第21話 貴族学園怪奇現象事件Ⅶ
後日、セシルはティベリオの自宅を訪れ、貴族学園で起きていた怪奇現象の正体、その犯人と目的、そして逮捕に至るまでを報告していた。
「なるほどな……何にせよ解決してよかった。お前のおかげで男爵令嬢も助かったわけだし」
「僕じゃなくても、いずれ誰かが見つけていたと思うよ」
「だが、その時には手遅れだったかもしれないだろ?これで男爵令嬢が衰弱死でもしてたら、大問題になっていた。それを防いだんだからお前の手柄だろう」
「……まあ、そうかもね」
素直に褒められ、照れ隠しに視線を逸らすセシル。そんな彼をティべリオが微笑ましく眺めていると、ちょうど学園からノエルが帰ってきた。
「ただいま戻りましたわ!あら、セシル様、いらしてたんですのね」
「うん。お邪魔してるよ」
軽く挨拶を交わすとノエルはセシルの正面、ティベリオの隣へと腰を下ろした。
「今日は学園での出来事をテディに報告してたんだ」
「そうでしたの。……ふふ、実はあの後から学園でセシル様が噂になっておりますの」
「「……噂?」」
クスクスと笑うノエルに、セシルとティベリオが同時に首を傾げる。
「はい、『二日だけの美しすぎる編入生』って。ファンクラブも出来ていますのよ?確か『毒舌無表情の麗人を崇める会』だったかしら?」
「ぶふっ!」
ティベリオが飲んでいた紅茶を盛大に吹き出した。
「叔父さま!汚いです!!」
「わ、悪い悪い……。で、セシルのファンクラブがなんだって?」
布巾で溢した紅茶を拭きつつ続きを促すティベリオに、ノエルはため息交じりで言葉を続けた。
「部活として申請しようとして、先生には止められたようですわ。でも個人で活動する分には自由ですから、ファンクラブとして会報まで作っているそうですの。しかもセシル様は私の従兄として編入されたでしょう?ですから、ファンクラブの方々に根掘り葉掘り聞かれまして……」
その時の事を思い出したのか、ノエルはげんなりと肩を落とす。
「しかも怪奇現象を解決したのがセシル様だという噂も広まっていて……今や時の人ですわ。また是非、学園に遊びにきてくださいな」
「僕が目立つのは仕方ないけれど、それは御免かな」
女子生徒に囲まれた光景を思い出し、セシルは顔を顰めた。
「――で、テディ。いつにする?」
「は?なにがだ?」
「約束したじゃないか。学園の怪奇現象を解決したら『世界の人形展』に連れていってくれるって」
言われてティベリオはようやく思い出す。
学園に行かせる前に、そんな約束をしたことを。
仕事も一段落した今なら、休みをとっても許されるだろう。
「……よし、次の休みだな。明後日なら都合がつくから連れてってやるよ」
「やった、約束だからね」
セシルはふっと笑みをこぼす。
普段の無表情が嘘のように、柔らかくうれしそうな笑顔だ。
(……セシル様のこんなお顔を見られるのは、きっと叔父さまだけですわね)
ノエルは胸に暖かな感情を抱きながら、その光景を微笑ましく眺めていた。




