表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のルームメイトはスーパーヒーロー  作者: 夏城燎
第一章 新たな職場編
17/35

番外編 「いずれ来たる、梅雨の時」



 何だか懐かしくなる曇り空。

 少し肌寒くって、乾いた風が流れているその時。

 ビルの屋上で。

 僕はビルの端っこで立っていて。

 僕の目の前には。

 赤い鬼の仮面を付けた、スーツ姿の男がいた。


 僕はとにかく、一つ言わなければならないことがあった。


「呼びかけに応じてくれて嬉しいよ」

「……そうかよ」


 僕の言葉に、仮面で籠って聞き取りづらい低い声で。

 彼はつまらなそうな返答をする。


 ――ポツリ。

 空の涙が一滴、ビルの屋上へ落ちた。

 それを皮切りに、その涙は雨となった。

 雨は大雨となり。

 大雨は豪雨となった。


「一つ質問だ。グラビトル」

「なに?」

「お前にとって、ヒーローってなんだ?」

「他人を助ける存在だ。他人を思いやり、ピンチな時は他人を救う」

「求められてない救いでもか?」

「………」


 彼の言葉に僕は少し考えるけども。

 伝えたいことは事は特に変わらなかった。


「助ける助けないの選択は僕にもある。でも、死んでしまったら何も残らないから、どんな人でも僕は助けるさ」

「例え救われたとしても、そいつが救われた事を苦しく感じたら? 後悔したらどうするんだ」

「後悔するだけ、出来るだけ。その人が生きている証だ。例え「お前のせいだ」と言われても、その人がどんな人間であろうと、後悔を抱える人も偉いと思う。だから出来るだけ、僕もその人に寄り添うさ」

「……傲慢で酷い理想家だな。綺麗事過ぎて呆れるぜ。いいか?人間はそう簡単じゃ」

「――簡単だよ」

「…………」

「人間は簡単で単純なんだ。だから簡単な事に絶望して、単純な事で救われる。そうじゃないっていう奴は、きっと、救われようとしてないだけだ」

「知った口を」

「知っているからね」

「………」


 それからは静寂だった。

 でも、意味のある静寂だった。

 僕は腕にあるサポテムを起動させ。

 彼に向けた。


 彼も自分の右手を、意味ありげに見て。

 そして僕へ視線を移した。


「――――」

「――――」


 どれだけの激情を、僕は彼に向けて来たのだろう。

 どれだけの想いを、彼に向けただろう。

 僕にはもう分からなかった。


 あの日。

 父と母がテレビの中で殺された日。

 僕はもうとっくに、どうかなっていたんだ。

 とっくに何かおかしくなっていた。

 今なら、先生の言葉の意味が分かる気がする。






 これから始まるのは。

 決別だ。


 僕と彼。

 復讐鬼と復讐鬼の。

 決別の戦いが。







 ―― 今、始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ