覚え
私は死んだらしい。
そして、私は所謂“幽霊”になったらしい。
今、目の前で、私の葬式が行われている。
皆、泣いている。自分で言うのもなんだかアレだが、私は好かれていたと言うことだろうか。
…いや、違うか。いや違うこともないか。
そして、横には、困り果てた死神が突っ立っている。
私を成仏させられないことに頭を抱えているようだ。
仕方ないでしょ、そう言おうと思ったが、そんな義理もないなと、言葉を飲み込む。
また、自分が写っている最初で最後であろうその写真を見る。
私は、その自分の顔に覚えはない。
その顔は確かに私の顔なのだろう。
だが、産まれて一度も自分の写真を見ることも鏡を覗くことはなかった。
そんな時間もなかった。
鏡のない部屋に監禁されていた…。
といえば間違いじゃないが、不適切な表現になる。
それに、あと数ヶ月でも生きていれば見られたかもしれない程度のことだ。
程度…。
葬儀場の外に、壁を透けて出る。
いい天気だ。
雲の一つ二つ浮く加減のよい晴れ。
それに続いて死神もついてくる。
そういえば、こいつが本当に死神かは知らない。
一口も喋らないが、骸骨に黒ずくめ、そして鎌。
それも大きな鎌を持っている。
これを死神と言わずして何と呼ぶか。
葬式が終わったようで、扉が開いて人が出てくる。
泣きながら、両親も。
「私も大概、あんたらも、大概運が悪かったね…」
聞こえてないのはわかってるけど、話しかける。
涙が自然と溢れ出てきた。
逆に今まで、泣いていなかったことに気づく。
幽霊でも泣けるものなのだと、今、初めて知った。
お久しぶりです、SSR狼です。
ぜんっぜん更新してなかったし、前のシリーズの更新に関しては今後も予定立ってません。
持続力がなさ過ぎる…。
このシリーズは、このシリーズこそは続けられたら…。
前のシリーズもなるべく更新します。
今後も、よろしくお願いします。