、普段だってコハクが遊びに行って離れていることもあるというのに。


 きっと暑さで疲れてしまったせいだろう。


 まだ二十三だけどあまり歳は取りたくないなぁ、などと考えて、思わず苦笑していると、


『えっと、幽霊さんを見つけたわけじゃないんですけど』


 コハクは真面目な声でそう前置きして、さらに続けた。


『最近になって幻妖が狂暴化してる、って昨日の幽霊さんが話してたじゃないですか』

「うん。それで今こうやって調査してるんだからね」

『どうやら、そのせいでこの辺の幽霊さんたちがみんな隠れちゃったみたいなんですよ』

「え、どういうこと?」


 コハクの言葉に、思わず冬夜が目を見開き、聞き返す。手にしたスマホに一瞬、力がこもった。


『ボクの猫友達にたまたま幽霊さんと話せる子がいたんですけど、その子と話した幽霊さんが怖いからみんなで隠れる、って言ってたらしいんですよ』

「……あー、そういうことかぁ」


 どうりでなかなか幽霊が見つからないはずだ、と冬夜はしゃがみ込んだままで、がっくりと肩を落とす。


 確かにその通りだ。


 昨日来た少女の幽霊は、「最近、幻妖が狂暴になっていて怖い」と話していた。

 そんな幻妖から自分の身を守るために、幽霊たちはまずどこかに隠れることを考えたのだろう。


 どこを探しても幽霊が見つからなかった理由はこれか。ようやく()に落ちた。


「そっかぁ……」


 冬夜がスマホを耳に当てたまま、小さく呟く。


 ただでさえ数の少ない幽霊たちが姿を隠せば、まったく見つけられなくなるのも道理である。


 どうしてこんな簡単なことにこれまで気づかなかったのか。

 それ以前に、そのことについてもっと少女に確認しておくべきだったと反省する。


「そうだよね、何でそんな簡単なことに気づかなかったんだろう」


 思ったことがつい言葉として零れ落ちた。


『冬夜さま?』

「あ、いや、みんなで隠れたんだったら、いくら探しても幽霊なんて見つかるはずないよねって思ってさ」


 だから自分は『ヘタレ』と呼ばれるのだと、冬夜は妙に納得してしまう。


 退魔師協会の人たちからいつもからかわれているが、それもあながち間違っていないような気がしてきた。


 けれど、今回は志季やコハクも気づかなかったのだから、全員が『ヘタレ』のはずだ。

 協会でこの話をすれば、間違いなく三人揃って『ヘタレ』と認定されて、大声で笑われるだろう。


「あはは……っ!」


 そのことを想像した冬夜が思わず声を出して笑ってしまうと、


『冬夜さま、どうしたんですか!?』


 スマホの向こう側から、コハクの焦ったような声が聞こえてきたのだった。



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