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俺のルームメイトはスーパーヒーロー  作者: 夏城燎
第一章 新たな職場編
15/35

第十五幕 「鬼の仮面」



 ■■■


 ■■■■■ ■■ ■ ■ ■■

 ■■■■■■■■









 5■前


 ■■月5日 ■M ■ ■ ■1

 港■■■ある■庫










 5日前


 10月5日 PM 8 : 21

 港区のとある倉庫



――――。



 一人の男が。

 深手を負いながら建物に入った。

 その男は黒スーツに、

 割れたサングラスをかけた悪党ヴィラン

 名は『デッドヒート』と言う男だった。


 デッドヒートは雇われの身で、上の方針から。

 こんな自分に似合っていない服を着て。

 他のチンピラの指示係をしていたのだが。


「ぐっ……」


 でも失敗した。

 デッドヒートは肩に大きな火傷を負っていた。

 デッドヒートは倉庫の入口を蹴破って。

 中に居る仲間の悪党ヴィランと対峙する。


「お、おまえ!!」


 突然倉庫に入ってきたデッドヒートに。

 他の悪党ヴィランは驚きの声を上げ。

 デットヒートに駆け寄るのだった。

 そんなデットヒートは振り絞った力を使い。


「作戦は、失敗だっ!」


 デッドヒートは言う。

 作戦は失敗したと。


「何が起こったのだ? 誰に嗅ぎ付けられた?」


 そう別のスーツ男、指名手配犯『マッド』がかけよった。

 その場には警察に追われる身である悪党ヴィランが勢ぞろいしていた。


「わっ、分からない。一瞬だった。突然視界に炎が飛んできて、つぎの瞬間チンピラは焼け死んでて」


 デッドヒートは慌てていた。

 そのせいだろう、言葉をまとめることが出来ていなかった。

 ……しかしそれでも。

 自らの右肩に負ってしまった火傷を、右手で抑えながら。

 はぁはぁと息を漏らし苦しそうにする。

 しかしそれでも、傷の治療よりも伝えたいことが先走っていた。


「誰だ? 誰だったんだ? 顔は見たのか」

「……顔はみえなかった」


 その言葉にその場の悪党ヴィランは小さな身震いをした。

 青い顔をしながら、その場に居た悪党ヴィランが言葉を出す前に。

 デットヒートの口が走った。


「見えたのは、赤い炎の仮面だった。……いいや。あれはぁ、鬼の仮面だ」

「鬼の仮面……? どうして鬼なんだ。どうして」


 言葉を聞いて、マッドは疑問符を浮かべた。

 同時に、その場にいる他の悪党ヴィランも顔面蒼白させる。

 混乱。

 混乱した。

 鬼の仮面。

 鬼の仮面といえばあの『鬼族』が付けているという仮面だ。

 でもおかしい事があった。


「………どういうことだ?」


 ――ここに居る全員、その『鬼族』に雇われてここに居た。


 どうして俺らは依頼者に襲われたのか。

 どうしてクライアントに邪魔をされたのか。

 その場の悪党ヴィラン全員が。

 訳も分からず戦慄した。


 何が起こったのか。

   何が起きているのか。

 何がおかしいのか。

       疑問符が浮かんで、疑問が浮かんで、疑いが広がって。そして――。


「RRRRRRRRRRRR」

「ひっ、……え?」


 デッドヒートの胸ポケットの携帯が鳴った。


「………」


 こんな時になんて空気の読めない携帯なんだ。

 そう思って、マッドはそのスマホを取り出し。

 電源を消そうとした。

 彼の胸に手を入れて、ポケットからそのスマホを出して。

 その着信画面を見た。


 すると、その画面には文字が浮かんでいた。



 ――――――――――――――――――――――――

 20:26                 100%



        【 酒吞童子 】

           着信



 ――――――――――――――――――――――――


「……酒吞童子?」


 その着信画面には確かに。

『酒吞童子』の名前が表示されていた。


 彼らはその名前を知らなかった。

 知らないからこそ恐怖した。

 何故この男のスマホに。

 知らない妖怪の名前の人物から電話がかかってきているのだろうと。

 訳が分からない状況に。

 訳の分からない人物からの着信。

 そして。


「やぁ」


 訳の分からない来客が訪れた。

 ぼうっ!









 炎

 が

 あ

 が

 っ

 た

 。







「………」


 巻き上がる煉獄は空を焼き尽くし。

 流れる熱風は顔面に降り注いだ。

 聞こえるのは揺れる爆音。

 触るのはまるで異世界に飛ばされたかのような違和感。















 い

 い

 や

 、

 こ

 の

 感

 覚

 は

 、

 熱

 だ

 。




「っ」


 強い悪臭がした。

 鼻をつまみたくなるくらい強い悪臭だ。

 流れでデッドヒートは、

 やっと瞳を開けた。


「ひっ」



 その刹那、倉庫に入り込んだ赤い炎を見逃して。

 目の前にいた仲間すら消えて。

 炎が、火が、焔が。

 目に飛び込んできて。


 それで、その男がいた。


「……誰だ」

「酒吞童子さ」


 即答だった。

 その男は振り返った。

 男は、我々と同じような黒スーツを着込んで、濃紫色のネクタイをして。

 赤い鬼の仮面を顔につけた、異様な風貌だった。


「――――」


 黒い服に真っ赤な仮面、二つ生えた金のツノ。

 その姿は現代の鬼、そう【鬼族】。

 鬼族に与えられるという仮面。

 それが、あれだった。


「どうして……鬼族のあなたが?」

「どうして? 知りたいか? だが、その前にこっちの質問に答えてもらうよ」


 その仮面の男はこちらに近づいてきて。

 俺が倒れている目の前に立って。

 男は俺を壁にもたれさせてくれた。

 でも次の瞬間。


「お前らの雇い主は誰だ」


 その男は右手を突き出し、()()()()()()()()()()()()()

 赤く揺れるその炎は。

 温度が伝わる距離まで近づいてきた。

 その焦らしは効果てきめんであった。


「……やっ、雇い主!? どうしてあんたが、それを?」

「素直に質問に答えてくれよ、あんたのクライアントは誰だって聞いてんだ」


 何の訳も聞きたくない。

 ただ質問に答えろ。そうしなきゃ殺す。

 言葉には出していなかったが、確かにそう言っていた。

 少なくとも、声色からはそう読み取れた。

 デットヒートは固唾を飲み込み、口を滑らす。


「……ドルシーっつう、女だ。大金を出すから、爆弾を仕掛けろと」

「どるしー? 知らねぇ名前だな。その女はどこのヴィランなんだ?」

「……その女は、自分は【鬼族】だと言っていた」

「嘘だな。そいつは確実に鬼族じゃねぇ」


 言うと、鬼の手の炎がぼわっと爆発した。

 でもすぐ収まった。

 で、鬼の仮面の首が右に倒れ。


「――なるほど、鬼族に『疑いを被せる』気か」


 鬼は気が付いたように呟く。


「……?」

「知らないのか? なら教えてやる。鬼族はな、メンバーには伝統的に妖怪の名前を与える風習があるんだ」

「…………」

「お前はドルシーっていう妖怪、いると思うか?」


 ドルシーなんて妖怪聞いたことも無い。

 だから正直に答える。


「いないと……思う」

「だろ? なるほどな、違和感は頭の片隅にあったんだが。あの時ガキの口から聞いた仮面も、鬼族に被せるためだったんだな」

「……」


 その時、デッドヒートは思い出した。


 この倉庫の隣の倉庫にも。

 自分の同士、いわゆる仲間がいることを。

 その仲間がここに異変に気が付けば。

 自分をこの鬼から助けてくれるんじゃないだろうかと。

 そう思い出し、そして思い至った。


「っ……他の仲間は?」


 さっきの会話のせいで、無駄口を叩いてしまうデットヒート。


 流れに乗って口が緩くなるのは。

 デッドヒートの悪い癖だった。

 でもその癖が役立った。

 万に一つも、その悪癖が時間稼ぎへと繋がればいいと。

 愚かな頭でそう思い至った。


「そこで焦げ臭っているのがお前の仲間だ」


 男はデッドヒートの狼藉を許した。


「……死んでいるのか?」

「いい具合にこんがりだから生きてる方が怖い」


 遠回しな言い方だったが要するに。

 この倉庫にいるのはもう俺とこの鬼だけということらしい。

 他の仲間は殺された。という事らしい。


「なら、どうして俺は殺さない?」

「そらもう、情報を聞き出すためさ?」

「……じゃあ情報を聞いたんだから、俺は殺すのか?」

「情報を聞き出すだけじゃない。このアジトを教えてくれたのもお前だ。だから俺は恩を感じている」

「……やっぱりあのスマホは」


 その言葉でやっと、デットヒートの中での疑問が一つ無くなった。

 そう、デッドヒートの胸に入っていたスマホは。

 デッドヒートのスマホではなかったのだ。


 この目の前の鬼が、発信機代わりにしたと、やっと点と点が繋がった。


「今時スマホは二台持ちが基本らしい。ま、俺はよく買い替えるんだがな」

「………」


 時間稼ぎ。をしているつもりだけど。

 向こうの倉庫の連中は一向にこない。

 来る気配がまるでない。


「俺はお前に恩を感じている。だから、多分生かすさ。ついでに広めてもらいたいしね」

「……何をだ?」

「まぁ待てよ。もう少ししたら教えてやるから」


 デッドヒートの目の前から、炎の手が離れて行った。

 やっと息ができたデッドヒートだが。

 安心したのも束の間。


「あっちの倉庫は終わったよ。酒吞童子」


 視界の中に現れたのは少女だった。

 黒いフードを被って、藍色のショートパンツを履いて、

 白いうさぎのぬいぐるみを持った少女。

 顔は見えにくかった。

 部屋に広がった炎のせいだ。

 だが、その服には。

 見えにくい視界でも分かるくらいの返り血がついていた。


「服汚しちまったな。悪い」

「いいよ別に、久しぶりに楽しかったし」

「なら、その楽しさに免じて金は」

「バイトなんだからちゃんと10万払ってね。服買い替えるんだから」


 その少女の言い草に、鬼は「ケチくせぇ」と文句を垂らす。

 ……そしてデッドヒートは気が付いた。

 『あっちの倉庫は終わった』という言葉の真意に。

 隣の倉庫にも鬼の手が届いていたということだ。


「……ははっ」


 絶望、広がった失望。

 どうしてこんなことになったのか。

 そうとまで思っていた。


「さて、そろそろ終わりにするか」


 そんなデッドヒートの考えを知らないかのように、鬼は冷たく呟く。


 倉庫もついには天井にまで火の手が上っていた。

 天井が崩れてくる。

 火の瓦礫の雨が音を立て降り注いだ。


 確かに、終わりには素晴らしい景色だった。


 鬼がまた近づいてくる。

 そして俺がもたれている壁に右足を突き立てて。

 その右足の先に炎が灯って――。


「俺の名前は酒吞童子だ。お前は生かしてやる。どうせクライアントがお前に会いに来るだろうから一言一句伝えてくれ」

「……」

「俺はお前らを許さねぇ、絶対に破滅させてやる。どんな手を使っても、どんなことをしても。破滅させてやる」

「……ィ」

「いいか? お前らのやり方が気にくわねぇ。だから、この酒吞童子が」











 必ず、絶対に、復讐してやるからな。

 俺は復讐鬼だ。









 デッドヒートは怯えながらも、

 その威圧感に声を漏らした。

 そして。


「お前は、ヒーローなのか……? それとも、悪党ヴィランなのか?」


 問い。

 お前は何者か。


「……どっちでもねぇな」

「ならっ、お前は?」


 デッドヒートの悪癖はここでも発揮された。

 疑問を口にする。

 してしまう。

 どうしてそんなことをするんだ。

 そしてこんなことをするお前は何者か。


 お前は誰なんだ、悪か、正義か。














「俺はダークヒーローだ」











 背中を向け鬼は言った。

 そして同時に、屋根が瓦解し。

 倉庫が完全に崩れさった。


 もう一度デッドヒートが意識を取り戻した時、空が見えていた。

 起き上がれるくらいの時間が経っていたらしく、デッドヒートは起き上がる。


 そして、ダークヒーローはいなくなっていた。










 その後デッドヒートは生き残った。


 火傷をしながらも、

 消防に助けられたのだ。

 病室で警察に、『ダークヒーロー』の話をした。

 誰に雇われたかも語りつくした。

 悪癖のせいだろう。

 まるで愚か者の様に、滑稽に、饒舌に語った。


 そしてデッドヒートは、ちゃんと伝える役目を果たし。

 クライアントによって粛清された。



――――。



 ※竹内ソウタ視点。



 あの爆弾の事件から一週間が経過した。

 今日も何の平坦な毎日のうちの一日だ。


 朝日が窓から零れて来て、日差しが気持ちよかった。

 温度は微妙に寒い。

 俺は工房に行く準備をして。

 汚れてもいい服を着る。


 朝ごはんの食パンを食べて、ソファーでゆっくりする。

 今日もいい日になるように、願いながら。

 体を脱力させた。


「へぇ……」


 どうやら。

 鬼族は加害者ではなく、被害者らしい。

 最初こそ鬼族の犯行と疑っていたが。

 鬼族の犯行に見せかけようとしている組織がいる事をあの男から聞いた。

 これで鬼族があの爆弾に絡んでいる事は。

 無いと見てもいいだろう。


 あ、でも。

 一応、俺がいなくなってからあの伝統が無くなった線もあるっちゃあるか。

 ならまだ疑っておくべきか?


 ……にしても、正直検討もつかない。

 もし本当に鬼族じゃないなら。

 一体どこがそんな無謀な事をしようとしている?

 それに、鬼族に向かって突き進もうとしていたが、

 今回の件でゴールが分からなくなってしまった。

 俺は誰を敵として頑張ればいい?


「んっ。ん~~」


 はて、どうしようかな。

 どうやってその組織を見つけ出そうか。

 最初の方なんて「鬼族許さん」。なんて躍起になっていたのに。

 何かこうなると、案外、拍子抜けだな。


 俺はへそを曲げながら、ぶつくさとテレビをつけた。

 テレビはどうやら緊急速報をやっているらしい。

 ヘリコプターからの映像を流している。


「うーん」


 その組織をどうやって探すか。

 少なくとも、鬼族に罪を被せようとしているって点は許せねぇ。

 やり方が気にくわないのは本当だし。

 だから、やる事は変わらねぇし、元より変えるつもりはない。

 でも情報が足りない。

 はぁ、どうしようか。


『速報です!! 現在、京都駅周辺にて大規模な戦闘が起こっている模様です。

 近隣の住民の避難も間に合っていない状況で、現場は緊迫した空気の中――』


 今後について見直さなきゃな。

 そうだな、どういう線で攻めていくか……。

 相手の情報が殆ど無いと分かった今。

 正直しっぽを出すのを待つしか……。


『現在、『娯楽ヒーロー』けんだマン、『疾風ヒーロー』サイクロン――』




『――そして、『重力ヒーロー』グラビトルが戦闘に参加しており』



「……………………………」


 ――は?


 グラビトル?

 今確かに、グラビトルって言ったよな?

 それって……。

 ミノルか?


『建物を破壊しながら、留置されていたとみられる悪党ヴィラン 【天狗】と激しい戦闘を繰り広げており』


 ん? 真て。

 天狗?

 いま、天狗っつった?


『早朝頃から始まった戦闘ですが、日が出ても終わる気配がありません!!』


 天狗って、あのいけ好かない天狗の事か?

 ちょっと前に捕まったとか聞いた俺の元同僚の。


「………」


 え?

 あ?

 まってくれ。

 まさか。






 今京都で、ミノルが鬼族と戦ってる。って事か?










 第一章 新たな職場編 ―終―


 第二章 赤と白い羽編 ―始―

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