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俺のルームメイトはスーパーヒーロー  作者: 夏城燎
第二章 赤と白い羽編
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第三十一話 「戦いの終わり」



 ※崖土ミノル視点。



 電車に揺られていた。

 都会よりもゆったりな車内で、僕は1人外を眺めていた。

 この電車は前に乗った事があって。

 その時は天使関連の調査って名目だったからあんまりじっくり見れなかったけれど。

 この時期になると、この叡山電車では、紅葉の綺麗なライトアップがあると聞いて。

 少し気になってしまったんだ。


 でもまあ、そのライトアップって言うのは11月にあるもので。

 まだ10月初旬のこの頃だと、風景に綺麗だと言う感想は抱けなかった。

 やっぱり来るのが早すぎたんだろう。


「………」


 僕は今日、東京へ帰る。

 でもその前に、この数日間にあった出来事について。

 軽く説明しておくとするよ。



――――。



 目が覚めると僕は病院に居た。

 リミッター解除による体へのダメージは無かったらしいが、使った僕の体力は計り知れなく。

 やはり3日は点滴をうちながら寝込むこととなった。


「――――ふぅ」


 僕も体が疲れすぎて、会話すらする気になれなかったよ。

 やっぱり僕のリミッター解除はその力の強大さ故か、消耗が激しいらしい。

 だから気絶しちゃうんだけどね。


 天狗は逮捕されたが。

 僕が目覚めてから二日後、刑務所へ輸送中に逃げ出したと報告を受けた。


 それについて僕は何も言う事はない。

 一応、逃げ出した時の状況については太刀風さんから聞かされているが。

 こちらの警備は万全、包囲網からプロヒーロー同行と、何からなにまで対策をうっていた。

 僕の目からみても不備がない護送態勢だったんだけど。

 それでも襲撃を許してしまったと言うのは、もう仕方がない。

 相手の方が一枚上手だったと言う事だ。



 それからしばらくして、僕が自分で歩けるくらい回復すると。

 僕の部屋に『能力研究会』の猫春ユン先生、『特別異能犯罪対策隊』の如月シンさん。

 そして――『日本現総理』、原部マサトさんが病室にやってきた。


「お久しぶりです、猫春先生」

「久しぶりだね~! ミノルきゅん!」


 なんて変な愛称は猫春先生だ。

 彼女はクリーム色のツインテールをくるくるとさせながら。

 僕の体の状態についていろいろと説明してくれて。

 その中で、僕の体に起こったリミッター解除による影響について説明してくれた。


「やっぱりミノルきゅんの能力は、普通とは違うみたいだにゃん。現に使用時のデータを取ってみたんだけど、前回使用時よりももたらす影響から与える疲労感が大きいし、同時に使うたびにまた違った重力の働きを観測してて、きっと10年前の学者とかが見たら一生頭抱えるレベルですっごいダメージと形状変化を起こしていたにゃん」


「やはり今後とも、使用は控えるべきですかね?」


「断言はできにゃいけど、体の負荷やら周りへの影響を考えるに、やっぱり使用は控えた方が安全と言えるにゃ。とは言っても、わたち的にはばんばん使ってくれても構わにゃいし、にゃんにゃらデータとれるから嬉しっ――にゃあああああ!?」


「話が長いぞユン」


 猫春の白衣を掴み上げ、横槍を入れたのは。

 正装で揃え、灰色の頭髪をしている原部総理だった。


 実はこの二人は知り合いであり、

 一緒に能力について考え今の日本社会を形作った結構凄い人達なのだが、

 この猫春先生は見た目や性格からそこまでの威厳を感じない。

 僕は彼女を尊敬しリスペクトを持とうとしているが。

 彼女自身がある種フランクさを僕に求めているようで、今ではそれに従っている。

 でもその能力は本物だ。

 決して侮ってはいけない。


「原部総理も久しぶりですね」

「そうだな。さて、今回も大分派手にやってくれたじゃないか」


 と言いながら、僕の寝床の横に総理は座った。

 考えてもみるとこの状況、大分凄いんだよなぁ。

 実質。国のツートップが僕病室にいるって、ソウタが聞いたら驚くだろうな。


 そういえば、ソウタには既に連絡を取った。

 どうやら一週間程連絡が無いのを心配してメッセージは来ていたのだが。

 僕はここ数日寝ていたので、返信が遅れてしまった。

 心配させただろうから謝らなければいけないね。

 あと、おみあげも考えておこう。


 とまぁ身内事情はさておき。

 僕は総理に向かって、口を開いた。


「すみません。被害についてどうですかね?」

「最悪だね。でもまあ、これも必要な犠牲だったさ。君の判断は悪くなかったと言えるし、もし君がいなかった場合、更に被害が広がっていたかもしれないんだ。京都の破壊状況について色んな所から難しそうな顔を向けられているが。出来る限り君のプライバシーを守りつつ私がフォローするつもりだよ」


 やっぱりそうだよね。

 当初想定していた被害から大分広がってしまった。

 あの天狗のリミッター解除による災害は、京都と言う県に大ダメージを与えたのだろう。

 それに、死者が出てしまったと聞いている。

 そればかりは僕の力足らずがもたらした。

 最悪の結果だ。


「……いつもご迷惑ばかりおかけして申し訳ございません」


「いいんだよ。もう世の中は超人社会なんだから、これくらいの問題は想定していたんだ。それに君には感謝しているんだ」


「感謝、ですか?」


「天狗に対しての警察の対応は、どう考えても冷静さを欠いていた。それについて私から直々に説教しておいたよ。そしてほんと、君がこの件に呼ばれたのは奇跡だった。君がこの件に関与しなければ、最悪の場合、もっと被害が出ていたかもしれない」


「……そう言ってもらえて助かります。僕も全力を尽くして正解でした」


 そう言われるのは嬉しいな。

 別に僕はあくまで、自分のやり方を貫いただけなんだけど。

 まあ結果論の話だから。

 ここは甘んじてその言葉を受け入れるべきか。


「だがやはり、こちら側の秘密兵器を投入し、それでも結果逃亡されたのは痛手だ。『特別異能犯罪対策隊』については奥の手の一歩手前。落ち度が誰にもないとはいえ、これに関しては今後議論の必要がある」


 『特別異能犯罪対策隊』。

 今この病室にいる如月さんが、その隊のリーダーである。

 彼の経歴はとてもすごく、たった一人で大きな任務を遂行し。

 その功績を認められ、この『特別異能犯罪対策隊』の隊長に任命されたベテランである。

 僕は今回、初めて彼と話したが。

 少しの会話でも、彼の頭の良さの片鱗を触れる事ができるほど凄い人だった。


 そんな『特別異能犯罪対策隊』はある種、今の日本政府にとっての切り札だ。

 異能犯罪が多発し、組織化した悪党ヴィランが増えて来た今の世の中では、彼らの様な公になっていない組織が重宝される場合がある。

 『特別異能犯罪対策隊』の存在は機密中の機密事項。トップシークレットでなければならなかった。


「鬼族にこちらの手札はあまり見せるべきではなかったのかもしれない。これは、私のミスだね」


 この『特別異能犯罪対策隊』……長いな。

 でも変に訳すと別の組織とも被っちゃうし……。

 ――ああ、『特異対策隊』でいいか。


 この『特異対策隊』は今回、

 この原部総理の提案と僕の意見により実戦投入されたのだ。


 だが。

 実戦投入すると言う事はリスクがあり。

 それはつまり相手に手札を見せると言う事。

 結末を言ってしまうと天狗は鬼族へ逃げているし、

 この『特異対策隊』について相手側に知られたとみるべきだろう。


「そんな事はないです、総理」


 でも僕はこうも思っている……。

 と言おうとした瞬間如月さんが一歩前に出て、

 揺るぎなき黒い瞳で僕を見ながら口を開いた。


「天狗の脅威度から推察するに、元々警察の手に負えない案件だった。つまり、最初から俺らが対処すべき案件だったと言う事です。なので要するに、いずれするべきであった公表のタイミングが早まっただけなんですよ」


「……うむ、確かにその通りかもしれない。早々に天狗案件を君たちに任せるべきであった。これは……よい教訓だと思おう」


「それが良いかと」


「僕もそう思います。今後このレベルの案件が増えるとするなら、やはり僕らも徐々に手札を明かすべきなのかもしれません。こちらが出すのを渋ってしまい、その結果大惨事が起こるなんて結果になるより、最初から彼ら『特別異能犯罪対策隊』に一任するべきかと」


 確かに今回の件は最初から警察向きでなかったのではない。

 何故ならば警察はあくまで普通の犯罪を取り締まる組織であり、『異能』や『超能力』に対してではない。


「ふぅ……」


 僕は少し病室の外を、茫然と見つめた。


 『異能』『超能力』その対策については概ね『ヒーロー』が行ってきた。

 『ヒーロー』が逮捕し、後の罪の清算は『警察』に任せているのが今の仕組みなのだが。

 別に今まで通りならそれでも問題ないだろう。

 だが、天狗レベルの能力者が、恐らく今後増えて行く。

 そうなった場合、今の態勢ではきっとダメなのだろう。

 そういうのが今回の天狗案件ではっきりとした。

 今後はきっと、少しづつ制度が変わっていくのだろう。


「とにかく今回は、君の体の調子を見れてよかったよ」


 と言葉を皮切りに立ち上がった総理。

 まあ総理だからね、ここにそんなに長居できないだろう。

 ここに居るメンツみんなに言える事だけど。


「わたちも久しぶりにミノルきゅんと話せてよかった!! また何かあったら呼んでね!」

「俺からも。あんたの元気な姿を見れてよかった。是非今後、機会があればまた仕事をしよう」


 案の定思った通り、解散の雰囲気となった。

 僕を心配してみんな京都の病院に来てくれたんだ。

 本当に感謝しておかなきゃね。


「みなさんありがとうございました!」


 僕は立ちあがり、来てくれた人の背中を見ながら頭を下げる。

 原部総理に寝転がっててと言われたが。

 僕の感謝の気持ちを伝えたいが先走り、言われてもまだ、僕は頭を下げていたのだった。



――――。



 これが後日譚って奴だ。

 僕はそれから数日間安静にして、もう退院した。

 朝から叡山電車で少しぶらり旅をしてから、もう帰る時間になってしまい。

 ある程度、ソウタへのおみあげも買ったところで。

 僕は焼肉弁当を片手に駅へやってきていた。


 見送りに太刀風さんと志賀見刑事が来てくれた。


「色々とありましたが、またあなたとお仕事出来る時がこればええと思っています。今回一緒にお仕事出来て、ほんま良かったです」

「いえいえ、志賀見さんも色々と手間をかけさせて申し訳なかったです。もしまたご縁がありましたらよろしくお願いします」


 中津刑事のお墓にはもう行った。

 ある意味僕らはチームだったから、一人かけてしまったのはとても悲しい。

 残念でならなかった。

 本当ならこの場に、中津刑事がいてくれたらよかったんだけど。

 そんな事はもう叶わない。


「志賀見さん」

「はい?」


 僕は堂々とした顔を作って、少し下を向いている志賀見の顔を見る。

 彼は少し老けているが、その年齢は25歳らしく。

 最初の時、僕は中年の人だと思っていたんだけど、実際若いらしい。

 僕が年上って訳でもないけど。

 何となく彼の顔色が沈んでいる様に見えた。


 だから僕は彼の顔を見ながら、ほっと笑みをこぼして。


「中津さんの分も、生きましょうね」

「…………はい!」


 中津さんが僕らのチームの中で一番年を取っていた。

 最初こそ性格がそんなに好きではなかった人だったけど、悪い人ではなかった。

 僕らは歩まねばならない。

 死んだ仲間を、忘れないためにも。






「太刀風さん」


 太刀風ミナト。ヒーロー名『サイクロン』。

 彼には救われた。

 僕がリミッター解除を使用し、その後気を失った瞬間。

 重力の異常を顧みず、ビルから落下した僕へすぐに駆け付け。

 その疾風で僕を助けてくれたのだと聞いている。

 だから彼がいなければ。

 僕は死んでいたかもしれないのだ。


「助けてくれてありがとうございました」

「それはまぁええのよ、人助けはヒーローの基本やからな」

「……色々と大変な思いをしましたが、また一緒に戦える日を楽しみにしています」

「っ……おお! せやな!」


 彼も少し浮かない顔をしていた。

 何故だか僕には分からなかったが。

 僕の言葉を聞いて、何だか嬉しそうな声を出し。

 満面の笑みで片手を上げて。


「また会おうな!」

「もちろんですよ!」


 僕も片手を上げて、太刀風とハイタッチをし。

 そして解散したのだった。



――――。



 新幹線へ乗り込み、僕は買った弁当を開け箸を割る。

 そして弁当を開け。

 僕は久しぶりにお肉に目を輝かせた。


 思えば僕って奴は周囲に野菜好きだと認識されているが。

 こう見えて割とお肉も大好きなのだ。

 まあ職業柄、そこまで贅沢すると自分の身体能力に影響するので自制しているが。

 それも重力で移動するときなんてすごい体使うんだからね?


 まあいいさ!

 お肉だって最高なのさ!

 久しぶりに食べてやろう!

 うおおおおお!!



「お楽しみの最中すみません」

「あ、え?」

「あなた、崖土ミノルさんですよね」


 僕が席で食べようとすると、唐突に通路から話しかけられた。

 大きく開けた口を一旦閉じ、僕はその声の方を見てみると。

 そこには一人の女性が立っていた。


「えっと……どちら様ですか?」


 待って、僕の名前をなんで知ってるんだ?


「ええ、まずは自己紹介からさせてください」


 と女性は半ば無理やり僕の目の前の席に座って来た。

 女性――眼鏡をかけ、スーツ姿で、そして灰色の髪の毛をした女性が。

 焼肉弁当を食べてる最中に、僕の目の前に座ったのだ。


「私の名前は『ツナギ』。所属は『特殊能力対策課、一課』と言う組織に属しております」

「ん? 特殊能力対策課って確か……」

「その通りでございます。総理のプロジェクトです」

「あぁ存じてます! その方々が何故ここに?」

「実は、折り入ってお話があるのです」


 彼女はやけに真剣な態度で、焼肉弁当を食べている僕へ視線を向ける。

 うむ……たべにくい。


「………」


 すると、がさがさと彼女は自分の鞄の中を漁り始めた。

 と言うかなんで僕が本名で呼ばれているんだ? 一応ヒーロー名の方で通っている筈なんだけど?

 うーん?


「ではご説明させていただきます」


 僕が首を傾げていると、彼女は改まった態度でそう口にし。

 手に持っている書類を僕へ差し出してきた。

 そしてその書類の表紙に書いてあることを、彼女は口に出し読み上げ。




「――『3年前のプロヒーロー殺害事件』と、『酒呑童子』に関するデータです。もしあなたが我々『特殊能力対策課、一課』へ所属なさると言うならば、我々が所持している全ての情報を開示いたしましょう」




 同時に僕は、驚愕した。



 第二章 赤と白い羽編    ―終―


 第三章 言葉いわずの少女編 ―始―


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