第10話 神隠しの調査・開始
神隠しが起こっているという町は事務所からわりと近く、電車で五駅のところにあった。
協会から依頼を受けた翌日のことである。
冬夜たち三人は事務所でゆっくり昼食をとってから、電車でここまでやってきた。
「車の方が早くて楽なのにな。せっかく免許持ってるんだから、レンタカーでも借りればよかったんじゃねーの。そうすれば、コハくんだって電車乗るのにわざわざ人間の姿にならなくて済んだだろ」
電車を降りた志季が、冬夜の後ろを歩きながら、ブツブツとそんなことを零す。
振り返った冬夜はわずかに苦笑を浮かべるが、すぐにきっぱりと言い放った。
「俺はほぼペーパードライバーだし、これくらいの距離ならわざわざレンタカー借りるまでもないよ。電車で十分」
それに協会はレンタカー代までは出してくれないからね、冬夜がそう続けると、隣を楽しそうに歩いていた学ラン姿のコハクも頷く。
「ボクは電車好きですし、冬夜さまと一緒ならどっちでもいいです」
「コハくんならそう言うと思ったよ……」
コハクの返事に、志季ががっくりと肩を落とした。
そこで顔を正面に戻した冬夜が、志季に問う。
「だいたい、志季はペーパードライバーの運転する車に乗りたいの?」
「いや、それはそれで嫌だけどさ……」
「でしょ? だから電車が正解。さあ、ここからはタクシーで現場まで行こうか」
志季を言い負かした冬夜が指差した先にあったのは、タクシー乗り場だった。
※※※
タクシー内。
後ろの座席に腰を下ろした冬夜が、行き先を告げる。
行き先はもちろん事件現場の近くだ。
タクシーが発車して少し経ってから、冬夜は改めて男性運転手に声を掛ける。
「あの、最近この町で神隠しが起きてるって噂を聞いたんですけど、本当ですか?」
「そういえば、ここ数日で話題になってますね。子供が四人くらい消えたって話ですよ」
単刀直入に切り出すと、運転手は前を向いたまま素直に頷いた。
「子供だけですか?」
「私はそう聞いてますけど」
「そうなんですね。ありがとうございます」
冬夜が運転手に丁寧に礼を述べて、座り直す。
志季とコハクは冬夜の横で、そんな二人のやり取りを黙って聞いていた。
「やっぱり本当なんだな」
ようやく口を開いた志季の言葉を合図にして、三人が後ろの座席で顔を見合わせる。
タクシーが信号で止まると、運転手は変わらず前を向いたままで首を捻った。
「あれ、お客さんの目的地って現場の傍じゃないですか?」
「あ、はい。たまたま近くに用事があって、それでちょっと噂のことが気になったんですよー」
冬夜が適当にごまかすと、運転手は笑みのこもった声で答える。
「そうでしたか。お客さんも念のため気をつけた方がいいですよ。子供ばかりが消えてるらしいですから」
「……ボク、子供じゃないです」
どうやら運転手に悪意はないようだったが、コハクは『子供』という言葉に過剰反応したらしく、その頬が大きく膨れた。




