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恋の音  作者: 海サツキ
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遥さんは、キスの雨を降らせたあと、腰が抜けた私を膝に横向きに乗せ、ソファに座った。重くないか聞き、降りようとしたのだが、腰に手を回されて逃げられなくなった。


「ねぇ、好きだよ。愛してる。俺の気持ち重たい?」

「え?」

「…自分でもわかってるんだよ?でも止められない。今まで頑張ってきた君を俺が甘やかしたくてしょうがない。君が今まで貰えなかった愛を俺が全てあげるよ。」

「あ、あの。ち、近いです。」

「でも恋人だよ?詩音ちゃんも俺の顔嫌いじゃないでしょ?」

「……良すぎるんです!心臓に悪い…。」


そういった途端、静かになる遥さんに不思議に思って顔を上げる。遥さんは顔を赤くして私を見ていた。


「え?遥さん…?」

「俺初めてこの顔でよかったと思ったよ。」


そう言いながら、私の後頭部を抑え顔を近づけてくる。


「…あぁ、可愛いな。はぁ…どう?ずっと見てたらきっと慣れるよ。あぁ、でも俺が耐えられないな。」『キスしたくなるな。』


遥さんはそう言うと、私のまぶたの上に口付けを一つ落として顔を離す。綺麗な顔が遠ざかっても、私の心臓は暴れている。


「詩音ちゃん、やっぱり一緒に暮らそうよ。そして今日は一緒にいよ?俺の部屋自由に使っていいよ。服も貸してあげる。嫌だったら今から買いに行こう?フロントに頼んでもいいよ?」


遥さんの言葉に悩んでしまう。一緒に暮らすのはまだちょっと迷いがある。けれど、今日は一緒にいて欲しいって思ってる。このまま帰るのは、なんだか寂しい気がしていたのだ。


「もちろん何もしないよ。詩音ちゃんを抱き締めておきたいだけ。」


いや、抱き締めているのは何もしないに入るのか?この膝に乗せている体勢もおかしいのだが。


「ダメかな?」

「…今日は一緒にいてください。」

「今日だけ?」

「…一緒に暮らすのはまだちょっと…。」

「…そっか。分かった。」『とりあえずね。』


そう言いながら、私が遥さんの家にいたくなるように準備しようと、考えているのが聞こえている。私専用の部屋をつくるという計画は、聞かなかったことにした。


まだ明るい時間だから、私が必要なものを買いに行こうと、遥さんと出掛けることにした。車で、遥さんの家から近いデパートに向かう。まずは、と服屋に向かうと遥さんは好きなものを選んでと言う。目の前には自分では買わないような服が並んでいる。店員さんが話しかけてくれるが、どれがいいか分からなくなり、不安になって遥さんを見上げる。


『え、俺の服掴んでる。可愛い。』


気付いたら、遥さんの服を掴んでいたようだ。


「詩音ちゃんが選べないなら俺が着て欲しいの選んでいい?」


頷くと、遥さんは店員さんに大丈夫と伝え、私の手を取って店内を回る。


「詩音ちゃんは薄い色が似合うから白か黄色がいいな。髪も綺麗だから清楚なワンピースがいいんだよね。」


白と薄い黄色のワンピースを手に取って、それに合うカーディガンとストッキングも選ぶ。着てみて欲しいと言われ、試着室で着替えてみせると、遥さんは可愛いと言って頬を撫でる。恥ずかしくなって、すぐに元の服に着替えると、既に会計がすんでいて、私の手から服が取り上げられ、店員さんが包んでくれている。

遥さんに申し訳ないと言うと、私の耳に髪をかけて囁く。


「知ってる?服を送るのってその自分が送った服を脱がせたいって意味があるんだよ?」


バッと、耳を抑えて遥さんから距離をとると、イタズラに成功したような顔をして笑っている。


「冗談だよ。俺が詩音ちゃんが着ているのを見たいだけ。俺とのデートで着てよ。」『気にしないで欲しいな。』


私が受けとりやすいように言ってくれる、遥さんの優しさが嬉しい。素直に感謝して、なにか別のことで返せないかと考えることにした。

他にも下着や靴を購入すると、雑貨屋なども見て回ろうと言われ、手を引かれる。


「詩音ちゃんはどのデザインがいい?」『詩音ちゃんが使うものだし選んでもらおう。』


私が使うものを買おうとしているらしく、迷ったが、心の声に反応する訳にもいかず、カップやクッションを選ぶ。一通り買い物を済ませ、休憩をしようと遥さんにカフェに案内される。

買ってくるから待ってて欲しいと言われ、荷物と一緒に待つことにした。遥さんが行って、手帳に色々と書き出していると、ふっと影が指す。顔を上げると、怒ったような表情の女の人がいた。


「貴方、彼の何?」『なんで遥といるの?』

「え?」

「なんで貴方みたいな人が遥といるの!」『こんな女のどこがいいのよ。』


遥さんのことが好きであろう彼女の言葉に、呆然としてしまう。


「遥の彼女は私なの!」

「いや、それは無いですね。」


彼は嘘をつく人じゃない。それにこの人は、今の私の言葉に動揺している。きっと、この人の遥さんの彼女は自分だという言葉は、嘘だと思う。

私の言葉に激昂した彼女は、顔を赤くして腕を振り上げる。しまった、と思った時には遅く、叩かれると目を強くつぶったが、いつまで経っても衝撃がこない。


『詩音ちゃん!』


遥さんの声が聞こえ、ゆっくりと目を開ける。遥さんは振り上げられた、彼女の腕を掴み睨んでいる。


「彼女になんの用?」『こいつ詩音ちゃんに暴力を…!』

「あ、えっと、遥。」

「誰?名前呼ばないでくれる?」『詩音ちゃんに勘違いされたくないんだけど。』

「え?」

「早く目の前から消えてくれない?警察呼ぶよ?」


遥さんに睨まれた彼女は、泣きそうな顔をして走って去っていった。遥さんは私を抱き締め、心配したと声が聞こえる。


「詩音ちゃん大丈夫?ごめんね、1人にして。」『あいつ蒼太に調べてもらうか。』

「私は大丈夫です。」

「怪我がなくて良かった。…もう帰ろうか。」『あとで電話しておこう。』


出来るだけ、物騒な考えをおさめて欲しくて、自分から遥さんと手を繋ぎ、上機嫌になった遥さんと家に帰った。

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